23 ウソピョン 3
「んー、変わったようには見えないケド?
ヤバい感じはするわね」
アンナが俺たちの結界を解く
「それじゃあ始めようかウソピョン」
「待ってたわYo♪
アナタはどれだけ楽しませてくれるのかしらあ♡」
俺とアンナは離れて見守る
せめてラインハルトに身体強化を掛けておこう
「ケンタ、強化はいらない」
気付いたラインハルトに断られる
「少しでも足しになると思うけど」
「いやすでに俺は最大強化されている」
よくわからないが身体強化は止めておこう
危なくなったら援護すればいいか
「わかった、でも無理するなよ」
「ああ、でも安心して見ててくれ」
「ラインハルトさん、頑張って」
「ありがとうアンナ」
ラインハルトはウソピョンの方を向く
「俺はこんなところで終わるわけにはいかない
俺を待っている精霊がこの世界のどこかにいるのだから
俺と精霊の逢瀬は何人たりとも邪魔はさせない!」
イケメンがかっこいいことを言っている
「精霊とイチャラブするから邪魔するなってことなんだよね」
「お兄さん、いくら事実でも身も蓋もないことを言わないで下さい」
「キミたち結構失礼だね」
「おもしろくない漫才は終わったかしら?」
おまえも失礼だな
「待たせてすまないね」
「イイわYo、いつでもドコからでもカモーン♡」
ラインハルトは動かない
「あら? どうして掛かってこないの?」
「遊んで欲しかったらそっちから来いよ」
人差し指をクイクイッと動かして挑発するラインハルト
「やーね、これだからイケメンって
しょうがナイから可愛がってア・ゲ・ル♡」
一瞬でラインハルトの眼前に来て拳を撃ち込む
スカッ
「あらあ?」
「どうした」
ラインハルトはウソピョンの後ろにいた
見えなかった、拳が当たったと思った
「結構速いのネ♪ ならコレはどうかしら♡」
振り向きざまに蹴りを放つがまた空振り
しかしラインハルトの位置をすぐに察知して攻撃を繰り出す
「面白いわねアナタ! アタシ昂ってキタわー♪」
休むことなく猛追するウソピョン
それらを全て躱していくラインハルト
「ぜんっぜん当たらないわ♪ 面白いわアナタ♪」
「そうかい、それはなによりだ」
ウソピョンが攻撃を止めて気合いを入れる
白い体毛が瞳と同じ赤になる
「リミッター解除♡ アタシの全開を味わいなさあ~い♪」
地を蹴った瞬間、ウソピョンの姿が消える
目で追えない速さで動いているのだ
その状態のウソピョンの攻撃がラインハルトを襲う
ラインハルトはギリギリ紙一重で躱している
これはヤバいのではないだろうか
「これがおまえの全速力か」
「そうYo♪ 声は聞こえても姿は追えないでしょ♡」
ふっ、と不敵に笑うラインハルト
「俺はもっと速いぞ」
言った瞬間、ラインハルトも消えた
ラインハルトが消えた直後
バキッ! 「な、ナンなのっ!?」
ウソピョンが弾き飛ばされるように姿を現す 更に
ドゴッ! 「うぐっ!」 ガスッ! 「きゃあっ!」
次々と攻撃を喰らい続けるウソピョン
「な、ナンなのよアンタ! ナンでそんなに速(ボゴッ!) ぎゃっ!」
転がるウソピョン
ラインハルトが止まって姿を現す
「言ったろ? 俺はおまえより速い、そして強い」
やべえ、かっこよすぎだろラインハルト
あんたバトル漫画の主人公かよ!
「おまえはたしか全属性の魔法耐性が高かったよな」
「そ、それがどうしたのYo」
「だけど耐性を上回る魔法攻撃なら防げないよな」
「はっ! そんな魔法攻撃をアンタが使えるって言うのかしら?
アイツの使ったメテオバーストより上でないと効かないわYo!」
ということは俺のメテオバーストでも倒せないってことなのか
「いや、今の俺ならフレイムランスで充分おまえを屠れる」
「はあ? フレイムランスなんかじゃアタシには傷一つ付かないわ」
「たしかに普通のフレイムランスならそうだろうね
でも注ぐ魔力や使用者の魔法攻撃力の高さで強さは変わる」
ウソピョンに余裕がなくなってきている
わずかに一歩退いた
「アンタにそれだけの力があるって言うのかしら?」
「今の俺は全能力が最大値、いやそれ以上になっている
そうだな、ゼンとコホウの代わりに言ってやろう」
ラインハルトは一呼吸して
『 舐めてんじゃねーぞクソ雑魚があッ!! 』
ウソピョンが言ったときよりも激しく空気が震動する
「フレイムランス、フルパワー!
赤く、紅く、朱く、燃え上がれ炎の槍!」
通常のフレイムランスよりも雄々しく力強さを感じる
「魔を貫け、気高き暁の槍!」
フレイムランスが猛スピードでウソピョンを貫く
ズバンッ!!
「ひぎいぃっ!!!」
ウソピョンの胸に大きな穴が空く
「う、うっそ、、じゃない、、、」
そのまま倒れるウソピョン
さすがにもう復活したりしないよな?
固い体毛がぐにゃりと柔らかくなっていく
ウソピョンの命が尽きたため魔力が流れなくなったからだ
すなわちウソピョンが死んだことを意味する
「終わったよケンタ、アンナ」
「ラインハルトすげー!」
「さすがですラインハルトさん」
ウソピョンの死体は倒したラインハルトの収納庫へしまってもらう
討伐した人の権利だ
ゼンとコホウに回復薬を飲ます
回復魔法をアンナが掛ける
これで二人の怪我も状態異常も治った
「不甲斐ない、俺たちは強いと慢心していました」
「悔しいですが確かにわたしたちはまだまだです」
あんな変態魔物にあしらわれて悔しいだろうな
二人は充分強いけど相手が悪かったんだよ
「くそ、手も足も出なかった」
セマカよ、おまえは何しに来たんだ
俺たちは少し休憩してから街へ帰ることにした
「ラインハルトのおかげで助かったよ、ありがとう」
「ケンタが俺を信じて魔法攻撃をしてくれたからだよ」
「そういやラインハルトの固有スキルって一体何なの?
攻撃魔法を受けるのが条件ってわけがわからないよ
リスクのあるスキルもあることは知っているけどさ」
「言ってもいいけど名称で引かないでくれよ?」
「条件だけで充分引き案件だと思うよ」
「・・・・・じゃやっぱり言わない」
「ごめん、引かないから教えてくれ」
「まあまあ、言いたくないなら言わなくてもいいと思いますよ」
アンナがラインハルトを庇う
「そういやアンナは知っているんじゃないのか?」
「知っていますけど個人情報なので言えません」
「アンナはいい精霊だね、まあ精霊はみんないい子だけど」
むう、なんかモヤモヤする
条件も大概だけど名称も引くようなものなのか?
気になるけど固有スキルはその人の切り札だ
あまりしつこく聞き出すものではないのはわかっている
仕方がないから諦めるとしよう
「わかったよ、でもいつか教えてくれよな」
「機会があればね」
そして休憩を終えて俺たちは街へ戻った
ラインハルト、圧倒的にウソピョン撃破!
ネーミングネタ
セマカ
すでにお気付きだろうけど「かませ犬」です
「カマセ」を逆から読めば「セマカ」になります
次回、サイショノ村で貰ったあの白い玉の出番です




