173 第三の男 前編
まったく、バシバシ叩きやがってギルマスめ
「それじゃ俺たちはワッフル討伐へ行きますから」
「おう、ワッフルならいくらでも狩れ
ウサピョンはやめとけよー♪」
「わかってるよ!」
狩り場が違うからウサピョンとは遭遇しないっつーの
俺は前回のことは反省しているし学習してるよ
「ソロでやるのはやめた方がいいですよ
そもそもあなたに討伐は無理ですよね」
「ワッフルぐらいならまったく無理ではないですけど・・・」
受付でジョーさんとさっき俺とぶつかった青年の話し声が聞こえた
ワッフルならソロでも倒せるはずだが?
討伐依頼が可能ならあいつはEランク以上のはず
なぜジョーさんはあいつが討伐できないと決めつけているのだろう
少し気になったので様子を見ることにした
「まったく無理でしょ? だってあなたの職業は遊び人なのですから」
え、あいつの職業、遊び人なの!?
なるほど、そりゃソロで討伐は無理だわ
遊び人、回避行動に関してだけは最高級
だがすべての攻撃が最低級
ようは相手の攻撃はかすりもしないが遊び人の攻撃も当たらない
互いに倒せないから千日手となって討伐対象が諦めて去って行く
仲間がいれば攻撃してもらえるが遊び人単独では討伐なんて無理
あいつ、仲間はいないのか?
だとすると今までどうやって冒険者活動をしていたんだ?
まあ薬草採取や荷物運びなんかもあるけど
「お兄さん、そろそろ行きましょう」
「いや、あいつが気になって」
「なら助け舟出しますか?」
「ん? 珍しいな、アンナがそんなこと言うなんて」
他の冒険者がトラブっていても手助けをすすめるなんて一度もなかった
「あの人、FPOプレイヤーですよ」
「え、そうなの!?」
手助けをすすめたのは俺と同じFPOプレイヤーだからか、納得
「みんな、あいつを同行させてもいいか?」
「はい」「いいぜ」「もちろんでござる」「いいわよ~♪」
同じワッフル討伐だし、合同討伐でも問題はない
「ジョーさん、俺たちもワッフル討伐だから合同でならいいんじゃないか?」
「ケンタさん、たしかにそれなら大丈夫ですね」
「えっと、さっきぶつかった人ですね、さっきはすみませんでした」
「それはこっちの不注意だからいいって」
「はい、ありがとうございます
それで、俺が一緒に行っていいんですか?」
遠慮しがちに聞いてくる
「いいよ、同じ依頼だし」
「よかったですねダイさん、これなら許可できます
なにせケンタさんはBランクですから安心ですよ」
「Bランク!? そんな人に助けてもらえるなんて・・・ ん?」
「ん?」
なんだろう?
「どうかした?」
「あ、いえ、なんでもありません」
気にはなるがあまり深く追及しないようにしよう
せっかく会えたFPOプレイヤーだ、まずは打ち解けないとな
依頼の手続きが終わって俺たちとダイはワッフル討伐へ向かう
街の東門から出てすぐのところに小さい森がある
その森から少し北へ行くと平原に出る
チョコレート平原、少し先に山や岩場が遠目に見える
そこまで行く必要はないので森から出たところで一旦止まる
「一応自己紹介しとこうか」
「そうですね、でもその前に確認していいですか?」
「なんだ?」
「ケンタさんはFPOプレイヤーですか?」
俺たちはダイがFPOプレイヤーだとわかっている
でもダイはガイド精霊がいないからわからない
おそらく俺の名前でなんとなく気づいたのだろう
もちろんファンタジー世界でもケンタという名前はいるだろう
だけど黒髪黒目でケンタだからな
「そうだ、ダイもそうなんだろ?」
「はい、やっぱりわかっていたから助けてくれたんですね」
「ああ」
「でもガイド精霊がいなくてよくわかりましたね」
ガイド精霊の存在は知っているのか?
だとするとガイド精霊がそばにいないのはなんでだろう
「アンナ、ガイド精霊はダイのそばにいないのか?」
姿を消して付いて来ているかも知れないからな
「いえ、ダイさんのそばにガイド精霊はいません」
「それじゃあなんでガイド精霊の存在を知っているんだろう」
ダイを見るとポカンとアンナを見ていた
「ダイ、どうしたんだ?」
「ケンタさん、FPOプレイヤーなんですよね?」
「そうだって言ったろさっき」
「もしかして、そっちの子、ガイド精霊なんですか?
それに名前が、アンナって・・・」
ガイド精霊の存在がわかるからアンナもガイド精霊だと理解したのだろう
でもアンナの名前になにかあるのか?
もしかして上位個体の存在も知っているのか?
「キミ、上位個体序列一位だよね
名前はたしかアンナ・イニンだったはず」
知っていた、しかもフルネームもわかっている
アンナも驚いている
「まさか、ちょっと待って下さい・・・」
アンナがナビでなにかを調べている
「そうか、ダイという名前、なるほど・・・」
「アンナ、ダイがどうかしたのか?」
「ダイ・マオウさんですね、あなたのキャラネーム」
「そうだけど、できればフルネームは勘弁して」
大魔王かよ、やっぱFPOプレイヤーだわ
「それでダイがなんだっていうんだアンナ?」
「ダイさんはプレイヤー序列三位です」
なんだって!? こいつが三位だったのか
「私のことを知っていたということはもしかして・・・」
「うん、俺はすでに契約済みだよアンナちゃん」
ガイド精霊序列三位とすでに契約しているってことだ
「でもダイの近くにいないんだよな、アンナが探知できなかったんだから」
「トナリ街にいるから離れ過ぎて探知できなかったのだと思います」
「なんで一緒にいないのですか、契約したなら離れないで下さい!」
「落ち着けアンナ」
珍しくアンナがうろたえている
「なんかごめん」
「いえ、私こそすみません」
ダイがすまなさそうに謝り、アンナも少し落ち着こうとしながら謝る
「私たち三人はいつも一緒にいて姉妹のようなものなんです
だけどこの世界でバラバラに配置されました
会いたいと願っていますが叶いにくいこともわかっています
だから近くにいるなら会いたい・・・」
家族がこの世界にバラバラで飛ばされたようなものだ
ましてやそれぞれが違うパートナーと契約する
そうなるとそれぞれが違う場所で生きることになる
俺にアンナはついてくる
ラインハルトに序列二位の子が行動を共にする
序列三位の子はダイと行くことになる
三人は常に一緒にいられない
だからこそ、会える機会があれば会いたいのだろう
「なあ、なんで序列三位の子と別行動しているんだ?」
「えっと、その子の名前はセン・ドウシャと言います」
セン・ドウシャ、なるほど先導者か
アンナが案内人だからな
じゃ序列二位の子はなんだろう?
「センは元気にしていますか?」
「うん、元気だよ」
それを聞いて安堵の表情を浮かべるアンナだった




