145 決戦開始
地面に叩きつけるようにトムを何度も殴り続けるゴート
「これなら飛ばされず逃げ道はねえだろ♪」
「うぐぐ・・・」
(恐いけど、サクラ姉ちゃんの結界があるんだ! 耐えろ僕!)
「はは、結界だろうがいつまでも持たねえぜ♪」
「え?」
「結界ってのは耐久度ってのがあんだよ
そいつが底を尽いたら結界は消える
だからこのまま殴り続けていればいずれ拳は届く!」
「そんな・・・」
バキン!
「おっと、今ので結界が消えたようだぜ♪」
続けて撃とうとした拳を止めるゴート
拳を開いてトムの首を掴んでぶら下げる
「ぐぅ・・・」
「ぎゃはは、苦しいかガキィ♪」
もう結界はない、ゴートの一撃で子供のトムなど軽く死ぬ
「俺相手によく頑張ったぜお前、褒めてやる
簡単には殺さねえよ、数発小突いてじわじわ殺してやるぜ♪」
「・・・・・」
トムは身体をじたばたさせる
「はは、最後の悪あがきかよ」
トムはじたばたさせながら身体を後ろへ逸らす
「あん?」
そのままゴートの顎を蹴り上げた
「んぐぅっ!?」
ゴートの言うようにトムは悪あがきをしていただけ
しかし靴の脚力強化により蹴りの攻撃力も上がっていた
蹴られたゴートはクラっとして手を離す
そのままドスンと尻餅をつき少しばかり脳震盪で動かない
「かはっ、ごほっ!」
トムはなんとか息をするが動けない
そして回復はゴートの方が早かった
ゆらりと立ち上がるゴート
「やっぱお前、殺すわ」
完全にキレたゴート、その殺意全力の拳がトムへ放たれる
(おじさん、姉ちゃんだけでも助けて、僕はもうダメだよ)
ズドンッ!!
ゴートの拳がトムに当たる寸前で止まる
そして拳とともにゴートの身体が浮いて後ろへ飛ばされる
「ぬぐぅっ!?」
地面にバウンドするゴート
トムの前に着地する人影が一つ
「来て、くれたんだ、、、」
「待たせたなトム」
ツインテの金髪がふわりと風に揺れる
「ベンケイ姉ちゃん!」
「よく頑張ったな、あとは任せろ」
逃げるハック、それを追うゲシュ
「小さいのに案外速いな」
(なんか走りやすいや)
トム同様、ハックも靴に仕込まれた脚力強化を知らない
小さくすばしっこいのも相まって中々捕まえられないゲシュ
「うりゃ!」
十字路を右に曲がるハック
バラバラバラ・・・
「そろそろ本気で走るか」(なんか変な音したな?)
ゲシュは速度を上げて十字路を曲がる
ガッ! ズシャアッ!
「うわ、いててて! なんだこりゃ!?」
曲がった直後、大量の小石に足を滑らし転がり滑るゲシュ
「この程度のトラップで逃げ切れると、おも(ガツン)っんがっ!」
立ち上がろうとするゲシュの顔面にこぶし大の石が当たる
ゴン! そのまま倒れて後頭部を地面に散らばる小石で強打する
「~~~っっ!!」
顔と後頭部を押さえてもんどりうつゲシュ
さらに散らばる小石で背中や身体中にダメージを受ける
その隙にハックは逃亡
(いってぇ、くそぅ、あいつ!)
のたうつのをやめて少し回復を待つゲシュ
そしてゆっくりと起き上がる
「優しくしてやろうと思ったがやめた、虐めてやる」
地面に向けて魔法を放つ
『ウインド!』
風を起こして小石を吹き飛ばす
『フライ』
飛んで上空からハックを探す
(どうやら入り組んでいる路地に入ったな)
路地に入ると少し離れたところにハックが立っていた
「面白い抵抗をしていたが諦めたのか?
それともまだ何かトラップを用意しているのかな?
今謝れば許してやる、こっちへ来い」
「いやだい!」
ハックが両手に持っていた空き瓶を投げる
だがそれは上へ飛んで行く
「なんだそれ、さっきの石みたいにまっすぐ投げないと当たらないぞ?
しょせんは子供だな、可愛いねぇ」
さらに空き瓶を両手に持ち上へ投げるハック
「もしかしてヤケになっているのか?」 ガシャン! ガシャン!
