11 ツギノ村
乗り合い馬車は次の村のツギノ村へ向かって走る
ややこしいな!
移動中に盗賊とかに襲われるイベントとかよくあるよな
あったよ、今まさに襲撃されている
俺? 戦わないよ
だってもう倒してくれたから
「ありがとうございます」
御者がその男に礼を言う
「礼は不要だ、俺は早くツギノ村へ行きたいんだ
邪魔だったから退治しただけさ」
馬車の乗客の一人、冒険者の男
黒髪黒目の長身で細マッチョのイケメン
髪型が某有名RPG7作目の主人公に似ている
この男がすぐに飛び出して20人近い盗賊を5分程度で倒した
俺の出る幕はない
そして馬車はツギノ村へ到着した
サイショノ村より少しだけ大きい村だ
この村から少し行ったところに街がある
街の近くの村だからあまり村っぽくない
とりあえず宿屋の確保だ
屋台のおばちゃんに宿屋を教えてもらう
その宿屋へ着いて宿泊の手続きをする
くつろぐ前に風呂へ行く
臭いと言われたくない!
そのあと夕食を食べて早目に寝た
翌朝、行動開始する
特にやることはないので村を散策しよう
街に近いから街から仕入れた商品も売られている
屋台や商店を見て回る
この村に長居はしないつもりだ
早く街に行って冒険者登録しないとな
昨夜、収納庫から確認のためギルドカードを取り出した
『この世界ではこのカードは使えません
よって破棄させていただきます』
とナビにメッセージが出て光の泡となって消滅した
ちょっと涙が出たよ
なので登録からやり直さないといけない
ブラブラと村を練り歩く
・・・・・・・何なのだろう
「何で付いて来るんだ?」
振り向いて訊ねる
「え、何のこと? フヒュー、フヒュー」
鳴らせていないぞ口笛
スイスの民族衣装のような服を着た少女
肩甲骨下あたりの長さの金髪ストレートで蒼眼
12、3歳ぐらいのロリっ子
「いや、さっきから俺のあとを付いて来てるでしょ」
「えー、お兄さんジイシキカジョーじゃないですかー?」
イラッ
「子供には興味無いから安心しろ!」
俺は早足で立ち去る
ロリっ子は付いて来る
何のつもりだ?
冤罪でもふっかけるつもりか?
俺は走った(大人気ない)
ふっふっふ、これで撒けただろう
さあゆっくり観光だ
走ったから小腹が空いたな
屋台で何か買お、う、、、
ロリっ子が後ろにいつの間にか来ていた
何だコイツ、やべぇ
「なあ、頼むから付いて来るの止めてくれない?
用があるなら聞くからホント勘弁して」
「そうね、からかってごめんなさい」 ペコリ
あれ? 素直に謝りやがった
「それで何の用なんだ?」
「たしかに用事はあるわ」
まあそうだろうな
でないとここまでしつこくストーキングしないよな
「でもまだお兄さんに話せないの」
「なんだそれ」
ん? そういやコイツ、俺のことお兄さんって呼んでいるな
このぐらいの子なら俺はおじさんじゃないか?
まあ、お兄さんと呼ばれるのは悪くないけど違和感がね
「んーと、気に入らないかも知れないけど我慢して?
もう少しお兄さんのことを確認してからでないと話せないことなの」
「俺の何を知れば話せるようになるんだよ」
「ヒ・ミ・ツ♪」
イラッ
「勝手にしろ! でも俺の観光の邪魔だけはするなよ」
「うん、ありがとう♪ 思ったより優しいんだねお兄さん♡」
もの凄く可愛い笑顔で言う
うっ、ちょっとだけドキッとした
違う、俺はロリコンじゃねぇ! 違うからなっ!
それからコイツは子ガモのように俺のあとを付いて来た
俺も気にしなくなってきた
たまに屋台の食べ物を与えると嬉しそうに食べて礼を言う
あれかな、父性的な何かが目覚めているのかも
俺は宿屋に戻って来た
さすがに部屋までは来ないよな?
「お兄さん、また明日ね♪」
そう言って去って行った
よかった、ちゃんと帰ってくれた
翌日、商店へアイテムなどを補充しに行く
うん、今日も付いて来ている
「そういや、話はともかく名前ぐらい教えてくれよ」
「あ、言ってなかったわね、忘れてたわ」
「俺はケンタだ」
「私はアンナよ、よろしくねお兄さん♪」
よろしくしたくないけどな
商店に入って銀の短剣を大量購入する
決壊死は銀の短剣でないとダメだから
アシュラ戦で大量に使ったから補充しておく
「銀の短剣ですか、ふーん」
「何だよ?」
「何でもありませーん」
よくわからない奴だ
商店を出て街行きの馬車の時間を確認する
明後日にはこの村を出ようと思う
「いつ出発するつもりですか?」
「そんなのお前に関係ないだろ」
「お前じゃなくてアンナですよ」
「はいはい、アンナには関係ねーよ」
「そうですよね、でも教えて下さい」
「何で知りたいんだよ」
「出発までに、、、 何でもないです」
「わけがわからんぞ」
「教えて下さい、お願いします」 ペコリ
はあ、俺も甘いな
「明後日の昼の馬車で出ようと思っている」
「ありがとうございます」 ペコリ
そして宿屋の前で今日も別れる
俺は宿屋に入るフリをしてアンナの跡を付ける
決してロリコンストーカーではないからな!
付けていくと人気の無い路地に来た
そこでキョロキョロしながら周りを確認している
そして俺は驚いた
アンナの背中から綺麗な虹色の羽が現れた
形はよくある妖精の羽だ
そのまま空へ飛んで行った
あいつ妖精だったのか?
妖精が俺に何の話があるんだ?
FPOにも妖精は存在している
でもこの村で妖精イベントやクエストなんか無かったぞ
まあゲームじゃないからこういうこともあるのだろう
それにしても何がしたいんだアンナは
「出発までに」 と言っていた
この村で何かして欲しいことでもあるのだろうか
俺はモヤモヤしながら宿屋へ戻った
翌日、村の酒場や屋台の人たちから街の情報を仕入れる
あちこち歩きまわって疲れた
というか気になって精神的に疲れた
アンナが姿を見せていない
何かあったのか?
俺への話とやらを諦めたのか?
「もう少しお兄さんのことを確認してからでないと話せないことなの」
って言っていたから確認が済んで話す価値なしと判断したのか?
くそ、人を振り回すんじゃねーよ!
そうだ、昨日のアンナが消えた場所へ行ってみよう
ビシッ! ドサッ!
路地の近くまで来たら何か音がした
何だろう?
急いで路地に入ると誰かが倒れていた
アンナだった
11話目にしてようやくヒロインの一人が登場しました
これから色々とケンタの疑問が解消されていきます
冒険者の男もゴニョゴニョ(またかよ!)
次回、ちょっとだけケンタが主人公っぽいです
ケンタ「いや俺が主人公だろ? ぽいって何でだよ!」




