12 マネキン
昨日の路地に行ったらアンナが倒れていた
俺はアンナに駆け寄る
「アンナ、どうした!?」
ビュンッ! ビシッ!
「うおっ!」
鞭みたいな何かが飛んで来たので飛び退いた
「何だ?」
『コノ精霊はオマエのモノか?』
服は着ているが見えている肌は白く陶器のようだ
ぶっちゃけマネキンだ
「物って何だよ、こいつは生きているだろ」
アンナは妖精じゃなくて精霊だったのかよ
『オマエのモノでナイならタチサレ、無関係のモノにはナニもシナイ』
「お前こそ何者だよ」
『無関係のモノに言う必要ナイ、タチサレ』
「はっ、じゃ勝手にさせてもらうぜ」
『無関係のモノでも邪魔スルなら容赦シナイ』
鞭のようなものが飛んでくる
マネキンの手は動いていない
俺は躱してアンナを抱えて後退する
『オマエを邪魔者と認識、除外スル』
「うるせえよ、アースバレット!」
硬質化させた石の弾丸を喰らわす
マネキンは弾かれ壁にぶつかり横たわる
「アンナ、大丈夫か、しっかりしろ!」
「、、、ん? お兄さん、何で来たんですか? 逃げて」
「何言ってやがる、俺に話があるんじゃないのかよ
しつこく付きまとってたくせに、気になるだろうが!」
「、、、あはは、私に惚れちゃいましたかー?
お兄さん、ロリコンさんでしたか」
「こんなときにふざけんなっ!」
「、、、、、ごめんなさい」
ふと、気付いてしまった
羽が、綺麗な虹色の羽がむしり取られていた
「お前、これは、、、」
「お前じゃなくてアンナですよ♪」
「そんなこと言ってる場合か!」
「・・・・・・・」
アンナが泣きそうな顔をする
きつく怒鳴り過ぎたか・・・・・
でも本当にそんな場合じゃないだろ
ガシャ
マネキンが立ち上がる
『精霊と邪魔者、排除、デリートシマス』
アンナを路地の壁に隠すようにそっと置いて俺も立ち上がる
「怒鳴って悪かったなアンナ、ちょっとだけ待ってろ」
鞭みたいな何かが飛んでくる
「ファイア」
それを燃やす、そして掴む、熱いが知るか
思いっ切り引っ張る、マネキンを宙に浮かせ地面に叩きつける
ガシャン!
『右腕損傷、許しまセン』
「なるほど背中からこの触手を鞭のように飛ばしていたのか」
『マダ沢山ありマス』
5本ほど飛んでくる
「鬱陶しいマネキンだな、ブラックホール」
ブラックホールで飛んでくる触手を受け止める
そのまま触手を吸い込ませる
『引っ張らレル、切断』
背中から触手を断ち切るマネキン
一気に間合いを詰めてマネキンの顔を掴む
「お前がデリートされろ <クラッシュ>」
魔力を流して触れた場所を粉砕する闇属性魔法クラッシュ
マネキンの頭部が砕け散る
俺は離れて様子を見る
アシュラみたいに身体だけでも動くかも知れない
しかし身体も自然に粉々になっていった
こいつの正体が何かは聞き出せなくなった
だけどそんなことはもうどうでもいい
アンナの羽をむしり取った奴と会話などしたくない
俺はアンナのところへ行こうと振り向く
男がアンナの手を掴んでいた
「離れろ!」
俺は一気にそこまで飛んで殴りかかったが躱される
「待て待て、俺は何もしていないって」
こいつはたしか馬車で一緒だった冒険者の男だ
「今アンナの腕を掴んでいただろうが」
こいつもマネキンの仲間か?
「待って、お兄さん、この人は違うから」
「アンナ、大丈夫か?」
「おーい、俺の話も聞いてくれよ」
「お前、アンナに何しようとしていたんだ」
「その子、精霊だろ?」
「やっぱりあのマネキンの仲間か」
「だから違いますってお兄さん!」
俺の袖を引っ張りアンナが否定してくる
「本当かアンナ」
「本当ですよ」
「本当だってば」
「あんたは黙ってろ」
「ひでぇな」
アンナが落ち着いているようなので俺も落ち着いてきた
「あれ、アンナの羽が戻っている?」
「はい、この人が治してくれました」
「え?」
この男が治した? じゃさっきのは治療してくれていたのか?
