21 ウソピョン 1
遠くから走ってくる姿が見えた
そして俺たちの前に奴が現れる
ウサピョンが進化した上位個体、ウソピョン!
「サ」が「ソ」になってるだけじゃん!
だがこいつは強くて厄介で尚且つキモい
正直戦いたくないが俺のせいだから頑張るよ
「あらん、脆弱そうな子たちばかりねえ♪」
ウソピョン
兎の特徴を持った人型の魔物
仕上がったマッスルボディ
それを覆う白い体毛
その体毛はウサピョンの100倍の硬さがある
大きなウサ耳、血のような赤い瞳
無駄に長いまつ毛(これも白い)
ウサピョンより速く、跳躍力が高く、知能も高い
人語を話すことからも知能の高さはよくわかる
「でーも、アンタたちはアタシたちの敵だから容赦しないわYo♡」
人差し指を口の前で立たせてウインクしながら言う
口調がウザい、仕草がキモい
「ドコからでもいらっしゃ~い♪
たっぷり可愛がってあげるわYo♡」
相手したくないけど仕方がない
「こんな変態魔物、俺一人で充分だぜ」
セマカが単独で動く
おまえコイツがどういう魔物かわかっているのか?
セマカは素早くウソピョンの背後に回り込む
(簡単に後ろを取らせるとはやはり大したことはないな)
短剣で斬り掛かった瞬間
ドゴォッ! 「ぐあっ!?」
顎を蹴られて宙を舞い、そのまま落下してノックアウト
セマカの身体がピクピクして気絶している
ウソピョンはセマカに背を向けたままだ
背を向けたまま右足で後ろのセマカの顎を蹴り上げたのだ
関節や身体が異常に柔らかいのもウソピョンの特徴だ
そしてその一蹴りの重さと威力はご覧のとおりだ
「アタシをバックから襲おうだなんてイヤらしい子ね
あとヨワすぎじゃな~い?」
首をコキコキ鳴らしながらニヤリと笑うウソピョン
「さあ次はどの子がじゃれてくれるのかしらあ?」
俺たちを値踏みするように眺める
(アンナ、アレ何とかできない?)
(お兄さんごめんなさい、生理的に無理です)
アンナがものすご~くイヤそうな顔をする
気持ちはわかるぞ
(お兄さんが戦って下さい、お兄さんのせいなんだから)
(おまっ!? パートナーだろ、手伝えよ!)
(だから無理です、もう帰りたい、、、 ぅぅ)
かなりイヤそうだ
「ふふーん、お嬢ちゃん可愛いわねえ♪」
「ひぃっ!」
一瞬でアンナの眼前にウソピョンが来た
まさに眼前、鼻が当たるぐらい顔を近付けている
「はぅ、、、」
アンナが気を失いバタンと倒れる
「アンナァァァッ!!」
「あらあら脆いわね☆」
アンナに手を伸ばすウソピョン
「触るな!」
殴りかかるが一瞬で距離を取られる
「もう、ヤバンねえ♡ 慌てなくても相手してあげるわYo♡」
このキモさで相手は翻弄されてまともに戦えない
本来の実力の半分も出せなくなる
ただでさえ速く強いのに厄介この上ない
しかし俺の責任でもあるからやるしかない
身体強化を掛けて速度を上げる
すぐにウソピョンの懐に詰める
「あまり相手を舐めない方がいいぜ」
このままクラッシュで頭蓋を砕いてやる
ウソピョンの顔を掴もうと手を突き出す
ベロン 「ひぃっ、ぎゃあぁっ!!!」 ゾワワワ
舐められた、物理的に舐められた
掴もうとした手の平を舐められた
「てへっ☆ 舐めちゃった♡」 ウインク☆
舐められた気持ち悪さで動きが止まってしまった
ドスン! 「うぐっ!」
鳩尾に拳を撃ち込まれて俺は飛ばされる
くそっ、いてぇ、本当に厄介な敵だ
倒れている俺のところへゆっくり歩いて近付くウソピョン
だがゼンとコホウが立ちはだかる
「ケンタ、ここは俺たちに任せろ」
「こいつは拳士のわたしたちの方が適任です」
ウソピョンに魔法攻撃は意味がない
多少は効くが効果が激減される
全属性の魔法耐性が異常に高いからだ
魔導士の俺には相性が悪い
戦闘用スキルや武器があるから対応はできる
だけどさっきのような搦め手にやられてしまう
ここは二人に任せよう
「ゼン、コホウ、任せた」
せめてもの援護で二人に身体強化を掛ける
「あらん、二人掛かりなのね
イイわYo、遊んでア・ゲ・ル♡」
「俺たちの師匠は過去にウソピョンを数体屠っている」
「わたしたちはその師匠に鍛えられて認められているのよ」
二人は同門だったのか
しかも師匠はウソピョン討伐経験者
これは期待できる
「プークスクス♪ おもしろーい♪」
「何がおかしい?」
「笑ってごめんなさいね~、オモシロすぎたもんだから♪」
「ふん、笑っていられるのは今のうちよ」
ゼンが正面、背後にコホウが立つ
同時にウソピョンに攻撃を仕掛ける
殴打、蹴り、突き、正面と背後から次々と繰り出される技の数々
二人の攻撃は速く鋭い、それをウソピョンは捌き、躱していく
だがウソピョンは防戦一方、このまま押し切れそうだ
ドゴッ! バキッ! ガスッ!
二人の攻撃が当たり始める
さすがのウソピョンも拳士二人の相手は厳しいようだ
ガゴンッ! ゼンのアッパーが顎を撃ち抜く
ドガッ! コホウの肘鉄が腰骨にヒットする
崩れ落ちるウソピョン
ゼンとコホウは警戒を緩めずそれを見据える
うつ伏せに倒れて動かなくなるウソピョン
「俺たちの勝ちだな」
「わたしたちは師匠の自慢の弟子ですから」
何ともあっけない幕切れだ
「気を付けろ! まだだ!」
ラインハルトが何かに気付いて叫ぶ
「うっそ、ぴょ~~~ん♡」
「ぬ?」「え?」
次の瞬間、二人が弾き飛ばされていた
「くっ、何だ今のは?」
「何が起きたの?」
二人は辛うじて無事のようだ
しかしウソピョンが何事も無かったかのように立っている
「馬鹿な、死んだのではないのか!?」
「心臓の音も気配も身体の動きも止まっていたはずよ」
気配などを感じ取れる二人だからその通りなのだろう
だがこうしてウソピョンは生きて立っている
思い出すのが遅れた
ウソピョンは名前の通り嘘吐きなんだ
死んだふりして相手を騙す
勝ったと思わせぬか喜びさせる
そして相手に絶望を突きつけて殺す
その合図があのセリフ「うそぴょん」だ
二人はもう気付いているだろう
ウソピョンから漂うオーラを
先程の比にならないほどの圧倒的強者の気配を
「何だこの圧は」
「なにこれ、ヤバい」
臨戦態勢ではあるがかすかに身体が震えている
「イイわあ、アンタたち♡ 感じちゃったじゃないの♡
アタシもホンキになっちゃったわYo♪」
くそ、こんなところで終わるのか!
「さあ、血沸き肉躍る死亡遊戯を始めましょう♡」
強くても無理なものは無理なのです
アンナパイセンも無敵ではないのです
ネーミングネタ
ウソピョン
リーチがハズれた直後に水着のお姉ちゃんが画面端から顔を出して
「うっそぴょ~ん♪」と言って当たるというパチンコネタ
JAROのCMキャラからではありません
次回、ケンタがラインハルトに攻撃魔法を撃ちまくる




