111 ヒマワリ
「でもなんでサイショノ村だけ安全圏なんだ?」
アンナは語る、神様がこの世界を創ったときのことを
この世界が創られて最初にできた場所がサイショノ村だった
それから徐々に様々な場所が出来ていき今の世界になった
最初の地なので神域となっている
そのためデリートシステムは入れないのだ
神域で神の創造物を消すことはできない
じつは入ること自体はできるようだが意味がない
デリートシステムが中に入ると奴ら自身が消滅する
入ったら消滅するのだから自殺行為である
だから奴らは入ることができないということなのだ
「なるほど、それでサイショノ村へ連れて行けということか」
「いいんじゃねえか、私らの目的地だし」
「行き先が同じなんだから一緒に行きましょう」
「そうよね、連れて行ってあげましょ♪」
満場一致だ、ヒマワリを連れて行こう
放置して見捨てるって言われたときは驚いたぜ
でもそんなことはしないとわかってて言ったんだろうな
アンナめ、意地が悪いぞ
止まったついでなので昼食にする
「生き残ったのはいいけどよく見つからなかったなあいつらに」
地面掘られたり触手で地中を攻撃までされていた
地中に潜ってたんならヒマワリも無事ではないはず
感知されずなぜ助かったのか気になった
助かったのは良いことだけど
「私は地中には潜りませんでした」
「だったら尚更見つかるだろ?」
「あそこに一際高く大きい木が見えますでしょう
あれのてっぺんにいたのです」
見晴らしがいいから巨木はすぐに目に入る
「なるほど奴らは地上と地中しか探索しなかったわけですね」
「そのおかげで助かりました」
もしも上空まで探索されていたらヤバかったわけか
たしかに運が良い
でもあそこからなら全体を一望できる
下で消されていく仲間の姿がすべて見えたはず
きっと計り知れないほど辛かっただろう
「アンナ、気になることがあるんだが」
「多分聞いてくると思いました」
その口ぶりなら状況を理解しているようだ
「マネキンたちは連携しないって言ってたよな」
「はい」
「でも統率がとれていたそうだぞ、どういうことだ?」
「一つだけ例外があります」
「上位個体か?」
「はい、上位個体序列三位です
マネキンは三位の配下なので三位の指示を聞きます
通常、マネキンは勝手に感知してデリートしています
なので連携とかはしません
ですが三位が指示を出せば兵士と同じように連携します」
「ここに来たマネキン軍団は三位が率いてたということだな」
「そうなりますね」
だがマネキンは3種の中で一番下
上位個体が強いと言っても一番下なら倒せると思う
「お兄さん、油断と驕りは捨てて下さいね」
「思考を読むな、でもそんなに強くはないだろ?」
「序列の一番下ですがちょっとでも油断すれば私でも負けます」
「それすごい強いってことじゃないか」
上位個体は格が違うってことか
アンナの忠告どおり油断と驕りは捨てよう
昼食後、また走り出す
このまままっすぐ行けばミズムシ街だ
ヒマワリは小さくなって俺の頭の上にいる
そう、俺の頭に物理的に花が咲いているのだ
アンナ、笑うんじゃない!
「もうすぐミズムシ街だな」
「そうだねベンケイさん」
白カブは俺とベンケイさんが乗っている
「ミズムシ街で宿をとるか夜通し突っ切るか
どうするんだケンタ」
「そうだな、俺はどちらでもいいんだが」
ミズムシ街に着くのは16時ちょっとぐらいだ
ミズムシ街のすぐ先にはブリダイコン山がある
山に入る前に街で休息するのもいい
そのまま夜通し山越えするのもアリだ
「アンナ、どうしようか」
並走しているアンナに聞く
困ったときのガイド精霊さまだ
「そうですね、いつデリートが来るかわかりません
だからさっさと突っ切った方がいいかも
どちらにしても街の中には入ることになりますけどね」
山へは街の東門から行った方が早い
「すみません、ギルドに少しだけ寄っていいですか?
デリートの危険性は承知しているのですが」
アオイくんが珍しくお願いしてきた
「ギルドに用事があるの?」
「えっと、ケイトさんに挨拶を」
なるほどケイトさんか
アオイくんはあれ以来、ケイトさんを師匠のように思っている
「いいよ、少しぐらいなら大丈夫だろうし」
「ありがとうケンタ殿♪」
すごい嬉しそうだ
「みんなギルドの休憩スペースで軽めの夕食にしよう」
「おう♪」「はい」「はーい♪」
「みんなありがとうでござる」
このとき俺は自分のことを忘れていた
予定どおり16時過ぎにミズムシ街へ入った
そのままギルドへ直行する
なんか行き交う人たちから視線を感じる
俺たちのこと、この街まで伝わってるのか?
ギルドに入ると注目を浴びる、いつものことだ
だが視線が外れない、どうせ俺への嫉妬の視線だろう
メンバーが美人と美少女ばかりだからな
でも嫉妬とは違う感じがした、なんだろう?
