157 サーティーワン
俺とトムとハックは待ち合わせ場所へ行った
まだ女子チームは来ていない
「いいか二人とも、女の買い物は長いんだ
彼女ができてもその長い買い物に文句を言ってはいけないぞ」
「らじゃー!」
「ぶらじゃー!」
彼女いたことのない俺が子供相手に偉そうに語る
「だからその返事はやめなさい!」
ベッキーがやって来た
「お兄さん、彼女いたことないくせになにを偉そうに」
聞かれていた、コッパズカシイ
「わりいな、ちょっと時間かかった」
「いいよベンケイさん」
それから俺たちは屋敷へ帰る
「それじゃわたしたちは夕食の準備をするわね」
「手伝います」
サクラさんとベッキーとアンナが夕食の準備を始める
料理できない組の俺たちは各自くつろがせてもらう
「皿並べるぐらいは手伝えるぞ?」
少しぐらいは手伝おうと言ってみる
「お兄さんは部屋で引きこもっていて下さい」
追い出された
なんだよう、それなら遠慮なく引きこもってやるう!
「みんなでトランプでもやって遊んどこうぜ」
ベンケイさんとアオイくんと部屋で遊ぶことにした
もちろんトムとハックも一緒だ
夕食の準備ができてベッキーが呼びに来る
なんか結構早かったな
食堂に入るとテーブルには料理がまだ並んでいなかった
「あれ? なにもないぞ?」
「お兄さんはさっさとこっちへ座って下さい」
アンナに急かされて座る
「じゃ運ぶか」
「はい」
ベンケイさんとアオイくんが料理を運ぶために厨房へ行った
多いから運び手が必要だったのか
「だったら俺も手伝うよ」
立ち上がろうとしたら立ち上がれなかった
がっしりとアンナが俺の肩を押さえて身動きできない
「おいアンナ、なぜ邪魔をする」
「肩こってますね」 ギリギリ
「いたた!」
「大人しく座っていないともっとしますよ?」
「どんな脅しだ!」
仕方がないので大人しく座っておくことにした
ほんの少ししてみんなが料理を運んでくる
テーブルに次々と料理が並ぶ
唐揚げ、フライドポテト、サラダ
それぞれ大皿に盛られていて各自で取って食べる形式らしい
いつもは各自の皿に盛られていたが今日はバイキング形式か
他にもパスタやパンやスープも並ぶ
なぜか俺の手前にはまったくなにも置かれず広い空間ができていた
まさか俺は食うなと?
「お待たせー♪」
サクラさんがやって来て俺の前に収納庫から取り出したものを置く
「サクラさん、これって・・・」
目の前に大きなホールケーキが置かれていた
クリームでデコレーションされていてイチゴがたくさん乗っていた
真ん中にチョコレートの板が置いてある
その板には 「 Happy Birthday to Kenta 」 と書かれていた
「「「「「「「誕生日おめでとう♪」」」」」」」
「みんな・・・」
ベッキーたちもみんなと一緒におめでとうと言ってくれた
そういや今日は9月6日、俺の誕生日だった
ベッキーの件で慌ただしくて忘れていた
でもベンケイさんたちは覚えていてくれていたようだ
やべえ、泣きそう
「さあお兄さん、サクッと消しちゃいましょう♪」
ドスドスドスドス
少し大きめのローソク3本と普通サイズのローソク1本
アンナがケーキの四方へ豪快に刺していく
サクラさんが超最小のファイヤで火をつける
「ケンタくん、どうぞ♪」
「うん・・・」
息をのみ少し緊張しながらふうっと息を吐き火を消した
同時にみんなから拍手される
「この歳でなんか恥ずかしいよ」
俺は31歳になった
さすがに気恥ずかしい
「それじゃ食べようぜ♪」
「じゃ並べるわね」
サクラさんが各自の前にステーキを出していく
先に出すと冷めてしまうから収納庫へ入れていたようだ
俺の誕生会のために買い物が長引いたそうだ
みんなありがとう、やっぱ泣けてきた
「ところでトムとハックは知っていたのか?」
「ううん、さっき厨房で聞いたばっかり」
「おじさんにサプライズだって」
トムはともかくハックは知っていたらポロリと言いそうだからな
だから二人には言っていなかったんだな
ケーキはベッキーとアンナが選んでくれたそうだ
他の料理はサクラさんが作ってくれた
「そろそろ渡すかアオイ」
「はいベンケイ殿」
アオイくんがラッピングされた袋を俺に渡してくれる
「バースデープレゼントでござる」
「ありがとう」
まさかプレゼントまでもらえるとは
「私とアオイが選んだが全員からのプレゼントだ」
「みんな、ありがとう」
カサカサと開けてみる
指の部分が覆われていない黒革の手袋が入っていた
いわゆるフィンガーレスグローブだ
「ふおお、こういうの欲しかったんだよ♪」
思わず歓喜の声をあげてしまった
元の世界ではおっさんには似合わないと買えずにいたんだ
でも欲しかったんだよ
ウィッシュ! とかやってみたかった
あとでこっそりやろう
「そうだろ、ケンタが欲しがっていたのは知っていたからな」
「ベンケイさん」
ベンケイさんにはFPO時代に話したことがあったからな
覚えていてくれてたんだ、さすが相棒
・・・あんなことやこんなことも覚えていそうだ
そこらへんは忘れてベンケイさん!
「おじさん、どうぞ」
「ベッキー?」
俺の横に座るベッキー
フォークにクリームのついたイチゴを刺してこっちへ向ける
「えっと、その、あーん?」
「なにしてんの!?」
リディアみたいなことすんな!
「アンナさんがこうするとおじさん喜ぶって言ってたから」
「アンナーーー!」
「あははは♪」
爆笑してるんじゃねえ!
ベッキーになにを教えているんだ!
でも食べました
ベッキーが照れながら笑ってくれていた
その笑顔ですべて許す
「みんな本当にありがとう
こんなに祝ってもらえた誕生日は初めてだ
こんな俺だけどこれからもよろしくな」
「おう♪」
「もちろんでござる」
「仕方がないですね」
「もちろんよ♪」
「わたしたちもよろしくです」
「おじさんよろしく」
「よろしくー♪」
それからたくさん食べて、たくさん話してバカ笑いをした
じつは元の世界で祝ってもらったことがなかった
ゲームの中でフレから祝いの言葉をもらったことはある
といってもフレはベンケイさんたちぐらいだけど
リアルで祝ってもらえたのは今日が初めてだ
ちょっとだけホロリと涙が出てきた
それを見逃さなかったアンナにいじられつつ誕生会は進んだ
くそうアンナパイセンめ
だけどありがとう
仲間がいる、家族がいる、俺の理想に少しだけ近づいた
生まれて初めての最高の誕生日だ
この幸せを俺は守ろうと心に誓った




