118 満身創痍
やはり飛んでいったのはあの少年でした
あの少年がこちらへマネキンを寄越したのでしょう
「すまぬな、我はこの場を動けぬ」
「ブルーが与えられた大事なお役目ですから仕方がないです」
ブルーは回復していますが動くことができません
お役目を果たすために動けないのです
「だが魔法で援護は致す」
「充分です」
儚き命を守るため
異世界転移のこの身体
白い悪魔を叩いて砕く
クノイチ・アオイがやらねば誰がやる!
「いざ参る!」
無双するときこのフレーズを使えと教えられました
ケンタ殿、意味がわからないでござる
前衛のマネキンたちを片っ端から叩いて砕きます
ブルーが後方のマネキンたちへ雷を落としてくれます
回復薬も飲みつつ戦いますが精神的にキツいです
体力や魔力は回復薬で回復できます
でも精神的疲労と思考力低下までは回復できません
ベシッ!
しまった、触手鞭攻撃を躱し損ねました
転ばされて足を挫いてしまいました
マネキンがここぞとばかりに囲んで退路を塞ぎます
一斉攻撃が来ます
ベシ、ベシ、ベシ、、、
サスケが触手を素早く叩いて攻撃を防いでくれます
サスケの魔爪はマネキンには通じません
なのでわたしのサポートのためにずっと頭の上にいました
わたしを守るため離れたようです
「主は私が守ります!」
情けない主でごめんねサスケ
本当にわたしは弱い、仲間の中で最弱だ
ザシュ! バシッ! バシンッ!
「うぐっ! ぐっ! がはっ!」
「サスケ!?」
一本の触手が鋭い槍のようにサスケの背中を貫きました
そのまま何発も触手でしばかれていきます
それでもサスケは動き続けてわたしを守ってくれる
足を挫いたから、疲れているから、だからどうした!
動きなさいよ、戦いなさいよわたしっ!
「いいかげんにしろおっ!」
両手に短刀を握り締めて周りのマネキンを砕いていく
挫いた足がさらに痛みを増したけど知るかっ!
サスケがぱたりと地べたに横たわる
マネキンが近付く、させないっ!
足がもつれて倒れた、ほんとわたしは駄目な子だ、、、
ガシャン! ガシャン!
近付くマネキンや周りのマネキンたちが次々と砕かれていく
「お待たせ♪」
ホワイトが軽快に砕いていた
「ホワイト、無事だったんだね、、、」
「それはこっちのセリフだよ、でもサスケはヤバそうだね」
そうだ、サスケ! サスケを抱きかかえる
「しっかりしてサスケ!」
「主、私は、大丈夫ですから、落ち着いて、、、」
どこが大丈夫よ、息が途切れ途切れじゃない!
「アオイちゃんそのままでいてね♪ エリアハイヒール!」
「サクラ殿」
エリアハイヒール、味方への全体強回復
サスケの傷が塞がっていき体力も戻っていきます
わたしとブルーも回復してくれました
足の痛みもありません
「よく頑張ったなアオイ♪」
「ベンケイ殿」
みんな来てくれた、助かった
けれどわたしは悔しさでいっぱいです
サスケは守ってくれたのにわたしは守れなかった
「嬢ちゃん、落ち込むのは後だ
まだやることはいっぱいあるんだぜ」
ブラックの言うとおりだ、まだ戦いは終わっていない
そうだ、これから強くなればいい
胸を張ってサスケやみんなと並べるようになるんだ
そしてマネキンはすべて砕け散った
「それであんたはなんで動かないのよ
アオイとサスケだけ戦わせてなにやってんのよ!」
レッドがブルーに怒ります
「いや我は大事な役割が」
「寝っ転がるのが大事な役割なの? ふざけないでよ!」
「待ってレッド、本当に大事なお役目なの!」
さすがにブルーの名誉のために割って入ります
「アオイ、庇わなくていいのよ?」
「いえそうではなくてですね」
わたしはお役目の内容をレッドやみんなに説明しました
「なるほどそれじゃ仕方がないわね
ごめんなさいブルー、知らずに怒ったりして」
「いや知らなければ当然の反応だからな」
「ケンタの奴、なかなか悪知恵が働くじゃねえか♪」
「せめてナイスアイディアと言ってあげましょベンケイちゃん」
なんとかブルーの名誉は守られました
「それじゃあケンタくんたちを助けに行きましょうか♪」
わたしたちは二人のところへ向かいます
かなり減ったがまだまだ終わらないマネキン地獄
俺の体力と魔力も残りわずかだ
「お兄さんそろそろ諦めたらどうだい?
泣いて謝って花を渡してくれたら許してあげるよ♪」
ニヤニヤしながら俺に近付いてくるクソガキ
「ん? あれ? お兄さん、花はどこやったのさ」
「今頃気付いたのかよ♪」
俺は鼻で笑ってやる
俺の頭の上にヒマワリがいないことにようやく気付きやがった
バカにされてイラついて見えていなかったんだろ?
形勢逆転していい気になって見えていなかったんだろ?
ざまあみろ♪
「どこ? どこに隠したのさ!」
「言うわけないだろバーカ♪」
ゴキャッ!
思いっ切りぶん殴られた、踏ん張ったけど転倒しちまった
「いいよもう、おまえら全員殺した後でゆっくり探すよ」
「やれるもんならやってみろよ」
まったくワラワラと湧き過ぎよ!