「すみません、ケイトさんはいらっしゃいますか」
アオイくんが受付の男性に訊ねる
ケイトさんの姿がなかったからだ
それにしてもこの受付の男性、恰幅がよく職員とは思えない
冒険者の面構えだし強そうだ
「ケイトなら討伐に行っているよ、なにか用事かい?
もうすぐ帰って来ると思うから待っててくれるかな」
「あ、はい、ありがとうございます」
思ったより親切そうな人だ
俺を見た、一瞬笑いそうになったが堪える受付さん
人を見て笑いそうになるなんて案外失礼な人だな
俺たちは休憩スペースで軽い夕食を始める
気になったので食べながら受付さんを観察する
他の職員が質問したり指示を仰いでいた
もしかしてこのギルドで立場が上の人なのか?
他の職員と受付を交代してこっちへ来る男性
「待たせてすまないね、多分そろそろだと思うけど
待ってる間、少し話をさせてもらっていいかな」
「構いませんよ」
「自己紹介が遅くなりすみません
私はネミロフ・デリカット、ギルドマスターです」
まさかのギルマス!
「すみません、こちらこそ名乗ってませんでした」
「はは、いいよ、そういう冒険者は多いからね」
気さくな人だな
「俺はケンタです」
「ベンケイだ」
「アンナです」
「サクラと言います」
「アオイです、ケイトさんにはお世話になりました」
「ん? その名前、もしかして永遠の混沌かい?」
やっぱりこの街にまで知れ渡っていたのか
「俺たちってこの街まで知られていたんですね」
「ああ違うよ、ケイトから聞いて知っていたんだ」
違った、恥ずかしい! いい気になってごめんなさいぃっ!
「昇格試験のときの話をケイトから聞いていたから覚えてた
アオイさんのことを褒めていましたよケイト」
アオイくんが照れる、良かったねアオイくん
「ところでケンタさん、ぷっ、いや失礼♪」
「なんで笑うんですか? さすがに失礼ですよ」
いくらギルマスでも俺だって怒るよ?
「お兄さん、仕方がありませんよ」 ぷっ
「そうだな仕方がねえよケンタ」 ぷぷっ
「仕方がないですケンタ殿」 ぷふっ
「仕方がないのよケンタくん」 クスクス
「みんなまでっ!?」
なぜみんなまで笑うんだよ!
そういえば未だにまわりの視線が途絶えない
「ケンタさん、頭のそれはなんでしょう、ぷっ」
あたまのうえのそれ・・・・・・・
ヒマワリ乗せてたのすっかり忘れてたーーーーーっ!!
そうか、頭に花を咲かせている変な男だから注目されていたのか
だからみんなもギルマスも笑ってるのか
「仲間のおまえらがフォローしてくれよっ!
ギルマスも笑うなよ! まわりの連中も見んな! 笑うな!」
笑いを堪えながら顔を背ける冒険者たち
ギルマスも堪えながらすまないと言う
仲間も堪えながらも身体が震えている
「お前じゃ、ぷっ、なくて、ぷぶっ、アンナですよ♪」
「うっせぇ! お前で充分じゃあっ!!」 うがー!
堪え切れずギルド内大爆笑
くそう、好きでお花咲かせてるんじゃないやい!
「賑やかですね、一体なにが」
ケイトさんが帰ってきたようだ
ケイトさんと目が合った
「ふっ」
ニヤリとして鼻で笑われた
大爆笑より傷付いた、俺のハートはブレイクだぜ
みんなも慣れて大爆笑が一段落する
ケイトさんが職員の制服に着替えて戻ってきた
「ケイトさん、ご無沙汰しています」
「元気そうですねアオイさん」
なんかいい師弟関係のように見える
「この街へはまた何日か滞在するのですか?」
「いえ、このあと山越えします」
「こんな時間からですか? 危険ですよ」
現在19時ちょっと、たしかに危険だろう
「そうなんですが少し急ぎの用事があるので」
「そうですか、では気を付けて下さいね」
そのとき
「大変だ! 魔物が街に入って来てるぞ!」
冒険者の男が慌てて入ってきた
街に魔物が入ることは稀にある
「落ち着いて状況を話してくれ」
「同種の魔物が徒党を組んでまっすぐここへ向かっている」
「スタンピードっぽいが微妙に違うようだな」
スタンピード、数種の魔物が大群でやってくる現象だ
同種だけで徒党を組んでいるならギルマスの言うとおり違う
「街への被害は?」
「ない、人にも建物にも被害はない」
「なんだそれは?」
「他に目もくれずただまっすぐにここへ向かっているんだ」
まさか、俺はアンナを見る
アンナは真剣な顔で小さく頷く
マジか、あいつらかよ
しかも徒党を組んでいるということはいるんだろうな
序列三位、マネキンの上位個体が
冒険者たちはデリートシステムを知らない
だから魔物だと思っている
「やるしかないよな」
「そうですね」
「街ん中だからやりにくいけどな」
「早くやっつけましょう」
「でもこの分だとこのあとの場所でも来そうよ」
パンティさんの言うとおり奴らは執拗に追って来るだろう
だが今はこの街のためにも戦わないといけない
俺たちは立ち上がり戦闘準備に入る
次回、マネキン軍団迎撃開始!




