30 再会・アオイくん 前編
イノシカチョウの角攻撃で俺は宙に飛ばされた
しかしダメージよりもシュリのことで頭がいっぱいになっている
名前が? 真名? 女の子? でも何で? あれ?
俺だとわかってた? 何も言わないのは俺がおっさんだから?
グルグル頭の中で混乱する
イノシカチョウが俺のところへ飛んで来る
ああ、鬱陶しい、俺はそれどころじゃないんだよ!
「フライ、ヒール、身体強化」
一気に魔法を掛ける
「ウインドカッター」
イノシカチョウは躱すことなく向かって来る
「猪突猛進だな、おかげで躱しやすい」
イノシカチョウの頭に手を置きそのまま背後に回り込む
そして両の翅に銀の短剣を突き刺す
「決壊死」
両の翅が消滅してイノシカチョウは落下する
ドズンッ!
「俺はおまえと遊んでいる場合じゃないんだよっ!」
<ストーンステイク>
岩で出来た巨大な杭を落としてイノシカチョウの身体を貫く
断末魔を上げて息絶えるイノシカチョウ
「でもおかげで少しだけ混乱が収まった」
地面に下りる
「お兄さん! 心配させないで下さい」
「ごめんアンナ」
俺はシュリの方を見る
サスケと何か話しているようだ
うーん、どうしよう、違ったら恥ずかしいし
違わなくてもまともに話せそうにない
「お兄さん、何かウジウジ考えていますね」
「察したならそっとしておいてくれよ」
「悩んでるヒマがあるなら行動するべきですよ」
アンナの言う通りだけどこればっかりはなあ
「あ、あの、イノシカチョウを倒せましたね」
「あ、ああ、、、」
シュリがおずおずと話しかけてきた
「主、観念して下さい」
「シュリさん、正直に話しましょう」
「サスケ、アンナさん、でもまだ心の準備が、、、」
「だったら自爆しないで下さい主」
「そうですよ、私も協力して黙っていたのに」
何の話をしているんだ三人は
「お兄さんも気付いたんでしょ?
ウジウジしていないでお兄さんもはっきりして下さい」
「アンナ、何か知っているのか?」
「お兄さんとシュリさんで話し合って下さい」
「ですが我が主を困らせたら覚悟して下さい」
何なのキミたち、当たりがきつくないですか?
でもこのままだと山を出るどころじゃない
きちんとはっきりさせておくべきだ
よし、当たって砕けろ!
砕けたくないなあ、、、
「シュリ、さん、先に謝っておきます
違っていたらごめんなさい」
「何で敬語になっているんですかお兄さん」
うるせえ、緊張しているんだよ!
「な、な、なんでしょう、、、」
「主、挙動不審が過ぎますよ」
サスケ、意外と主に厳しい
「シュリさんは、その、、、」
「は、はい、、、」
なんだこの空気
くそ、しっかりしろ俺!
緊張を無理くり抑え込んで意を決して言葉を吐き出す
「アオイ、くん、、、だよね?」
シュリさんが固まった
あれ? どっちだ? 違った? 違わない?
「主、ヘタレるのもいい加減になさいませ」 ぺシン
サスケがシュリさんの頭に乗って額を猫パンチする
「うう、今日のサスケ、イジワルだよう」
シュリさんが俯き加減に手をイジイジしながら
「アオイでござる、ケンタ殿、、、」
今度は俺が固まった
やっぱりシュリさんはアオイくんだった
違わなかったのはいいんだけど、今度は接し方に迷う
ゲームのアオイくんは黒縁瓶底丸眼鏡そばかす巨漢デブだ
それが実際はこんなに可愛い女の子
高校三年で受験生だ、女子高生だ、JKだ!