マネキン軍団とゴーレムを撃破しています
でも数が多過ぎてなかなか終わりません
後方のマネキンが少しだけ下がっていくのが見えました
多分お兄さんの方に回しているのでしょう
お兄さんは大丈夫だろうか?
ここからじゃマネキンたちが邪魔で確認できません
駄目な大人ですが実力はあります
でも相手は得体の知れない能力を持っているから心配です
デリートの上位個体の情報は名前とタイプしか知りません
能力などの情報は非公開だからです
早くここを突破してお兄さんを援護しないと
ほんっとこのマネキンども鬱陶しい!
ゴーレムもちょろちょろと邪魔よ!
ゴーレム20体は潰せました
マネキンはまだ2割ほど残っています
さすがに体力と魔力の消耗が激しいです
回復薬で凌いでいますが追いつきません
特に魔力の低下が著しい
自前の魔力は回復薬で問題ありません
でもお兄さんから供給される魔力が減っています
まさかお兄さんに何か?
不安になってきました、無事なのでしょうか
急がないとやばい気がしてきました
ゴスッ! ドカッ! ゲシッ!
マネキンどもに囲まれて蹴られまくっている
やべえ、意識が飛びそうだ
「いつまでもつかなお兄さん、僕をバカにした罰だよ♪」
ほざいてろクソガキ
睨みつけてやる
「んー? 気に入らないねその目
気が変わったよ、お兄さんはまだ殺さないよ」
「そりゃどーも」
「回復しないからお兄さんの魔力は減ってるでしょ
そうなると序列一位への供給量もそれだけ減っている
だから序列一位も弱体化してるんだよ?」
「なにが言いたい?」
「序列一位をお兄さんの前で嬲り殺してあげようかなって
お兄さんには誰も助けることができないって教えてあげるよ
絶望を味わわせてからお兄さんは殺してあげるからね♪」
醜悪な笑みを浮かべて語るクソガキ
誰も助けることができない?
今更だ、そんなことは俺自身が一番知っている
そんなことで絶望なんかしねえよ
だけどな
「サンダートルネード!」
雷の竜巻で俺を囲んでいたマネキンを一掃する
ついでにクソガキも巻き込む
「まだそんな魔力が残ってたのかよ!」
さすがにクソガキは粉砕できなかったか
そのまま倒れそうになるが全身全霊で踏ん張る
「体力も尽きたんじゃないの?
なんで立っていられるのさ!」
「決まってんだろ、守りたいもんがあるからさ♪」
足ガクガクで満身創痍だけどカッコつけたいお年頃なのさ
アンナも誰もおまえに殺させねえ!
とは言っても魔力は今ので底を尽いた
魔力枯渇で頭が痛いし気持ち悪い
体力もすでに限界だ、気力だけで立っている
「そんなボロボロの状態でよく言うねお兄さん
弱いくせにしぶといし、いいかげん諦めなよ
さっさと倒れた方が楽だよ?」
「そういうお前こそギリギリなんじゃねえのか?」
「はいはい、そんな挑発にはもう乗らないからね」
「挑発する余裕なんざもうねえよ
アンナの方のマネキンをこっちに回しているよな?
それってもう新たにマネキンは出せないってことだろ
残ったマネキンがいなくなればお前だけになる
いくら変な能力があっても一人じゃ厳しいんじゃね?」
苦しいけどニヤリと笑ってやる
「挑発じゃなくっても鬱陶しいね
面倒になってきた、もういいや
遊びは終わりにするよ」
イレイが心底面倒くさそうな顔をしながら近付いてくる
本当に一思いに止めを刺すようだ
さすがにしゃべるのが精一杯で動けない
どうやら俺はここまでのようだ
アンナ、みんな、後は頼んだぜ
マネキンの一部がお兄さんの方へ行くようになりました
おかげでこっちの数が減るので助かります
だけどお兄さんは大丈夫なのかな
魔力の供給がほぼゼロに近くなってます
自前の魔力で戦っていますが厳しいです
マネキンの数が残り200ちょっとぐらいまで減りました
隙間からお兄さんとイレイが見えました
お兄さんが倒れています
マネキンたちがお兄さんを蹴っていました
お兄さんがサンダートルネードでマネキンを一掃しました
イレイと向かい合って立っています
魔力の供給が途絶えました
今ので枯渇したようです
このままだとお兄さんが殺される
きっと体力も限界、いえ、もうないのかも
枯渇するということは回復ができていないってことよね
イレイが何かしたのかも、決壊死も効かなかったし
お兄さんを助けに行かないと!
私の魔力と体力もかなり削られています
それでもやるしかありません
まずはマネキンの包囲網を突破します
数が多いうちに突破しても追いかけられてまた囲まれます
それでは意味がありません、だからやらなかったのです
数の減っている今なら問題はありません
触手鞭攻撃が来ます、結界で防ぎます
結界の解除と同時に魔法を発動
「グレートトルネード!」
巨大竜巻を起こして囲んでいたマネキンを吹き飛ばします
私のすぐ近くを囲んでいたマネキンは全滅です
外側の100体ぐらいは残ってしまったけど想定内
私と外側のマネキンとの距離は離れています
すかさずフライで一気に上空へ上がります
この高さならマネキンたちは攻撃できない
お兄さんは動けない状態
イレイが近付いている、イヤな感じがした




