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愚者の楽園に転移したけどまったく問題ない  作者: 長城万里
3 ただいま

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110/159

110 東へ

夕食を食べながら商業ギルドでのことを話す


物件資料の写しを確認するベンケイさんとアオイくん

二人ともこの物件でOKだと言ってくれた


もしも駄目だったらこの物件は断るつもりだった

まだサインも認印ももらう前なので断れるから

だけど全員OKだから購入決定だ


あとはサイショノ村へ行ってサインと認印をもらうだけだ


「それにしても村長に家族がいたとはな、驚きだぜ」

「ゲームでは登場しないし設定にもなかったですよね」


ベンケイさんとアオイくんはこの世界では村長と会っていない

だからゲームでの村長の設定とか役割ぐらいしか知らない


「お姉ちゃん、アオイさん、現実なんだから家族ぐらいいますよ」

「それはわかってるけどゲームでしか知らないからさ」


俺は会ってても不思議な感覚だしな、会ってなければ尚更だ


「それでルートや日程はどうするのケンタくん」

「明日は準備で出発は明後日にしようと思う」

「そうですね、かなり遠いですから準備は必要ですね」


この街からサイショノ村まではまっすぐ東に行けばいい

でも途中に山があるから迂回するかどうかも考えないといけない


普通に馬車で行く場合、各所で乗り継ぎになる

山があるから馬車だと迂回ルートで行くことになる

単純計算で最短でも10日はかかるだろう

アクシデントがあったらそれ以上かかる


だけど俺たちの場合、超速アイテムがある

俺の白カブ、アンナの緑カブ、パンティさんの箒

魔力で速度を半端なく上げられる

事故らないギリギリまで上げればかなり時短できる


山はカブが駄目なのでこっちも迂回ルートで行く

速く走れると言っても単純計算で最短3日はかかる

それだけ遠いと言うことだ


「移動はいつもどおりカブと箒で移動するとして

 山があるから迂回ルートで行くことにしよう」


「山越えなら考えがあるから迂回しなくていいわよ

 その方がより早く行けるでしょ」


パンティさんが直進ルートを勧める


「どうするの?」


「ブルーとレッドが飛べるから乗せてもらいましょ

 それで山を飛び越えればいいのよ」


なるほど、ナイスアイディア


「うん、それ採用、じゃ直進ルートで行こう」


それだと上手くいけば約2日で着ける計算だ

往復で4日、村で2日過ごしても6日で完遂できる

パーティーハウスゲットまであと一週間だ!




翌日、準備をするための日

だけど、よく考えたら特に準備することがなかった


アンナだけ食料を買い出しに行っている

主に自分とポチャの分だが


結局ヒマなのでベンケイさんとアオイくんは討伐に行った


俺とパンティさんは引きこもり組だ

引きこもり同士、のんびりお茶を飲みながら駄弁っていた


「こういうのんびりした時間って久しぶりな気がする」

「そういう時間は大切よ、だからわたしは引きこもるの♪」

「その理屈はどうかと思うよ」

「いつの世も引きこもりは理解されないのね、悲しいわ」


などとトークも弾む、弾んでるのか?




翌朝、早起きして支度する

二度寝しようとしたパンティさんを四神たちが起こす


朝食を食べてカブを出す

東門まで行って街の外へ出る


「よし、それじゃあ行こうか」

「おう♪」

「はい」

「はーい♪」

「行きましょうお兄さん」


2台のカブと1本の箒に乗った俺たちは出発する

目的の地はサイショノ村


俺がこの世界に転移させられた場所がサイショノ村だ

そこからまっすぐ西に向かってオシリペンペン街へ来た

今度はその逆、東に向かってまっすぐ行くぜ!



3時間ほど走るとカタコリ村が見えてきた

オシリペンペン街とミズムシ街の間にある小さな村だ

立ち寄らないので村の横を通り過ぎる


通り過ぎて少ししてアンナの緑カブが止まる

故障か? いやこのカブで故障はありえない


俺たちは止まってアンナのところへ行く


「トラブルか?」

「急に止まってごめんなさい、近くにガイド精霊がいたから」


ここはだだっ広い平原地帯

木や草もまばらにあるが遠くまで見渡せる場所

動物や魔物は今のところ見当たらない


だがガイド精霊には魔力などで感知できる能力がある

だからどこかにいるはずだ


「アンナ、どこにいるんだそのガイド精霊は」

「向こうも気付いたようですね、近付いてきます」


アンナが見ている方向を俺たちも見る

しかし特になにも動いているものがない


いや、なんかピョンピョン跳ねながら黄色いものが見える

近付くにつれてその姿がはっきりとわかる


細い緑のボディとお手々(?)

ボディに比べて大きな円状の顔

顔まわり全体に黄色い髪(?)

