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愚者の楽園に転移したけどまったく問題ない  作者: 長城万里
3 ただいま

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106 お出掛け

ベルさんを食事に誘った

エルドランという食事処へ連れてきた

酒と肴がたくさんある、ぶっちゃけ居酒屋だ


そういやベルさんってお酒は大丈夫なのだろうか?

駄目だったら他の店に変更しよう

近くにファミレスっぽい店もあるから可能だ


「お酒は飲めます、少しだけなら」

「そっか、俺も少しだけなんだよ」


よかった、俺もそんなに飲める方ではない

だけどたまに飲むぐらいはするからな


それにこの世界に来てから飲むのは初めてなんだ

独りで飲んでもつまんないし、アンナは駄目だろ?


アオイくんも俺たちのいた世界では未成年だから駄目

この世界は15歳で成人だけど向こうの倫理が沁みついている


ベンケイさんは成人だけど見た目でアウト

パンティさんは引きこもりに居酒屋は辛いだろう


なのでベルさんなら大丈夫と根拠なく誘った

我ながらノープランマイウェイだな



店に入りとりあえずビールと焼き鳥だ

若干ベルさんが呆れている


それでも酒と肴が美味しいので談笑しながら進んでいく


「そういやベルさんのフルネーム知らないや」

「そうですね、言ってませんでしたね」

「よければ教えてくれる?」

「ベル・メゾンです、27です」


何気なく聞いただけなのだが年齢まで教えてくれた

女性に歳を聞いてはいけないと思ってたから今まで聞かなかった


ベルさんの情報ゲットだぜ!

いかん、少し酔い始めてるようだ


ベルさんも酔ってきたのか変なことを聞いてきた


俺に好きな人がいるかどうか

仲間の中にいるんじゃないかとか


「あるわけないよ、仲間だもん」

「へえ、じゃお仲間以外にはいないんですかあ?」


そう言われてリディアの顔が浮かんだ

なんだ俺、リディアのことちゃんと意識してたんだな


「・・・・・い、いない、かな?」


でもまだリディアへの答えは見つかっていないからそう答えた


「ふーん」 ジト目

「な、なんだよ、ベルさんだって誰かいるのかよ」


俺もお返しに聞いてやる!


「いますよー」

「え、そうなの?」


いるんだ、ちょっとガックリきた

そりゃいてもおかしくないけどさ


ニヤニヤしながら知りたいか言ってくる

ああこれは俺をからかおうとしているな、酔っ払いめ!


「どうせ俺だとか言ってからかうんだろ」

「ええ、ケンタさんですよ♪」

「ほら、そうやってからかうんだから」


やっぱりな、あまりからかわないで欲しいよ


「大体、なんでからかってるとか思うんですか?」


「そんなの俺がベルさんに惚れられるなんて思ってないからだよ

 ベルさん可愛いし俺よりいい男を選ぶだろうし」


ほんとだったらそりゃ嬉しいさ、でもほんとなわけがない

俺には自信がない、モテたことないし告白も全滅だ

向こうで30年で10回は玉砕している、平均3年に1回だぜ?

自信もなくなるっつーの


この世界で初めて告白されたけどまだ受け止めていない

生まれて初めて告白されたのは正直嬉しかった

でもこじらせて自信がないから待たせている

ごめんなリディア


このあとこの手の話題は出なくなった



店を出てベルさんを家まで送った

家に着いたから帰ろうとするとまた言われる


「わたしがケンタさんを好きなのは本当ですからね」

「いや、だからからかわないでよ」


ギュッ 「ふんがっ!?」 鼻をつままれた、痛い


「からかっていません、真剣に告白してるんですよ

 ケンタさんこそ真面目に聞いて下さいませんか?」


「でもさ、俺が選ばれるなんて思わないよ」

「どうしてそんなに卑屈なんですか」

「だって俺だよ? モテる要素がどこにもないよ?」


あれだけ玉砕したら卑屈にもなるよ

でもベルさんは真剣な顔で俺を見ながら言う


「あなたに自信がないのはわたしにはどうすることもできません

 でも、わたしの気持ちを否定しないで下さいませんか?

 わたしの気持ちはあなたの自信のあるなしなんて関係ありません!

