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愚者の楽園に転移したけどまったく問題ない  作者: 長城万里
3 ただいま

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132/159

132 調査

交代でベッキーたちを護衛しつつ活動する俺たち

今日はベンケイさんとアオイくんが護衛だ

俺とサクラさんとアンナが動く


アンナには商業ギルドへ行ってもらった

サジンは入手した金塊を換金しているはず

もちろんそういった情報を他者へ教えてはくれないだろう

だからウーフさんと交渉して少しでも情報をもらいたい

ここはアンナに任せるしかない、俺は交渉が下手だからな


サクラさんはチョビ髭の調査へ向かった

サクラさんは俺とは違いキレ者だからお任せすることにした

美人スパイをイメージしたことは内緒だ


そして俺は冒険者ギルドへやって来た


「こ、こんにちは」

「・・・こんにちは」


受付である、ベルさんである

お互い少し照れながら挨拶をする


あの告白以来ずっと会っていなかったからな

告白後久々の再会である


どんな顔したらいいのかわかんないんだよ!


「お久しぶりですねケンタさん、今日は依頼ですか?」


さすがプロ、すぐに落ち着きを取り戻して対応してくれる


「じつは少しベルさんに頼みたいことがあって」

「なんですか?」


「風の戦士団って知ってるよね」

「ええ、ランキング5位のAランクパーティーですからね」


「最近そいつら迷宮攻略してたよね」

「・・・ええまあ、よく知っていますね」


「俺の知り合いがその攻略に合同で参加したんだよ」

「なるほど、それで知っていたのですね」


「それでそのときの参加メンバーや結果を教えてほしいんだけど」

「・・・・・」


ベルさんが困った顔をする


「ケンタさん、その知人の方の名前は?」

「シッド・トウェインさん、Aランク冒険者です」


端末を確認するベルさん


「嘘ではないようですね、たしかに参加していらっしゃいました」

「嘘なんか言わないよ?」


なんか難しい顔をしている

どうしたんだベルさん


「参加は確認できました、これでいいですか?」

「えっと、だから他の参加メンバーと結果も教えてほしいんだけど」


はあ、とため息をつくベルさん

なんかちょっと怒っていらっしゃる


「わたしにはケンタさんが何を調べたいのかはわかりません

 ですが他の方々の依頼内容に関しては個人情報です

 お教えすることはできません」


それはわかっている

でもベルさんならこっそり教えてくれると思っていた


「でも俺たちの情報だってあちこちに筒抜けじゃん

 俺たちの情報はバラしているのになんでだよ」


「ギルド側は一切情報公開をしていませんよ」

「じゃなんでバッカーの件とかアマ草の件とか知られているんだよ!」


ちょっとだけ腹立ったので語気が荒くなってしまった


「大量のアマ草をこの受付カウンターに並べましたよね?

 持ってくるたびに広げてましたよね?

 他の冒険者たちの目のあるこの場所で!

 それでアマ草の件がバレないとでも?」


「ご、ごめんなさい」


怒ったベルさんがちょっと恐かった


「バッカー元伯爵の件は領主様の直接依頼です

 この手の依頼に関しては高評価対象のため非公開にはできません

 依頼した貴族様が公開するように命じているからです」


「なんで貴族がそんな命令するのさ」


「自分の依頼を達成した冒険者を称えるためです

 また囲み込みたい冒険者を自分のだぞと誇示するためです」


貴族の身勝手かよ


「そもそもバッカー元伯爵の件は大事件でしたからね

 関係者も多かったためすべての口を閉じさせることは無理です

 おわかりいただけましたかケンタさん?」


怒りマークが見える笑顔で言われる


「申し訳ありませんでした、許してベルさん」


俺はもう謝るしかなかった


「そうだよね、個人情報だもんな、教えられないよね

 ほんとごめんなベルさん」


ふう、と小さいため息をつくベルさん


「なにかあったんですかケンタさん

 たしかに個人情報は教えられません

 でも相談ぐらいは乗りますよ」


小声で話すベルさん、ほんと良い(ひと)だなベルさんは

なんで俺なんかを選んだのか不思議だよ


「じつはそのシッドさんという人のことなんだけど・・・」


シッドさんが風の戦士団に騙されて死んだこと

そのあと子供たちが借金奴隷にされかけたこと

大まかな部分だけベルさんへ話した


「・・・その証拠を探しているというわけですね

 それで風の戦士団の迷宮攻略の情報が知りたかったのね」


「うん、でもギルドの規則を破れないもんな

 だから他の手段で探っていくよ、ごめんな」


真剣な顔で端末をいじり出すベルさん


「規則は遵守しますからすべては教えられません

 ですが違反ギリギリ手前までなら融通します

 質問してください、答えられる範囲で答えます

 わたしができるのはこのぐらいですから

 それでいいですかケンタさん?」


しょうがないといった感じで譲歩してくれるベルさん

本当に良い(ひと)だ、俺は自分が情けないよ


「ありがとうベルさん」


「礼はいいですから聞きたいことを言って下さい

 あまり時間を取っていると怪しまれますから」


そうだな、違反ギリギリなことをしてくれているんだものな


「風の戦士団とシッドさんともう一人の6人で挑んだようなんだ

 そのもう一人の情報が欲しいんだ、ダメかな?」


そいつがグルの可能性が高いから知りたい

でも個人を特定することだから教えてくれないかもな


「6人?」

「ん?」


ベルさんが難しい顔をしている


「風の戦士団のメンバーとシッドさんの名前しかありませんけど」


は? どういうことだ?


「シッドさんからもう一人参加していることを聞いているんだけど」

「でも5人の名前しか登録されていません」


なぜもう一人が未登録なのかはわからない

だけどそいつがグルだということだけは確定した

おそらく風の戦士団の裏に何者かが存在する

未登録で参加した奴はチョビ髭の部下だろうな

やっぱり繋がっていたか!


「でも本当に6人で挑んたはずなんだ

 シッドさんが俺に嘘を伝えるはずがないし」


「落ち着いてケンタさん」

「う、うん、ごめん」


「わたしはケンタさんが間違っているとは思ってないから

 だけど情報には5人しか載っていないの

 多分登録せずに参加した人だと思うわ

 たまにそういった不正をするパーティーもいるのよ

 証拠もないし被害届もないからギルドはなにもできないの

 ごめんなさい、あまり有用なことを教えられなくて」


「いや、俺のわがままを聞いてくれたんだ

 謝るのは俺の方だ、ごめんベルさん」


謎のもう一人がグルであること

風の戦士団とチョビ髭が繋がっていること

これらがわかったことだけでもかなりの収穫だ


謎のもう一人に関してはみんなに意見を聞いてからにしよう


「もう一つ、攻略は30層で逃げ帰ったはずだけど本当?」

「まあギリギリそのぐらいなら(本当はダメだけど)」


端末で確認してくれるベルさん


「いえ、10層を何度か周回して迷宮を出ていますね

 そのシッドさんが死傷したため撤退したとなっています」


サクラさんの言ったとおりだ

10層周回で荒稼ぎしてやがったんだ

情報では死傷者が出たから撤退となっている

実際はシッドさんを死ぬまで使い潰したってことだ

クソ野郎どもめ!


「ケンタさん、あまり力になれなくてごめんなさい」

「充分助かったよ、ありがとうベルさん」


これだけの情報がわかったのは大収穫だ

本当にありがとうベルさん


俺はもう一度礼を言ってギルドから立ち去った

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