154 王都の冒険者ギルドにて
ケンタさんたちと情報交換をしてギルドへ戻ります
戻ってすぐに頼まれた馬車を手配します
そして別の馬車にわたしは乗り込みます
「いつでも行けますよ」
「ではお願いします」
キットさんと一緒に王都の冒険者ギルドへ向かいます
王都へは街から約一日半かかるので着くのは明日の夕刻あたりでしょう
ケンタさんたちの決着の方が早いと思います
予定どおり翌日の夕刻、王都に着きました
さすがに遅い時間なのでギルドは明日になります
いよいよ明日はユザワヤさんと対面です
やれる準備はすべて万端です
「今頃ケンタさんたちどうなったかなあ」
そんなことを思いながら眠りにつきます
翌日、わたしとキットさんは冒険者ギルドに来ました
新人の頃、王都のギルドで働いていたので懐かしいです
知った顔も何人かいるため挨拶してくれます
「ベル先輩、お久しぶりです」
「フェルトちゃん、久しぶり」
わたしが街のギルドへ移籍する少し前に入った後輩です
わたしの仕事の引き継ぎもこの子にやりました
「今日はどうしたんですか?」
「少しニードルさんと話があってね」
「もしかして王都に戻ってくるんですか?」 わくわく
「そういう話じゃないの、ごめんね」
「残念です」 しょぼん
わたしに懐いてくれているから申し訳ないです
「たまには遊びに来て下さいね」
「ええ」
フェルトちゃんと別れてニードルさんの執務室へ行きます
「「失礼します」」
わたしとキットさんは執務室へ入ります
「久しぶりだなベル、元気そうでなにより」
「お久しぶりですニードルさん」
「キットさんもお久しぶりです」
「久しいですね、ニードルさん」
ニードルさんの方が深く頭を下げてキットさんに挨拶をする
ニードルさんは裏組織のボスのような風貌です
キットさんのことをニードルさんは尊敬しているそうです
キットさんに冒険者時代とても世話になったそうなのです
「それでユザワヤさんは?」
「呼びにやっているからもうすぐ来るだろう」
「やあベルくん、キットくん、やっと来たね♪」
執務室に軽い足取りで入って来た男性
この方はわたしがシシリー様にお願いして来ていただきました
「シリウス様、本日はお越し下さりありがとうございます」
「堅いなあ、私と君の仲じゃないか」
「ただの学院時代の先輩後輩なだけです
そんなことより今日は頼みましたよシリウス様」
「そんなことって酷いなあ、でも任せておくれ♪」
昔から軽い人ですが凄い人なのは知っています
あまり頼りたくないけど今回は仕方がありません
ガチャリ 「ニードルさん、緊急の用件とはなんでしょうか?」
扉が開いてユザワヤさんが入って来ました
さあ、糾弾の時間です
「おや、ベルさんとキットさんじゃないですか、なぜこちらへ?
それと、こちらの方はどなたですか?」
シリウス様の顔は初見のようでわからないようです
「ああ、私のことはお構いなく♪」
怪訝そうにシリウス様を見るユザワヤさん
「それで何用ですかニードルさん」
「お前にいくつか確認したいことがあってな」
「なんでしょうか?」
「お前はもう冒険者は廃業したよな」
「ええ、それでギルドに雇ってもらっています」
「冒険者でもないのに冒険者の仕事をやっていないか?」
「するわけないでしょう、変なことを聞きますね」
「風の戦士団に聞き覚えは?」
「ベルさん? そりゃ知っていますよ、ランクも高いパーティーですからね」
「その風の戦士団と一緒に迷宮攻略をやっていましたね」
「ベルさんまでどうしたのですか? やるわけないですよ」
表情も変えずに否定するユザワヤさん
「そもそも迷宮攻略は未登録では参加できませんよ
たまにいるみたいですが困りますよね
もしかして私がその輩と同じと思われているのですか?」
心外だといった感じでため息をつくユザワヤさん
「そうですね、証拠はまだありませんから今はいいです」
「まだ? ベルさん、少し失礼ではないですか」
「近いうちにその証拠が揃うはずですから」
「本当に失礼ですね」
少しイラついているようですが顔には出しませんね
「話は変わって、これを見て下さいユザワヤさん」
「キットさん? これは?」
キットさんがユザワヤさんにとある書類を見せる
それはケンタさんからわたしが預かった書類です
「シッドさんという方がマニーという者に借金した借用書です」
「完済してるようですね、これが何か?」
「そのシッドさんの署名、直筆ではありません」
「はあ、だからそれがどうかしたのですか?