上から割れる音がしたので上を見るゲシュ
最初に投げた二本の瓶が屋根の突き出た部分に当たり割れていた
その破片がすべてゲシュの頭の上から落ちてくる
「なにぃっ!?」
続けて二投目の瓶も同じところへ当たり砕け散り落ちてくる
さらに三投目が放たれて次々と瓶の破片が降り注ぐ
「うわわあっ!!? いたっ! いてて! ちょ、やめっ!!」
降り注ぐガラス片にあちこち切られていくゲシュ
ハックは手を止めず瓶を投げ続ける
破片の雨は夕焼けの光をキラキラと映しながら降り注ぐ
どんどん傷だらけになっていくゲシュ
「どうだい! アオイ姉ちゃん直伝、破砕豪雨斬!」
「こ、この、いてっ! ウインド!」
自身のまわりに風を起こして降り注ぐ破片を飛ばす
ハックはもう瓶を持っていなかった
「これで手詰まりだろ、(ゴン!)っうがっ!?」
またも顔面に石をぶつけられる
倒れて地面に落ちている無数の破片が突き刺さりまくる
再度のたうちまわるゲシュ
「い、いい加減にしろ、、、」
ゲシュはさすがにキレた
「手足もいで肉人形にして遊んでやる! トルネード!」
竜巻を起こして地面の欠片をハックに向けて飛ばす
「うわあっ!」
結界にすべて弾かれたため怪我を負うことはなかった
しかし風圧で飛ばされてしまう
怪我はしないが目が回るハック
「うう、クラクラするよう・・・」
「悪い子にはお仕置きが必要だな」
ゲシュがハックのすぐそばまで近付く
「まずはその邪魔な結界を壊さないとな
まあ強力な攻撃魔法をぶつけまくればすぐ壊れるだろう
ストーンブラストでもぶつけてやろうか」
ゲシュはストーンブラストをハックに放つ
大きめの岩がハックに当たり爆発する
「結構強力な結界だな、一発じゃ無理か」
立て続けにストーンブラストを数発撃ち込む
迫る大岩、至近距離での爆発
身体へのダメージはないが恐怖するハック
(こわいよう、兄ちゃん、姉ちゃん、、、)
バキン! 結界が壊れる
「やっとか、それじゃお仕置きしようか♪
低火力のファイアボールで軽く足を焼いてやろう」
ハックの足元へ手を向けるゲシュ
そのゲシュの眼前を虹色の何かがよぎる
「なんだ!?」
背中に虹色の羽根を生やした蒼い瞳の少女がゲシュの前に立つ
そのまま超速の正拳がゲシュの顔面を貫いた
ボゴォッ! 「っ、だぁっっ!!?」
30メートルほど吹き飛んだゲシュ
「ア、アンナ姉ちゃん!」
「遅れてごめんなさいハック」
ベッキーの腕を掴むサジン
バチン!
しかしその手は弾かれる
「なんだ?」
「ああ、結界ですね」
「結界なら掴む前に弾かれるだろ? それに動けるっておかしいだろ」
「そうですね、だけどこれは間違いなく結界ですよ」
ザキはベッキーに張られている結界を鑑定する
「これは面白い、まるで服のような結界です
こんな結界を張れる人がいるのですね」
「面白がっている場合か、これじゃ連れて行けないだろ」
「大丈夫ですよ、任せて下さい」
ベッキーへ手をかざすザキ
『強制解除』 バキン!
「これで結界は消えました」
「奴の仲間にはこんな結界を張れるのがいるんだな」
「是非その人は私の実験体になって欲しいですね♪」
再度ベッキーの腕を掴むサジン
「きゃっ」
「大人しくしてろ」
シュバッ!
「っ!?」
サジンはベッキーから手を離して大きく後ろへ下がる
サジンの肩があった場所の地面に氷の槍が突き刺さる
そしてその場へ降り立つケンタ
「感づいて避けたか、さすがSランク様」
ケンタはベッキーを庇うように抱き寄せる
「お、おじさん、、、」
「遅くなって悪かったなベッキー、ケガはないか?」
「わたしは平気、でもトムとハックが!」
「二人なら助けが行ったから大丈夫よ」
「お姉さん!」
サクラがチンピラどもの背後にいた
チンピラどもがいつの間にとざわつく
「そんじゃさっさと片付けようかサクラさん」
「そうね、やっちゃいましょケンタくん♪」




