116 イレイの能力
ゴーレム20体の手土産付きでイレイに追い付かれた
「それブリダイコン山のゴーレムかよ」
「そうだよ、お兄さんと遊ぶために持ってきたんだ♪
けっこう大変だったんだからね」
「おまえ隙をついて逃げて来たのか?」
ベンケイさんとパンティさんが敗けるとは思えない
「バカにしないでよお兄さん
お姉さんたちならやっつけたよ♪」
「信じられるか」
「そう思いたければそれでもいいよ
どっちにしてもお兄さんはここで死ぬんだから
序列一位のキミも一緒に始末してあげるね♪」
「お兄さんと私の二人を相手にして勝てると思っているの?」
「そうだぞ、こっちにはアンナパイセンがいるんだぞ!」
「お兄さんからフルボッコにしてあげましょうか?」
「すみませんでしたっ!」
「おまえら、僕をバカにしてるだろ」
俺とアンナのやりとりに御立腹のようだ
「降りて来いよ、俺を排除しに来たんだろ?
よく考えたらおまえを倒せばいいだけなんだよな
最初からそうすりゃよかったんだ」
「そうですね、私も失念していました
害虫はさっさと駆除しとけばよかったのよね」
「どいつもこいつも僕をバカにしやがって!」
こんな安い挑発に簡単に乗るとは見た目どおりガキだな
「もういいや、お兄さんの仲間は皆殺しだよ」
空間に穴を開けてマネキンを大量に出してくる
「おまえそんなにマネキン出してどうするつもりだよ」
「あっちにツギノ村があるよね
その近くにお兄さんの仲間が二人いるのを知ってるよ」
こいつまさか
「このマネキン1万体をその二人に向かわせるのさ♪
龍は弱ってるし、お姉さん一人だと厳しいよね?」
マネキンたちはツギノ村の方向に歩き始める
「ついでにツギノ村も襲わせとこう♪」
「無関係の人たちは排除の対象外でしょ!」
「1万体もいるんだから溢れて村にも入っちゃうよ
対象に攻撃してたらたまたま巻き込んでしまうだけさ
巻き添え食って可哀想だねツギノ村の人たち♪」
ニヤニヤしながらクソガキが言う
「止めるぞアンナ!」
「はい!」
「させないよ♪」
ゴーレムが行く手を阻むが20体程度なら大したことはない
俺とアンナならすぐに倒せる
しかしゴーレムや俺たちの周辺にマネキンが次々と湧いてきた
「マネキンがあの1万体だけなんて言ってないよ?
こっちにも1万体出すからたっぷり楽しんでね♪」
このクソガキ、どんだけマネキン持ってんだよ!
「これじゃ二人を助けに行けません」
「ツギノ村もこのままじゃヤバいよな」
勝ち誇ったように上空から見下ろしているクソガキ
「僕を倒すとか言っても結局お兄さんはその程度なんだよ
そんなんじゃ仲間も誰も助けられないよ、笑っちゃうね♪」
こんな足止めにはまるのだから言われても仕方がない
でもムカつく!
「お兄さんの仲間も大したことなかったけどね
魔女のお姉さんは偉そうに語るだけだったし
僕に手も足も出なかったよ♪
薙刀のお姉さんなんか僕にフルボッコされたし
僕の攻撃で痛がって泣いてたしね♪」
お兄さんを筆頭に弱いクズば (ズドンッ!) がっ!?」
(なんだ!? 殴られた? あれ? 地面が近付く?)
ドシャッ! 「んがっ!」
俺は飛んでいる、そして地面にはクソガキが横たわっている
今は俺がクソガキを見下ろしている状態だ
「な、なんで?」
状況が飲み込めず混乱しているクソガキ
「おうクソガキ、嘘ばっかりほざいてんじゃねえぞ」
「な、なんで上下逆になってるんだよ!?」
「そりゃ俺がフライで飛んでおまえを殴り落としたからだ」
呆然としているクソガキ
「サクラさんがおまえに手も足も出なかった?
ねえよ、むしろ手を出すまでもなかっただけだろ
ベンケイさんをフルボッコ? おまえにゃできん
おまえの攻撃如きで泣くわけないだろ」
そして全霊を込めて俺は叫ぶ
『俺の仲間を侮辱するんじゃねえクソガキがあっ!』
「っっ!!!」
俺のことはともかく仲間の侮辱は許さない
「おまえやっぱり逃げて来たんだろ」
「違う、逃げてなんか、、、」
「右腕ないじゃないか、左腕にも傷がある
ベンケイさんに斬られたな
ところどころ痣や細かい傷もある
四神たちにでもやられたんだろ
サクラさんが語るだけって言ったよな
それっておまえの弱点とかでも見抜いたんじゃねえの?」
悔しそうな顔してるじゃねえかクソガキ、図星だろ
気に入らない! 気に入らない! 気に入らない!!
こうなったらお兄さんだけでも徹底的に痛めつけてやる!
魔女のお姉さんは部分的な現象の消去能力と言った
ある意味近いけど全然違うんだよ!