「ええと、その、何だ、、、」
「わかってくれたかな? 俺は敵じゃないよ?」
「すみませんでした!」 土下座
「いやそこまでしなくていいよ」
「だって俺、カッとなって、、、」
「せっかちさんですねお兄さんは♪」
「う、うるせぇ、、、」
俺が戦っている間にアンナの治療をしてくれていたそうだ
「でも精霊の羽を治せるなんてすごいな」
「精霊に知り合いがいて精霊用の秘薬を貰っていたからね」
「アンナを助けてくれてありがとう、あと本当にすまなかった」
「もういいよ、あんたもこの子のために戦ったじゃないか
俺は精霊のために動く奴は嫌いじゃないからね」
「えへへ、お兄さん、私のために怒ってくれたんですね♪」
「し、知り合いだからな!」
「照れてるぅ~♪」
コノヤロウ・・・・・
場所を移して俺たちは食堂に来ていた
「まずは自己紹介だ、俺はラインハルト
精霊と妖精をこよなく愛する冒険者で剣士だ」
「私はアンナです」
「俺はケンタ、魔導士だ」
これからアンナに事情を聞く
ラインハルトがいるけど話してくれるだろうか
「それでアンナはなんで襲われていたんだい?」
「ラインハルトが聞くんかい!」
「別にいいじゃないか」
「そうだけどさ」
「あの、詳しいことを話す前に確認させてもらってもいいですか?」
「そういや確認してからでないと話せないって言っていたよな」
「はい」
「それで何を確認するんだ?」
戦闘能力とかかな?
マネキンみたいなやつに狙われていたんだ
強い護衛でも探しているのかも知れない
「フールズ・パラダイス・オンラインをご存知ですか?」
・・・・・・・は?
「アンナ、それは、何だ? どういうこと、だ?」
「あれ? 知らないのですか?
おかしいな、お兄さんは違ったのかしら
でも魔力の質が、、、 名前も同じだし、、、」
アンナがFPOを知っている?
こっちの世界の精霊だよな
何であっちのゲームを知っているんだ?
「お願いです、正直に答えて下さいお兄さん
でないと私は何も話せません」
「ええと、俺も発言していいかなアンナ」
「はい、多分あなたもそうだと思いますので」
「ああ気付かれていたんだね」
「はい、魔力の質でわかるので」
俺にはキミたちが何を言っているのかワカリマセン
「FPOというゲームのことだよねアンナ」
「はい、ラインハルトさんもそうだったんですね」
ラインハルトもFPOを知っていた!?
「お兄さん、答えて、、、」
何がどうなっているのか全然わからない
でも正直に答えないと話が進みそうにない
俺は意を決して答えることにした
「たしかに俺はFPOプレイヤーだ」
「よかった、やっぱりお兄さんはFPOプレイヤーなんですね
ラインハルトさんもFPOプレイヤーですよね?」
「うん、俺もFPOプレイヤーだよ」
「俺以外にも転移させられた人がいたんだな」
俺だけじゃなかったんだ、なんか嬉しくなってきた
「全プレイヤーってわけじゃないよね?」
「はい、条件に合った方だけ転移させられています」
「条件って?」
「アップデート後のアンケートの結果です
アンケート合格者で最後までログインしたままの方が対象です」
「アンケートでどうやって合否が決まるんだ?」
「質問ごとに点数があって合計点が規定値以上で合格です」
あのアンケートって転移のためだったのか
転移してるから合格点だろうけど俺は何点だったんだ?
それよりベンケイさんたちも来ている可能性が出てきた
もしそうだったらこの世界でまた一緒に冒険ができる
「そういやラインハルトはサイショノ村にいたのか?
一緒の馬車に乗ってこの村に来たし」
「うん、いたよサイショノ村に」
「じゃ何でアシュラ討伐に参加しなかったんだ?」
(アシュラ討伐?)
アンナがボソリと何か言っている
「村長探しがクリアできていなくて参加しそびれたんだよ」
「そうだったんだ」
初手でつまづいていたのか
(村長探し?)
「アンナ、どうかしたのか?」
「あ、いえ、何でもないです」
おかしな奴だな?
「俺たちは答えたよ、次はアンナが話してくれないか」
「そうですね、お話しします」
自分の出したファイアが熱い件について
魔法を発動して対象に放つまでは熱くありません
対象に燃え移った時点で通常の炎になるのでケンタも熱いのです
ケンタ以外のFPOプレイヤーがやっと登場しました
前回から出てるけどそこは置いといて
あのアンケートは転移のためのテストだったのです
ケンタとラインハルトは合格者の中の二人です
もちろん合格者はまだいるので今後登場していきます
この世界へ転移されられた理由、アンナの正体
あのマネキンは何なのか?
次回、謎の一部が明かされる
ケンタ「全部じゃないのかよ」
作者「今にわかるわ、今にね! オーホホホ♪」
ケンタ「しばきてえ、、、」