ゲームの俺は凡庸な好青年だった
正体はご覧の通りの冴えないおっさんだ
アオイくんは俺がこんなおっさんだとは思ってなかっただろう
絶対に幻滅しているに違いない! 間違いない!(断言)
ゲームで仲良しでもオフ会で正体を知ってフレ解除されるパターンだ
きっとアオイくんはもう話しかけないでくれと思っているに違いない
そうだよね、おっさんとフレなんて若い子は嫌だよね、、、
「お兄さん、迷走していないで現実と向き合って下さい」
「なんだよう、もう少し優しくしてくれよう」
おっさんは繊細なんだぞー、打たれ弱いんだぞー
「えっと、改めてケンタ・ウロスです
ゲームでは一緒にプレイできて楽しかったです
リアルがこんなおっさんでごめんなさい」
「改めましてアオイ・キリガクレでござる
拙者も楽しかったでござる
たくさん助けていただき感謝しているでござる
拙者こそゲームと違い過ぎて申し訳ないでござる
こんなの詐欺でござるよね」
お互い卑屈のようだ
「アオイくんは詐欺じゃないですよ
イケメンがブサメンだったら詐欺かもだけど
俺の方が詐欺ですよ、イケメンではないけど好青年キャラだったから」
「ケンタ殿は詐欺じゃないでござる
たしかに年齢的には違うけど優しそうなのは変わらないでござる
ゲームもリアルもケンタ殿はケンタ殿でござる」
うう、社交辞令を言えるなんてアオイくんの方が優しいよ
「二人ともウジウジモジモジするのは止めて下さいませんか」
「正体が分かり合ったのですから迅速に話しを進めて下さい」
「おまえら、、、」
「サスケとアンナさん、ヒドい!」
一旦、気持ちを落ち着けるため昼食タイムを挟んだ
お腹も膨れてかなり落ち着いてきた
「その、聞きたいことがたくさんあるけどいいかな」
「はい」
「シュリって真名? キャラネームがアオイだし」
「いえ、真名もアオイです」
「俺と同じか、俺もどっちもケンタだから
それじゃ何でシュリって名乗ったの?」
「わたしがアオイだと知ったら嫌われると思って、、、
ちなみにシュリは手裏剣のシュリです」
むしろ俺の方が嫌われると思うんだが
「たしかに中身は男の子だと思っていたけど嫌わないよ
女性が男性キャラを使うことはよくあるからね」
「そうなんですね、わたしゲームはFPOしかやっていないので」
「それで俺のことは気付いていたの?」
「岩穴でアンナさんと話しているときにわかりました」
「アンナ、何で教えてくれないんだよ」
「シュリさん、いえアオイさんに口止めされていました」
「え、アオイくん、何で?」
「それはさっき言ったように嫌われたくなかったので
リアルのわたしをもう少し知ってもらってからにしようと
アンナさんには黙っていてもらいました」
「別に嫌わないよ、そりゃギャップあり過ぎて驚くだろうけどね
むしろ仲間に再会できて俺は嬉しい気持ちでいっぱいだ
逆にリアルの俺を知られて嫌われるのが不安だよ」
「さっきも言いましたがケンタ殿はケンタ殿です
どっちのケンタ殿も優しいですから」
俺そんなに優しい対応したことあったっけ?
「あの、ケンタ殿、お願いがあります」
「な、何でしょうか」
「ゲームは終了しました、そして現実のFPOが始まりました
この現実でも仲間に入れてもらってもいいですか?」
そんなの
「当たり前だ、というかすでに仲間だろ
一緒に山を出て、街へ行くんだから
もちろんその後も一緒に冒険しようぜアオイくん」
「はい!」 グスッ
「ちょっ、何で泣くの!?」
「女の子を泣かすなんて下衆ですねお兄さん」
「誰が下衆だ!」
「我が主を泣かすとは死ぬ覚悟は出来ていますか」
「待てこらサスケ、殺意を引っ込めろ!」
「ごめんなさい、嬉しくって、、、」
「うん、それは俺も嬉しい、アオイくん、サスケを止めて」
サスケが牙と爪を容赦なく俺に突き立てる
痛いよ、血が出てるよ、サスケさん本気だよ
アオイくんがサスケを止めてくれた
アンナが「呪われろ」とか小さく呟いていた
泣くぞ?
モロバレだったと思いますがシュリはアオイでした
ゲーム時代の仲間の一人とようやく再会できました




