27 ブリダイコン山
この山は険しく雄大で強い魔物も数種類棲息している
まあ俺とアンナなら倒せるだろう
だけど山越えをしないといけないので極力戦闘は避ける
体力と魔力を無駄に消費しないようにしないとな
回復薬や食料も買い込んでいるが有限だ
ブリダイコン山、美味そうな名前の山だ
一番気を付けないといけないのは山頂にいる山の主
倒せるだろうけどかなり苦戦するはずだ
山は足場も悪いし平坦が少ない
崖もあるし戦闘がやりにくい
魔物たちはこの環境に慣れている
俺たちにとってはアウェイだ
「ここらへんは岩場だから登り辛いな」
そう言いながらも俺たちはヒョイヒョイ登る
身体強化などを使って山を攻略していく
それでも平坦と違って手間暇が掛かっていた
フライで飛べばいいとも思うが無理だ
長時間の飛行ができないし高さも無限ではない
あと魔力消費がかなり掛かる
「僕に任せてくれる?」
「ポチャ?」
「戦闘形態になっていーい?」
「「戦闘形態!?」」
可愛いだけじゃなくて戦えるのかポチャ
ウサピョンがウソピョンに進化するような感じじゃないだろうな
それだけは止めてくれ!
「それって気持ち悪い姿になったりしないのか?」
「んー、わかんない」
「どうしようアンナ」
「一応、見せてもらいましょう」
アンナも俺と同じように不安らしい
「じゃ、なるねー♪」
つぶらな黒い瞳が金色に光る
茶色い毛がぶわっと軽く逆立ち少し伸びる
狼のような身体つきに変化する
可愛いからカッコいいに変わった!
「どうかな、僕、気持ち悪い?」
うん、声も喋り方もポチャだ
カッコ良くなってもポチャだった
「全然、むしろカッコいいぞポチャ」
「ええ、強そうです」
「えへへ、嬉しいな♪」
見た目はカッコいいのに可愛いじゃねーか
狼のような身体つきだが狼の十倍の大きさになっている
デカいなポチャ
「これがポチャの戦闘形態か
だったらマネキンに勝てたんじゃ」
「契約前だとこの形態になれなかったの」
そうだったのか、俺と契約したから出来るようになったんだな
「それでどうするんだ? 別に戦闘するわけじゃないぞ」
「僕の背に乗ってお兄さん、お姉さん」
「この岩場を駆け上がるんですね」
「そうだよお姉さん♪」
そういうことか
俺とアンナはポチャに乗る
「それじゃ行くから、しっかり掴まっていてね♪」
「おう」
「はい」
ポチャは俺とアンナを乗せて岩場を駆け上がる
すごい速さで岩場を登りきる
そして今度は下っていく
「このまま行けるところまで行くね♪」
「ポチャ、無理はするなよ」
「疲れたら止まりなさいね」
「うん♪」
俺たちの役に立つことが嬉しいようだ
なんて忠犬なんだポチャよ
街に着いたら好きなものをたくさん食べさせてやろう
山の中腹まで来てポチャが止まる
小さいポチャに戻る
「ごめんなさい、お腹が空きましたー」
「そろそろメシにするか」
「そうですね」
今日はここで野宿だ
アンナが結界を張ってくれるので安心して眠れる
持ってきた肉を焼いてポチャに食べさせる
俺たちも買い込んだ食料を少し食べる
まだ先はあるからな、無駄食いはできない
翌朝、朝食を食べ終わって再出発
「また僕に乗っていく?」
「いや、アレは岩場とか険しいところだけでいいよ」
ポチャにばかり頼ってはいけない
あまり険しくないところは余裕だからな
しばらくこのまま進む
アンナが何かキョロキョロしている
「どうしたアンナ」
「少し離れていますがガイド精霊の気配があります」
「こんなところに?」
「ランダムに飛ばされていますからいる可能性はありました」
こんなところに飛ばされるなんて不憫な
「どうする、助けに行くか?」
「それが一緒に誰かといるようです」
「それって」
「はい、プレイヤーです」
ラインハルト以外のプレイヤーがこの近くにいる
会ってみたい、けど山でルートを変えるのは危険だ
「お兄さん、他のプレイヤーに会いたいんですよね」
「そりゃ会いたいさ、だからオシリペンペン街を目指しているわけだし」
「ここにもいるなら会いたいですよね」
「でも山でのルート変更は危険を伴う」
「私たちなら大丈夫だと思いますよ」
「いいのか?」
「構いませんよ」
「僕もいーよー♪」
いいガイド精霊たちだぜおまえら
「それにプレイヤーさんなら助かります
協力すれば山越えも幾分楽になるはずです」
「なるほど、たしかにそうだな」
ガイド精霊と一緒にいるなら契約済みのはずだ
マネキンたちの襲撃もないだろう
「よし、そのプレイヤーのところへ行こう」
「はい」
「うん♪」
俺はアンナに付いて行く
どんなプレイヤーがそこにいるのだろう
でも何でこんなところにいたんだ?
俺のようにオシリペンペン街を目指しているのかも
とにかく会おう、会えばわかる!
木や岩が入り組んでいる場所に来た
木や岩が邪魔して死角になっている岩穴があった
「あの中にいます」
「なんでこんなところに」
岩穴から黒猫が出てきた
「あなたたち何者ですか?」
喋った、この黒猫がガイド精霊なのだろう
「私はガイド精霊上位個体序列一位、アンナと言います
こっちの犬もガイド精霊です
このお兄さんは私たちのパートナーのプレイヤーです」
「・・・・・たしかに、ガイド精霊ですね
そして魔力の質からこの方がプレイヤーなのも理解しました
ですがまだ警戒させていただきます」
すごいな、しっかりしている
この子が先に出てきたのは契約者を守るためだろう
「私たちは敵ではありません
あなたのパートナーと会わせていただけませんか?」
「そちらのプレイヤーの方、あなたロリコンですか?」
「いきなりなんて質問してくるんだ!」
「いいから答えて下さい
ロリコンや乱暴する方を我が主に会わせることはできません」
警戒心が高いのは別に悪くないけど失礼だぞ
「俺はロリコンでも乱暴者でもない
でもそっちが信じなければ意味がないだろ」
「そうですね」
「じゃどうすればいいんだよ」
「一番良いのは私たちのことは忘れて立ち去っていただくことです」
結局会わせたくないってことか
「この世界に来たプレイヤーが近くにいるなら会いたいんだけど」
「あなたはなぜ我が主に会いたいのですか?」
「この世界に転移させられて困ってるプレイヤーもいると思う
俺はまあこの世界に来れて良かったと思う奴だけど
中にはあっちに未練がある奴もいるかも知れない
あっちの世界の人間が周りにいた方が少しは違うと思うんだ
あっちの世界の話とかも出来るだろうし」
「なるほど、では次にアンナさんに聞きます」
「私ですか?」
「この方、本当にロリコンではないのですね?」
しつこいな!
立ち塞がる黒猫、ケンタのロリコン疑惑は晴れるのか?
次回、JK




