26 癒しは大事
宿屋の主にチップを渡してポチャを泊める許可をもらった
結構な額を渡したので二つ返事で了承してくれた
世の中ゼニだな
この街には長居しないので数日したら出ていく
なので狩りとか依頼とかやらずにのんびりする
今俺たちは街の外にいる
門が小さくだが見えるほどのところに来ている
レジャーシートを敷いてピクニックだ
いい天気なのでポカポカして気持ちいい
雑貨店で買ってきた木製の丸い平皿を一枚取り出す
100円で三枚と言うお買い得品だ
「そーれ、取ってこいポチャ」 シュピ
フリスビー代わりに平皿を投げる
「わーい♪」 タタタ
ポチャが元気よく駆け出して平皿を追いかける
せっかく犬を飼ったんだからやりたいじゃないか
「ガイド精霊というよりペット扱いですね」
「いいじゃん、ポチャも楽しそうだし」
「そうですね」 うずうず
平皿を咥えて戻ってくるポチャ
「よし、もっかいいくぞ」
「待って、私にもやらせて」
アンナよ、やりたそうにしていたのはわかっていたぞ ニヤリ
「いいだろう」
アンナに平皿を渡す
「ポチャ、行きなさい」 ビュン
めっちゃ飛んだ
「飛ばし過ぎだろ、力加減を考えろ」
「結構難しいですね」
それでもポチャは楽しそうに追いかけていく
「可愛いなあ」 ほっこり
「可愛いですねえ」 ほっこり
ペットで癒される人たちの気持ちを理解できた
それにしても本当にいい天気で最高のピクニック日和だな
老後は縁側で日向ぼっことかもいいかもな
「ときにアンナ婆さんや」
「なんですかケンタ爺さんや」
ギュムゥ 「ひだた」 頬をつねられた
「複数のガイド精霊と契約できるのはわかったけどさ
ガイドが何人もいても仕方がないんじゃないのか?」
「ガイドと付いてるからやっぱりそう思いますよね
ですが案内だけと言うわけではありません
パートナーの役に立つための存在がガイド精霊なのです」
アンナは情報をくれるし戦闘もできる
ポチャは、癒し? 心の平穏のために必要だからアリか
でもそれはなんか違うような気もする
「この世界を生きるためにサポートするのがガイド精霊です
またガイド精霊も生きるためにパートナーが必要です」
「どういうことだ?」
「契約者の魔力を分け与えてもらっています
それにより私たちの能力が向上するのです」
「俺の魔力吸い取ってんの!?」
「必要最低限のみですので枯渇したりはしないですよ
それに魔力は回復するでしょ」
たしかに魔力枯渇状態になっていない
「そもそもプレイヤーさんたちは魔力量が大きいです
更に回復量も多く回復速度も速いので問題ありません」
なるほど、これも転移ボーナスみたいなものかな
「能力向上するって契約前より強くなるってことか?」
「はい、魔力量も回復も全てにおいて跳ね上がります
例えば私がギルマスさんを簡単に倒しましたよね
契約前だと倒せても少しは戦いになったと思います」
それって契約前でも倒せる強さってことだよな
俺のガイド精霊強過ぎ!
「デリートシステムに苦戦したのも契約前だったからです」
「なるほどね、だからパートナーは必要なんだな」
「はい」
ガイド精霊ってのも大変なんだな
いつ消されるかわからない
パートナーと出会えるかもわからない
全部は無理かも知れない
でも出会えたらなるべく助けることにしよう
「取ってきたよー♪」
かなり遠くまで飛んだようでようやく戻って来た
「飛ばし過ぎてごめんなさいねポチャ」
「ううん、遠くまで走れて楽しかったよお姉さん♪」
「「ええ子や!」」 キュウン♡
それから交互に何度か投げて遊んだ
うん、生きるために癒しは大切だ
翌日、街をぶらつきながら買い出しをしていく
ポチャは俺の後ろをトテトテ付いて来る
くそう、可愛いやつめ
するとアンナがポチャを抱きかかえる
「僕、歩けるよ?」
「人通りも多いしお店に入るので抱いておきます」
ふっ、アンナもすっかりポチャの可愛さにやられているようだ
しっかりしているようだが子供だな
そういうところは可愛いと思うぞ ニヤニヤ♪
「なんですかニヤニヤして、気持ち悪いですよ」
「気持ち悪くて悪かったな!」
やっぱりクソ生意気なガキだ!
翌日、やることがなくなったので部屋で引きこもる
アンナとポチャはフリスビーをやりに出掛けている
どうやら気に入ったらしい
契約しているから襲われることはないと思うので大丈夫だろう
俺は惰眠を貪ることにした
ベロン 頬を撫でられた
ベロン、ベロ、ベロ 何だ?
目を開けるとポチャの顔があった
ポチャが俺の顔を舐めていたらしい
「うお、ベチャベチャだ」
「やっと起きましたか、寝坊助さんですねお兄さん」
「お兄さん起きたー♪」
気付くまで舐め回していたようだ
「もう夕刻ですよ」
かなり眠っていたようだ
とりあえず顔を洗ってくる
「夕食をいただきましょう」
「ごはんー♪」
「そうだな、食べるか」
夕食は部屋に運んでもらう
ポチャがいるから食堂で食べれない
ちなみにポチャはよく食べる
今も厚切りステーキを三枚食べている
人間用のサイズを小さいポメラニアンがだ
「お肉美味しいです♪」
つぶらな瞳をキラキラさせながら言う
「そりゃよかった」
可愛いからヨシ
「さて、いよいよ明日の朝にこの街を出る」
「はい、王都を目指して西に向かうのでしたよね」
「実際の目的地は手前のオシリペンペン街だがな」
「でもこの街から出て西と言うと・・・・・」
「ああ、山がある」
西側は山がドンと立ち塞がっている
この山を越えないといけない
カブがあるから迂回してもいいかも知れない
カブは速いがそれでもかなりの遠回りになる
時間的にはわずかだが山越えの方が早いだろう
なので山越えルートで行こう
「山だから乗り物はなしだ、歩きで行く」
「そうですね、ポチャは大丈夫ですか?」
「僕なら大丈夫だよお姉さん♪」
「さすが俺の愛犬だ、よしよし」
頭を撫でてやる
「わーい♪」
喜んでいる、可愛い♡
ヒョイっとポチャを抱きかかえるアンナ
「さっさと寝ますよ、山登りのために体を休めましょう」
「おう、そうだな」
俺にポチャを独り占めされたくなかったんだろう
まったく素直じゃないねえ ニヤニヤ♪
「だからニヤニヤしないで下さい!」
ニヤニヤ♪
ゲシッ!
尻を蹴られた
ホント、クソ生意気なガキだ
ポチャの愛らしさを少しは見習えよ
明日のために俺もベッドに潜る
「おやすみ、ふわぁ」
「おやすみー♪」
「おやすみなさい、、、」
翌朝、宿屋を引き払い街の西門へ向かう
西門から出てほんの少しだけ歩くと山の手前に来た
木で囲まれていて山と言うより森だな
だけどここから先は山であることは間違いない
「この山を越えてその先にある街を目指す」
「はい」
「うん」
「それじゃあ行くぞ」
山は乗り物が使えないので自力で行くしかない
自然が相手だし魔物もいる
それでもこの山を越える
「俺たちはようやく登り始めたばかりだからな
この果てしなく遠いFPOをよ・・・・・」
「お兄さん、何を言っているんですか?」 ジト目
「いいじゃん、いっぺん言ってみたかったんだよ!」
打ち切りじゃないですよ?
まだまだこれからです
次回、猫




