109 商業ギルド
「でかいな、冒険者ギルドよりもでかい」
冒険者ギルドは二階建て、商業ギルドは三階建て
敷地面積は冒険者ギルドの二倍
そして商人が主に出入りするため警備も充実している
さらに出入りする人たちは身形がきちんとしている
冒険者は汚れたり破けたりするから身形には気を配っていない
服よりも命にかかわる装備に気を配っているからな
そのまま行こうとしたらアンナに怒られた
だから俺たちもそれなりの恰好に着替えている
冒険者ギルドと違って勝手に空いてる受付に行けない
入館したときに番号札を渡される
ちゃんと入館順で受付に呼ばれるのだ
「俺、こういうの苦手」
「わたしも少し苦手かな」
「二人とも年長者なんだからしっかりしてね」
「どーせおっさんですよー」 30歳
「どーせ年増ですよー」 26歳
(ダメな大人が二人、、、)
番号を呼ばれて受付へ行く
受け付けてくれた職員さんは若い青年だった
「いらっしゃいませ、本日のご用件はなんでしょう」
「冒険者なんですがパーティーハウスの物件を探しに来ました」
「パーティーハウス向けの物件ですね、少々お待ち下さいませ」
職員さんは資料を取りに奥へ行く
「よかった冒険者というだけで出ていけとか言われなくて」
「そんなバカなことあるわけないですよ」
「そうよ、冒険者ギルドとはきちんと連携しているんだから」
「そうなの?」
「素材や肉などを商業ギルドが買い取って商店へ回しています
素材や肉などのレートも商業ギルドが決めていますしね
パーティーハウスだって買う冒険者はそれなりにいます
冒険者も商業ギルドにとっては立派な顧客なんですよ」
ゲームと違って色々やってるんだな商業ギルド
「お待たせ致しました
お手数ですが別室で伺わせていただきます」
俺たちは別室へ案内される
テーブルの上には物件資料がたくさんあった
思ったよりたくさん持ってきてくれたようだ
「現在購入及び賃貸可能な物件はこちらになります」
「賃貸ではなく購入したいんですけど」
「では賃貸の資料は下げますね
これらが購入可能物件の資料となります」
賃貸の方が多かったみたいでかなり減った
それでもそれなりの物件数だ
三人で目を通していく
無駄にでかい屋敷からこじんまりした建物まで色々あった
間取りや部屋数と立地場所など確認していく
値段は気にしない、余裕であるから
「お客様、予算的には如何なのでしょう?
あまり価格をご覧になっていないようですが」
さすが商業ギルドの職員、俺たちの動向をよく見ている
「予算はこの3件を足してもお釣りがくるほどです」
資料の中で高い順に3件並べる
「え、嘘! あ、失礼いたしました」 コホン
素が出たね、まあ驚くだろうけど
3件合わせて50億超えるからな
俺たちの風貌からそんな大金持ってるとは思わないだろうし
「少し席を外します、ごゆっくりお選び下さい」
職員さんが出ていく
俺たちは意見を出し合い吟味していく
ノックの音がして 「失礼します」
某ファイナルなファイトの市長さん風の男が入ってきた
その後ろからオシリス伯爵、領主様が入ってきた
どゆこと?
「金持ちに見えない冒険者というのはケンタのことだったのか」
「領主様!? いきなり酷くないですか?」
開口一番ディスられた
「すまんすまん」
笑いながら謝る領主様
「初めまして、私はウーフ・ハンドフォードと申します
商業ギルドのギルドマスターを務めさせていただいています
この度はギルドをご利用いただきありがとうございます」
恰幅の良さとは違い物腰が柔らかい人だった
ハンドフォード? なんか聞き覚えがあるが思い出せない
「俺はケンタ・ウロスと言います」
「アンナです」
「サクラと言います」
「もしかして永遠の混沌の方々ですか?」
商業ギルドにまで知れ渡ってるのか?
「そうですけど、よくご存知ですね」
「もちろんです、あなた方にはかなり貢献していただいていますから
特にアマ草の採取量は歴代トップですから
アマ草は需要が高いのに入手が難しいですからね」
俺たちは結構簡単に入手してるけどな
ドクダミの判別や対処ができる冒険者が少ないのだろう
ウーフさんと領主様も椅子に座る
「えっと、なぜ領主様までここに?
そもそもなぜギルマスのウーフさんが来られたのですか?
さっきの職員さんはどうしたんですか?」
貢献してるとはいえ一介の冒険者にギルマスが来なくても
「彼が私に報告に来たのですよ
50億以上の予算を持ったお客様が来たと
見た目ではそう思えないと言ったので叱っておきました
見た目でお客様を判断してはいけませんからね
それで私がお話しを伺うことにしました」
ギルマスともなると客を見た目で判断しないのだな
「領主様がお客様のお名前を彼から聞いて気付いたようで
私と一緒にお会いすることになったのです」
「いや、領主様来る必要ないですよね?」
「そう言うな、色々便宜を図ってやるぞ」 ニヤリ
職権乱用では?
