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愚者の楽園に転移したけどまったく問題ない  作者: 長城万里
3 ただいま

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131 これからのこと

俺とアンナはトウェイン家へ戻って来た

なにやら庭でおかしなことをやっていた


ベンケイさんが小技を色々トムに見せていた

トムはそれを真似ている


ベンケイさんのように上手くできないらしく何度も繰り返す

ベンケイさんはダメな部分を指摘している


「だからそこはこうグッと引いてズバッと撃ち込むんだよ」

「わかんないよベンケイ姉ちゃん」


だろうな、グッとかズバッとか言われてもな


ハックは庭の木のそばで小石を何度も木のてっぺんへ投げていた

こっちはアオイくんが指導している


「クイッと軽く投げてポコンと当てるだけでいいよ

 何度も繰り返せば自然とスッキリできるようになるよ」


「わかんないよアオイ姉ちゃん」


うん、アオイくんもダメだな


玄関先の段差にサクラさんとベッキーが座っている

トムとハックの謎の特訓を見ているようだ


サクラさんはベンケイさんたちを生温かい目で見つめていた

ベッキーはその横で気力なくサクラさんに寄り添っていた


やっぱりあの話の続きはもう少しあとにしよう


「ただいま」

「二人ともおかえりなさい」

「ようケンタ、どうだった?」


「借金はこのとおり完済してきた

 借用書も完済の印をつけさせた」


完済証明書と借用書をベンケイさんに見せる


「ところでトムとハックに何やらせてんだ?」

「身を守るための小細工を教えているところだ」

「なるほど、いざというときのためか」


暗くなってきたので家の中へ入る

夕食を食べてベッキーたちは就寝した




俺たちは互いに情報交換と今後について話し合う


「そうか、チョビ髭とサジンはグルなんだな」

「ええ、間違いないわ」


サクラさんとベンケイさんが気付いて教えてくれた

言われてみればたしかに奴らは繋がっていそうだ


「それにしても証文とか全部本物だったとはな

 偽物だったら話が早かったのにな」


ベンケイさんが残念そうに言う


「俺たちに矛先が向くからベッキーたちは当面大丈夫だろう」

「だけど誰かがついていないとダメですよね」


アオイくんの言うとおり離れるわけにもいかない


シッドさんを罠に嵌めて殺した証拠を集めないといけない

チョビ髭との繋がりも調べないといけない

ベッキーたちを守っていかないといけない

やることだらけだ


「ともかくみんなで考えていきましょう

 それぞれで気付いたことや思い付いたことを話してね」


「生き残っているAランク冒険者から話を聞き出そうぜ

 絶対グルだろうから少々手荒でもいいだろ」


「でもそいつが誰なのかすらわからないよベンケイさん」

「そうだったな、そいつを探すところからか」


それについては少しだけ考えがあるので任せてもらうことにした


「繋がりについては風の戦士団を調べていけばわかると思います」


アンナの言うとおりこっちは特に問題ないな


「問題は調査に動いている間ベッキーたちをどうするかだ」

「交代で護衛すればいいんじゃないかしら」

「そうだな、それでいこう」


サクラさんの意見に全員同意する


大方やることが決まったので俺たちも就寝する

リビングで雑魚寝である


ベッキー、トム、ハック、絶対守ってやるからな

あんな奴らの好きにさせてやるものか!






ケンタたちがトウェイン家に行ったあとのパーティーハウス

アンナ以外のガイド精霊たちはお留守番をしていた


サクラが念話で四神たちに当分は戻って来れないことを伝える

四神たちからポチャたちにも伝わる


ケンタたちは交代でトウェイン家に寝泊まりする

当番以外は近くの宿屋で寝泊まりすることになった

トウェイン家に全員が寝泊まりできる部屋がないからである


「お兄さんたちが戻ってくるまでは僕たちがここを守ろう!」


ポチャがフンスと鼻息荒く使命に燃える


「サクラ様に会いたいわ」

「御主人様はきちんと食事をしているであろうか」

「姐さんを守れないのが辛い」

「お留守番イヤだよう、主様と遊びたいよう」


四神はサクラ成分が足りないようである


「しっかりして下さいみなさん」


サスケが窘める


「皆様の主君の方々はお強いですから大丈夫ですよ」


ヨシツネも留守番に気合いを入れる

四神たちも仕方がないと割り切ることにした



翌日、屋敷の前に馬車が止まる

馬車からシシリーが降りて呼び鈴を鳴らす


「あら、今日はいないようですわね」


それでももう一度呼び鈴を鳴らすシシリー


(居留守かも知れませんから)


それでも誰も出てこないので帰ろうとするシシリー


「あら?」


帰ろうとしたら裏庭から小さな影が門へ走って来る

それが見えたので門の方へ戻るシシリー


「こんにちはポチャ」

「こんにちはシシリーお姉さん♪」


シシリーに気付いてポチャは急いで出迎えに来た


「今日はケンタ様たちは?」

「当分留守だよ」


「依頼で出払っているのですね」

「うん」


依頼で出ていることにしとくポチャ

ベッキーたちのことは他言無用と言われていたからである


「中に入れていただけるかしら?

 ポチャがいるなら構いませんわよね」


ポチャは少し考えて了承する


「どうぞー♪」


屋敷の応接室へ案内されるシシリー


「おや、シシリー様いらっしゃいませ」

「お久しぶりですねサスケ」


「ポチャさん、ケンタさんたちがいないのによいのですか?」

「うん、四神のみんなも紹介したかったから」

「ヨシツネ、私が来てはいけなかったかしら?」


「そういうわけではありません、失礼な言い方で申し訳ない

 ただ主君たちが留守なのでどうだろうかと思いましたゆえ」


「そうですわね、私の礼儀が欠いていましたわ、謝罪します」


軽く一礼するシシリー


「まあまあ、シシリーお姉さんはお兄さんたちの味方だよ

 味方は友達だよ、友達なんだから問題ないよ♪」


「ありがとうポチャ、ふふ」


ポチャをなでながら微笑むシシリー


「わたしはレッドよ」

「ボクはホワイト♪」

「我はブルー」

「俺はブラックだ」


「初めまして皆様、シシリーと申します」


四神たちと挨拶を交わすシシリー

話せることには驚きません

ポチャとサスケで知っているからです


「みなさんはサクラさんの聖獣なのですね」


ポチャのことをケンタが使役している聖獣ということにしています

だからみんなも聖獣ということにしています


シシリーにお茶と茶菓子を用意するヨシツネとレッド

ポチャは膝の上に乗ってなでてもらっている


みんなもじつは暇だったのでシシリーとおしゃべりします


「ところでシシリーお姉さんはお兄さんに何か用事だったの?」

「今頃聞くのですかポチャさん」


呆れるサスケ


「用事と言いますか、ただ会いたかっただけですわ」

「どうして?」


「ふふ、愛する殿方に会うのに理由などありませんわ」

「シシリーお姉さんはお兄さんのことが好きなの?」


「そうですわよ」

「僕もお兄さんのこと好きだよー♪」

「ふふ、ライバルですわね♪」


(好きの意味が違うわね)


レッドが呆れながらもワクワクする

レッドも乙女、恋バナ大好き!


「シシリーさん、ぜひ詳しく!」

「いいですわよレッドさん」


恋バナで盛り上がるレッドとシシリー

野郎どもは蚊帳の外


レッドと友達になったシシリーは馬車で帰っていきました

徒歩10分ぐらい歩きましょう

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