僕の能力<りむーばる>
対象者の行動またそれによる結果の一部分に対して使う
その一部分を一定期間除去する能力
例えばお兄さんの固有スキル
僕はお兄さんたちがどんなスキルを持ってるかなんて知らない
知る知らないに関わらずスキル自体を除去することはできない
でもスキルの「効果」を除去することはできる
そのため銀の短剣は刺さって消えたけど何も起こらない
その「効果」は届かない、除去されているのだから
一度除去されると10日間は除去されたままだ
だから亀がシールドを張れないのさ
「シールド」を除去しているからね
悔しいけどこの能力で直接命は奪えない
心臓の「動き」を除去、血液の「流れ」を除去など
直接的な生命維持を除去することができない
さらに除去できる回数は1日に10回まで
なんでもかんでもに使うわけにはいかない
使い勝手の悪い能力、でも使い方次第だ
お兄さんのスキルの「効果」を除去
亀の「シールド」を除去
お姉さんのストーンブラストの「爆発」を除去
お姉さんのアイスプリズンに「囚われる」ことを除去
お姉さんのフレイムランスに「貫かれる」ことを除去
狐の「戦闘形態になる」ことを除去
お姉さんの攻撃に「引き寄せられる」ことを除去
今日はすでに10回中7回使っている
残りは3回、これをすべてお兄さんに使ってあげるよ
使い切ってもあと1時間ほどで日付が変わる
そしたらまた10回使えるから序列一位はそれで殺す
二人とも僕をバカにしたこと後悔しながら死んでよね
クソガキが下から俺を睨んでいる
まあバカにされたら悔しいだろうからな
だけど仲間を侮辱した罰だ
「それでお兄さんどうするの? 僕を許さないんでしょ?
だったらさっさと攻撃でもしたらどうだい」
睨むのを止めてニヤニヤ笑いだした
挑発のつもりか? それともなにかの罠か?
「その前にマネキンとゴーレム退治だ」
大量のマネキンに押し流されてアンナの姿が見えない
だけど遠くでマネキンが弾き飛ばされているのが見える
あのあたりにアンナがいるんだろう
マネキンは弱いけどこの物量をアンナ一人ではきついと思う
それにツギノ村へ向かったマネキンもどうにかしないと
俺は先にツギノ村へ向かうことにする
アンナには悪いがもう少しだけ一人で頑張ってもらおう
ん? あれ? 落下してる? ドンッ! ゴキャッ!
「いっ、てぇっ!?」
落下して地面に叩きつけられて左肩が脱臼した
何が起こったんだ? マジ痛い・・・
「逃がさないよお兄さん♪」
「おまえ何かしたのか?」
倒れている俺にニヤニヤしながらゆっくり近付いてくる
「スキルと同じように<飛ぶ>ことを封じさせてもらったよ♪」
(お兄さんが「飛ぶ」ことを除去したんだよ♪)
脱臼ぐらいは初級ヒールで治せるからもう治した
だけど飛ぶことを封じられてしまった
本当かどうかフライを試すが飛べなかった
厄介な能力持ってやがんなこいつ
「わかったよ、相手してやる」
こいつを倒さないと他へは行けないか
ツギノ村はアオイくんとブルーに頑張ってもらうしかないな
俺は身体強化を掛けているのでこいつよりも速く動ける
攻撃力、防御力も跳ね上がっている
魔力を注いだ分だけ能力は上がる
「くたばれっ!」
クソガキを全力全速で殴りにいく
クソガキはニヤニヤしている
なんか足が重い、速度が出ない
俺の拳が空を切る、余裕で避けるクソガキ
そのまま俺の腹を回し蹴りしてくる
速い、こいつこんなに速かったか?
ドガッ! 「げふっ!」
すごい蹴りだ、こんなにパワーあったのか?
思いっ切り転倒する
いきなり強くなってないか? 違う、俺が弱くなってる
というか素の状態だ、身体強化が解除されている
「気付いた? <強化>を封じさせてもらったよ♪」
(お兄さんが「強化する」ことを除去したのさ♪)
強化できないノーマル状態だとさすがにやばいな
恐らくクソガキの方が基礎の能力値は上だろう
だけど俺にはまだ魔法がある
向こうで覚えた魔法はレベルに関係なく使える
さらに魔力量も多いし回復も早いから充分戦える
「ウインド!」
前方に風を起こして後ろに跳ぶ
風の力を利用して一気にクソガキから離れる
「フレイムランス、ストーンブラスト、サンダーアロー!」
着地しながら攻撃魔法を連発する
しかし数体のマネキンがクソガキの盾になる
アンナの方のマネキンをこっちに持ってきたようだ
魔法はそのマネキンどもに当たり砕け散る
「アイスランス、ウインドショット、エアニードル!」
だけど俺は絶えず魔法を撃ち続ける
クソガキに当たらなくてもマネキンを減らせる
そうすればアンナも少しは助かるだろう
「これならおまえにも当たるだろ、メテオバースト!」
さすがに上空から降り注ぐ隕石群は躱せまい
マネキンと一緒に潰れろ!
はあ、はあ、なんかしんどくなってきた、、、
メテオバーストの爆風が消える
砕け散ったマネキンの山があった
その中からクソガキが出てくる
「ふぅ、やるねえお兄さん、さすがに慌てたよ♪」
「マネキンで全体を囲んで防ぎやがったか」
それからも魔法を撃ち続けるがマネキンで防がれていく
そのぶんアンナの方のマネキンが減るので構わない
このまま減らしていけばアンナもこっちへ来れるだろう
「お兄さん、かなり息が上がってるみたいだね♪」
「ほっとけ、おっさんは息が上がりやすいんだよ!」
本当はそんなわけはない
俺たちプレイヤーは回復力と回復速度が早い
なのに全然体力が回復してないように思える
それと魔力も回復してないんじゃないか?
魔力枯渇の症状が表れている
まさか・・・・・