その方が騙されたというのはわかりますが私には関係ありませんよ
まったくさっきから皆さんおかしいですよ」
ソファに座っていたシリウス様が立ち上がります
「それ君の仕業だよね?」
「はあ? なんですかあなた、わけのわからないことを」
「キットくん、あの書類も見せてあげて」
「はい、シリウス様」
(この男、シリウスというのか)
キットさんが別の書類を見せる
それは迷宮攻略の参加メンバー登録書です
風の戦士団とシッドさんの名前が書いてあります
「先程言っていた迷宮攻略の書類ですね
騙されたというシッドさんの名前もありますね
これがなんだというのです」
「参加登録書と借用書のシッドさんの署名、どちらも同じだよね」
「同じ人なんだから当たり前でしょう、なんなんですかあなた」
シリウス様の指摘に反論するユザワヤさん
「人物が同じということではなく字が丸々同一だということですよ
大きさも角度も字の太さもすべて同一」
「それが、なにか・・・」
ユザワヤさんの眉がピクリとした
「これって君のスキル<転写>だよね♪」
<転写>は文字や絵を別の紙に写し取るスキルです
ユザワヤさんの頬がわずかに引きつる
「なにを馬鹿なことを、私は<転写>スキルなんか持っていませんよ」
「私のステータス鑑定で君のスキルは見えているよ♪」
「はあ?」
シリウス様はステータス鑑定ができます
但しステータス鑑定は許可なく行うことは禁じられています
「あなたが本当に見えているかなんてわからないじゃないか!
仮に見えたとしてもそれは違法だ、訴えてやる!」
「正式に許可を得ているから違法じゃないよ」
「嘘を言うな! ステータス鑑定の許可は簡単には取れないんだぞ!
許可をとれたというならその証明書があるはずだ!」
「あるよ」
「へ?」
懐から許可証を広げてユザワヤさんに見せるシリウス様
その許可証に目を通すユザワヤさんの表情は硬かった
「許可した者の署名が・・・」
ユザワヤさんは困惑する
「馬鹿な、なぜ第一王妃様の署名が、それに印まで正式のものだ」
「本物だよ、君だってこれが本物だということぐらいわかるでしょ」
本物であるとわかっているので反論しないユザワヤさん
ステータス鑑定の許可は王族もしくは陛下が認めた数人しかできません
今回は第一王妃様が許可して下さいました
「し、しかし、なぜ王妃様が? あんた何者だ!」
「シリウスってキットさんが言ってたでしょ」
「それは聞こえていたが・・・」
ニッコリ笑ってシリウス様が名乗る
「私はシリウス・ペンペラン、爵位は子爵だ」
「ペンペラン子爵? ペンペラン、まさか・・・」
「私はオシリス・ペンペラン伯爵の弟だよ」
「だとすると・・・」
「わかってくれたようだね、君の考えどおりだよ
兄の奥さん、私の義姉さん経由で王妃様から許可を貰ったのさ♪」
オシリス様の奥様は第一王妃様の専属侍女長です
そして王妃様とは幼少の頃からの親友だそうです
オシリス様が奥様に連絡して王妃様に許可を頼んだのです
「くっ、だが私が<転写>を持っているかなんて証明できませんよ
私を陥れるためシリウス様が言い張っているだけではないですか!」
「うん、そういうと思っていたよ♪」
「ふ、ならどうしますか?」
逆転したとほくそ笑むユザワヤさん
「法廷でね、私以上の方にステータス鑑定してもらおう♪」
「はあ? 同じことだろ、そいつも言い張るだけだろ!」
「仮にそうだとしてもその方の鑑定を疑うのは不敬にあたるよ?」
「どういうことだ?」
焦っているユザワヤさんは貴族相手に言葉を選べなくなっています
「だってその方は第一王妃様だからさ」
「な、んだと、、、」
第一王妃様もステータス鑑定が使えます
しかも王妃様だから誰の許可もいりません
そして王妃様の鑑定を疑うことはたしかに不敬にあたります
「諦めろユザワヤ」
「ニードルさん・・・」
悔しそうに膝をつくユザワヤさん
それでもまだ諦めません
「だが、その転写をしたのが私だという証拠がないではないですか!」
「いや、王妃様が鑑定することになったら一発で君だとバレるよ」
「あ・・・」
シリウス様はステータスは鑑定できますがそこまでです
王妃様はステータス鑑定以外に魔力鑑定もできるのです
魔力鑑定は魔力残滓から誰が使用したかを判別できるのです
それ以上ユザワヤさんはなにも言わなくなりました
そして警備兵に連行されて拘留されます
「やっと終わった」
どっと疲れが出たわたしは大きいため息をつきました
「ベルくんお疲れさま♪」
「シリウス様、今日はありがとうございました」
「ベルくんの頼みだからね、頑張ったよ♪ 褒めて褒めて♪」
「素直に褒めたくないのですが・・・」
助かりましたがこの軽さが気に入りません
「それじゃ私は帰るよ、またねベルくんキットくん♪」
「はい、ありがとうございました」
「シリウス様、感謝致します」
シリウス様は帰っていきました
わたしたちは明日の昼前の馬車で街へ戻る予定です
今夜は宿屋で疲れを癒すとしましょう
「ああベルさん、帰ったら始末書を書いて下さいね」
「あう・・・」
いい笑顔でキットさんから言われます
ギルドの情報端末を私的利用した件の始末書です
「了解しました」
足取り重く宿屋へ向かいました、とぼとぼ、、、
第三章閉幕です、第四章もお読みいただけるとありがたやありがたや
第四章からはまたあちこち冒険します(別大陸にも行きます)
それからやっとファンタジー世界っぽくエルフや獣人など他種族が出ます
今回、王族の話が出ました、今後関わってくるためお楽しみに♪