ウーフさんがちょっと困った顔をしてるよ
「それでお気に召した物件はありましたか?」
「それがなかなか決められなくて」
「その3件は駄目なのですか?」
さっきの足して50億を超える3件だ
「予算には問題ないのですよね」
「はい、だけどこの3件は大き過ぎるし豪華過ぎます
高位の貴族様向けですよねこの物件」
「そのとおりです、場所も貴族区画ですので」
「貴族区画は無しです」
大き過ぎるのは駄目、小さいのは論外と却下する
「ふむ、貴族区画以外で大き過ぎずそれなりの大きさ
冒険者ギルドからさほど遠くなく街の端は駄目と」
ギルドから遠過ぎると仕事に支障が出る
それに早起きしなきゃいけなくなるのが嫌だ!
「ウーフよ、いいのがあるだろ
あの物件をケンタたちに勧めたらどうだ」
「ですがあの物件はお客様が手続きを嫌がりますよ」
手続きを嫌がる物件ってどんなのだ?
逆に興味ある
「どんなのですか? 一応見せて下さい」
「わかりました、こちらです」
その物件の資料を取りだして渡してくれるウーフさん
大きさはリディアの屋敷と同じぐらいだ
大きく広いが過ぎるということはない
多分貴族向けだろうけどシンプルで悪くない
場所も貴族区画から外れている
冒険者ギルドへも徒歩で30分ほど
カブで行けばあっという間だ
気になる点は領主様の屋敷が近い、徒歩で10分だ
散歩がてらに行ける距離だ、ご近所さんだ
「こういう建物のデザイン好きかも♪」
パンティさんは気に入ったようだ
「悪くありませんね、設備も充実していますし」
アンナも高評価だ
「俺も悪くはないと思う、どこか問題でもあるんですか?
手続きを嫌がるとか言ってましたし」
「ええ、じつは、、、」
この物件は一年前までウーフさんの住居だった
商業ギルドの近くの屋敷に転居したので今は空き家だ
しかし売るにも壊すにもウーフさんの一存ではできない
ウーフさんの父親の名義なのだそうだ
父親の承諾がないとどうすることもできない
一度父親に手紙で聞いたが壊すのは駄目だと返事が来た
誰かに譲るか売却しろとのこと
ただし、条件が付いていた
屋敷を転売したり壊すような輩には渡してはいけない
承諾の認印は自分のところへ直接取りに行かせること
昔は自分も住んでいたから想い入れがある
そんな屋敷を大事にしない輩には渡したくない
直接取りに来させて信用できるかどうか吟味したい
すんごいわがままな父親だな
気持ちはわからんでもないが
「ところでこの物件、価格がありませんよお兄さん」
「え、あれ、ほんとだ書いてない」
「父が相手を見て価格を決めるそうです、すみません」
ほんととんでもない父親だな
「いいですよ、行ってやろうじゃありませんか
いいよなアンナ、サクラさん」
「いいですよ」「いいわよ♪」
ベンケイさんとアオイくんもいいと言うだろう
「それでその人、どこに行けば会えるんですか?」
「本当に行くんですか? かなり遠いですよ」
いくら遠くてもカブで行けばすぐだと思う
遠いと言ってもせいぜい街2つ行ったところでしょ
「馬車より速い移動手段を持ってるので大丈夫ですよ」
「わかりました、お教えします」
ここから街2つ分だとしたら知ってる街かもな
「この街から東にまっすぐ街や村などを越えて行って」
んん? 街2つ分じゃないのか?
いやそれは俺が勝手に思ってただけだけど
「ハジメノ街という街をさらに東へ進んだ先にある村」
え、待って、その村って、、、
「サイショノ村という村に父はいます」
「サイショノ村、、、」
「お兄さん、これは、、、」
「たしかに遠いわね、ってどうしたの二人とも?」
思い出したよハンドフォード
「もしかして父親の名前はウォーリーさんでは」
「おや、父をご存知でしたか?」
「俺、その村からここまで来ましたから」
「おお、なんという巡り合わせ!」
イヤな巡り合わせだよ、まさかの村長!
「どうしようアンナ」
「どうもこうも行くしかないでしょ」
「ほんとにどうしたのよ二人とも」
「後で説明するよサクラさん」
そうだよな行くしかないか
物件自体は譲渡条件を除けば優良物件だしな
「あのケンタさん、なにか問題でもありましたか?
まさか父がなにかご迷惑を」
「いえ、むしろ色々お世話になりました」
「それならよいのですが」
別に迷惑はかけられていない、世話になったのも本当だ
まさかウーフさんの父親が村長だったとはと驚いただけだ
こんな繋がりがあるなんてと動揺しただけだ
「それでケンタよ、この物件どうする?」
「買わせていただきます」
「おお、ありがとうございます」
ウーフさんは契約書を持ってきてくれた
俺が代表なので俺が必要事項を書いていく
俺とウーフさんのサインを記入して拇印も捺す
「あとは父のサインと認印だけです」
書簡入れに書類を入れて渡してくれる
「サイショノ村へ行ってサインと認印をもらってくれば
俺たちのパーティーハウスになるわけですね」
「はい、ご面倒をお掛け致します」
ウーフさんが頭を下げる
「こちらこそ、良い物件をありがとうございます」
俺たちも頭を下げる
「うむ、これで万事解決だな」
領主様、あなたここにいる必要ないですよね?
次回、サイショノ村へ出発!
そして「DSイレイ」編開始です
奴らとの最初の戦いが始まります