顔面は黄色と茶色の粒々で埋め尽くされている


「ヒマワリじゃねえかっ!」


そう、紛うことなきヒマワリがピョンピョン跳ねて近付いてくる

ちょっと恐い


「植物型のガイド精霊ですね」


ガイド精霊には動物型、植物型、物体型の3タイプある

俺たちのパートナーは動物型しかいないから植物型は初めて見る

植物型と物体型も動けるし言葉を話せるそうだ

ホラーかよ


俺たちの手前で止まるヒマワリ

高さがアンナと同じぐらいだ(アンナは135センチ)


どこから見てもヒマワリだ

これが動いてしゃべるのか

やっぱりホラーだ


「みなさん驚かせてごめんなさい」


口がないけどハスキーボイスで話すヒマワリ


「同じガイド精霊のみなさん、初めまして

 プレイヤーのみなさんも初めまして

 私は植物型ガイド精霊、種別はヒマワリです」


「よく無事でしたね、隠れそうなところがないのに」


「はい、私は運よく助かりました

 ですがこの平原にいた他のガイド精霊たちは、、、」


表情がないからわかりづらい

けれど悲しんでいるのがわかる

デリートシステムに消されたんだな


辛いだろうがアンナがヒマワリから状況を聞いた


消されないようにひっそりとガイド精霊たちは隠れていた

しかし見晴らしのいいこの場所では難しい

各々工夫したり協力し合って凌いでいた


だけど統率のとれたマネキン軍団がやって来る

そして次々と消されていくガイド精霊たち


動物型は隠れにくいので全て狩り尽くされる

物体型も同じく全て狩り尽くされる

植物型は地中に潜れたりするので全滅はしなかった


それに対してデリートシステムは狩り方を変更する

地面を乱暴に掘ったり地中へ触手を伸ばしたりする

そうして次々と潜ったガイド精霊も消されていく


反応も見つからなくなり去って行くマネキン軍団

生き残ったのはヒマワリだけ、本当に運が良かったのだろう


いや、良くないのかも知れないな

仲間が消されていく様を見続けていたのだから


完全に去ったあともヒマワリは恐くてずっと隠れていた

そして今、俺たちプレイヤーの魔力を感知して出てきたのだ


「辛かったな、おまえだけでもこれからは俺たちが助けるよ」

「ありがとうございます」


「それでどうするアンナ」

「そうですね、この中の誰かと契約すればもう襲われないでしょう」


アンナもポチャもそうやって助けたしな


「構わないぜ♪」「わたしもです」「わたしもよ♪」


「俺もだ、誰と契約したいか選んでくれ」


アンナは俺としか契約できなかった

ポチャは俺しかいなかった

でもここには4人もプレイヤーがいる

ガイド精霊にだって選ぶ権利はある


ヒマワリは自分の運命を選ぶ


「みなさん、ありがとうございます

 ですが私は契約いたしません」


俺たちは驚く


「なぜだ? このままだと奴らに襲われるぞ

 さすがに俺たちもずっと襲われ続けられるのは困るよ

 守るためにも契約して欲しいんだけど」


「他の仲間が消されて自分だけ生き残りました

 みんなだって誰かとパートナーになりたかったはずです

 それなのに私だけと言うのは自分自身が許せません」


ヒマワリの気持ちもわかるから無理強いできない


「アンナ、どうしたらいい?」


アンナに助けを求める俺、情けないが仕方がない

アンナは少し考える


「そうですね、では次の二つから選んで下さい」

「二択? 二つも解決策があるのか?」


契約以外で解決策が二つもあったのかよ

言えよポチャのときに


「一つめはこのまま放置して見捨てること」

「待てアンナ、それは解決になってねえぞ!」


解決策じゃないじゃねえか! 見殺しかよ!


「ええ、この案は解決にならないですよ」

「もう一つはなんだよ・・・・・」


ちょっと不安になってきた


「もう一つはサイショノ村へ連れて行くことです」

「なに言ってんの?」


どこに連れて行こうが襲われることに変わりないだろ?


「サイショノ村へ連れて行ったあとどうするんだよ?」

「サイショノ村に置いておくだけですよ」

「それだと襲われるだろうが」

「襲われません」

「なに言ってんの?」


わからん、アンナがなにを言いたいのかわからん


「デリートシステムはサイショノ村に入れません」

「あいつら入れない場所あったの!?」


「はい、サイショノ村にだけは奴らの上位個体ですら入れません」


そんなセーフティーゾーンがあったとは


「どうしてポチャのときに教えてくれなかったんだよ」

「トナリ街からサイショノ村へ戻ることになるでしょ」

「たしかにそうだけど」

「お兄さんオシリペンペン街へ早く行きたかったみたいだから」


俺のためか、なら仕方がないか


「お兄さん、僕、邪魔だった?」


悲しそうに俺を見るポチャ


「違うよ、ポチャは邪魔じゃないよ

 他に選択肢があったんなら選ばせてやりたかっただけだ」


「僕は迷わずパートナーになりたかったよ♪」


くそう、可愛いやつめ

「DSイレイ」編開幕しました

DSはデリートシステムの略です

イレイはDS序列三位、マネキンのボス


次回、ケイトさんと再会

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