24 西へ
街に戻って討伐完了の報告をしにギルドへ行く
ウソピョンは解体所に回される
毛皮は武器や防具の素材になる
肉はウサピョンよりも上質で美味い
だけど俺は食いたくない
あんな変態魔物食いたくない
知らない人は美味い美味いと食べるのだろう
知らない方が幸せだと言うことさ
報酬は1000万円をみんなで分配だ
ラインハルトに半分の500万円を渡す
一番の功労者だからな
残りの500万円を五人で分ける
何もしていないセマカにも分ける
納得できねえ
ラインハルトはウソピョンを撃破
俺はそのアシスト
アンナは結界や回復
ゼンとコホウは頑張った
でもセマカは一発KO
それでもパーティーだから報酬は渡さないといけない
なんて理不尽
当のセマカは100万円貰えてホクホク顔だ
少しは反省しろよおまえ
あと素材の換金は全額ラインハルトのものだ
当たり前である
「いいのかな、みんなのおかげでもあるのに」
「何言ってんだよ俺たちじゃ倒せなかったんだぜ」
「そうですよ」
顔も心もイケメンで謙虚なのはイヤミだぞラインハルト
どこの完璧超人だよ
いや完璧ではないな、少し中二病だし
「俺はこんなところで終わるわけにはいかない
俺を待っている精霊がこの世界のどこかにいるのだから
俺と精霊の逢瀬は何人たりとも邪魔はさせない!」
「これがおまえの全速力か」「俺はもっと速いぞ」
「言ったろ? 俺はおまえより速い、そして強い」
「フレイムランス、フルパワー!
赤く、紅く、朱く、燃え上がれ炎の槍!」
「魔を貫け、気高き暁の槍!」
とか言っていたしな
特にフレイムランス関連は完全に中二病だと思う
それを聞いてワクワクした俺もそうかも知れない
宿屋に帰って夕食後
「明日からどうしますかお兄さん」
「そうだなあ、狩りは止めておくよ疲れたし」
「そうですね、またボスを出しても困りますし」
「もう連続同種狩りはしないよ、俺も懲り懲りだ」
狩りをしないとなるとやることがないな
あれ、俺って狩りしか能がないってことなのかな?
ダメだ、生活習慣を正さなくては!
「どうしたんですか自分のダメさを痛感したような顔をして」
「アンナ、酷くね?」
このままダラダラこの街に居ても仕方がないな
「それじゃ明日は買い物でもするか」
「そうですね、お金も入ったことですし」
出発前にこの街を少し観光しよう
この街に来てから狩りばっかりしていたからな
「あ、でも無駄遣いしてはいけませんよ」
「おまえは母親か!」
「お兄さんみたいな息子はお断りします」
失礼なやつめ、こうしてやる
アンナの髪をわしゃわしゃと撫でまわす
「ひゃあっ!」
ぐはは♪ ぐしゃぐしゃヘアーにしてやったぜ!
「何するんですか! 変態!」
「誰が変態だ! 頭撫でただけだろ!」
「女の子の頭をこんなにするなんてセクハラです!」
腹立ったのでさらにぐしゃぐしゃにしてやった
殴られた、グーで三発
翌日、俺とアンナは街の商店街をぶらついた
服屋に寄ろうとするとアンナが遠くに離れる
「入りませんからね」
「わかったよ」 ちっ
お菓子屋の前で食べたそうにしていたので買ってやる
「ありがとうございます♪」
機嫌が良くなったようだ、チョロいやつめ
それから色々観光して回った
「明日か明後日にはこの街を出ようと思っている」
「そうですか、それじゃ馬車の手配をしないとですね」
「いや、馬車は必要ない」
「え?」
「俺には移動手段があるからな、アンナならわかるだろ」
「えーと、あ、そうですね、ありますね」
畑のおじさんから貰ったあの白い玉をやっと使う時が来た
てっぺんのボタンを押して地面に置くと乗り物になるのだ
その乗り物の名は、スーパーカブ!
スーパーカブ(野菜)を収穫してスーパーカブ(バイク)を貰った
ややこしいな!
スーパーカブにはたくさん種類がある
これはスーパーカブ110、ボディカラーはクラシカルホワイト
けれど本物ではなく似せただけのパチモンだ
だがパチモンと侮るなかれ
リアルだと免許が必要だがこの世界では免許など必要ない
燃料はガソリンではなく魔力なので自家製燃料だ
維持費などは一切掛からないお財布に優しい優れもの
魔石が搭載されていて防御結界が施されている
超強力な攻撃でなければ傷一つ付かないし汚れない
乗っている者も保護してくれるのでヘルメット不要
寒暖も防ぐから普段着で快適だ
速度もどんだけ魔改造したんだよってぐらい出せる
注ぐ魔力量によって速度を上げられるからだ
だけど速すぎて人身事故を起こすかも知れない
速度の出し過ぎは危険なので気を付けよう
カスタマイズも簡単に出来る
例えばシートの後ろの荷台
手を置き「タンデム」と言うだけでタンデムシートが付く
戻すときは「荷台」と言うだけ
パチモンでもとても便利な乗り物だ
「それでは明後日にしますか?」
「明日でもいいよ」
「明日もゆっくりしましょう
それにギルドへこの街を出ることの報告もしませんと」
そうだった、街を離れるときはギルドに報告しないといけない
ゲームのときは不要だったけど現実では必要なのだ
現実って手続きとか色々あって面倒だね
「ラインハルトも明後日出発って言ってたな」
「この街から北にあるフンコロガシ街でしたね」
本当に地名とか人名とかどうなっているんだ
「私たちはどこへ向かいます?」
「このまま西へ向かう」
俺はサイショノ村からずっと西へ向かっている
なぜならこのまま真っ直ぐ西へ向かえば王都があるからだ
でも目的の地はその手前の街、オシリペンペン街
ゲームで最後の刻を過ごした場所だ
突然のゲーム終了宣告
そして現実のFPOへ転移させられた場所
他のプレイヤーも何人かこの世界に転移している
そいつらもその街へ向かっている可能性が高い
最後の地だからこそこの世界の始まりの地にも成り得る
そこからこの世界での人生を始めようと思うはずだ
FPOプレイヤーならきっとそうに違いない
少なくとも俺はそうだからそこへ向かっている
それにもしかしたら会えるかも知れない
あの三人と、大事な仲間たちと
「西だと次の街は近いですね、ほぼ隣ですし」
「そうだな、名前もトナリ街だしな」
名前どうにかしろよ!
白い玉、スーパーカブをやっと使えました
今後もこれに乗って移動することが多々あります
次回、犬