 わたしはわたしの気持ちを素直に告げているだけです

 からかってるとか勝手に思うなバカ! このバカ! バカ、、、」


ちょっとだけ涙が見えたが堪えて涙を止めるベルさん


ベルさんの言うとおりだ、俺は自分のことばっかりだ

俺に俺の気持ちがあるように相手には相手の気持ちがある

本当にバカだよ俺は


俺はベルさんに謝った、それでも自信がないことを告げる

俺の自信のない理由を無理に聞き出そうとはしないでくれている

こんなに優しい女性(ひと)に好きになってもらえるとは思ってなかったよ


「でもわたしがケンタさんを好きなことだけは忘れないでね

 それとわたし以外にもあなたを想う人が出てくるはずよ

 その気持ちは否定せずきちんと受け止めてあげてね」


すでに一人いることは黙っておこう


「わかってる、ベルさんのおかげでわかったから

 えと、それでベルさんの告白の返事、、、」


「それはまだ言わないで」

「え?」


待ったがかかった


「今はわたしの気持ちを知ってくれただけでいいです

 焦らずゆっくり考えて答えを見つけて下さい

 それまでは今までどおりでお願いします」


いいのかな?

でも俺も焦って変な答え方をするかも知れない

だからベルさんの言葉に甘えて今は返事を控える


「うん、わかった、ちゃんと考えて答えを出すよ」

「ありがとうね」


「それじゃ帰るね、おやすみ」

「おやすみなさい」



宿屋に帰ってきた、酔いはほとんど醒めている

みんなはもう寝てるようだ、俺も寝よう


リディアにベルさん、こんな俺を好きになってくれてありがとう

真剣に考えて答えを出そう


明日もお休みだ、ちょっと遠出して気持ちを整理させよう

そのまま深く眠りについた




翌朝、みんなも出掛けて俺も出る準備をする


「ケンタくん、今日はどこ行くの?」

「サクラさんこそ珍しいね、どこか行くの?」


白ブラウスに薄紫のロングスカート

髪を首の付け根あたりで白い紐で結んでいる


「ケンタくん、たまに教会近くのバザーへ行ってるよね」

「うん、今日も行くところ」

「連れてってー♪」

「いいけど、ほんと珍しいね外出するなんて」


パンティさんはお休みにはいつも引きこもっている

昨日も引きこもっていたから今日もだと思ってた

そもそも自ら外出しようなんて今日は雨かな?


「その顔は失礼なこと考えているでしょ」

「ごめん、雨降るんじゃないかと」

「わたしだって出掛けるときぐらいありますよー♪」

「引きこもりのポリシーは?」

「あるけど、出るときは出るわよ」


あるんだ、ポリシー


カブのタンデムにパンティさんを乗せて出発する


「バザー行きたかったの?」

「ええ、魔法関連の掘り出し物も見つかるからね」

「あれだけすごい魔法をたくさん使えるんだから必要ないだろ」

「それはそれ、これはこれよ」


まあ外に出てくれるのだからいいか

引きこもってばかりはよくないと思うしな


「そういや四神は?」

「置いてきたわよ」

「サクラさんを守るためいつも付いて来てたじゃん」

「だってケンタくんがいるから必要ないもの」

「俺、頼りにされてんの?」

「頼ってますよー♪ か弱いわたしを守ってねー♡」


いや、パンティさんの方が強いでしょ


「か弱い俺を守ってねパンティさん♪ ぷぷっ」

「あ、バカにしたわね! そんなこと言うならこうよ!」


胴まわりに腕をまわして抱き付いてきた

背中に柔らかく温かいものが当たる

動揺してハンドル操作を誤りかけた


「なにすんの!? 危ないでしょ!」

「カブは搭乗者が落ちたりしないようになってるじゃない」

「そうだけどハンドル操作がミスるでしょ!」

「えー、なに動揺してるんですかー?」


後ろだから見れないけど絶対ニヤニヤしてるぞ!


「当たってるんだけど」

「当ててんのよ♡」


「恥ずかしくないのかよっ!」

「知ってるでしょ、わたしビッチよ?」

「ファッションビッチのくせにぃ~っ!!」


ゲームと違ってリアルだからビッチさが生々しい

くそう、パンティさんめー!



ようやく教会近くの広場に着いた

移動時間はいつもどおりだがアレで長く感じた


「ほら、あっちがバザーですよ」

「なによもう、あれぐらいで怒らないでよ」


怒ってないよ、困ってんだよ


「ケンタくんは行かないの?」

「俺は先に教会で買い物する」


「じゃわたしも付いて行くわ」

「バザーゆっくり見てきなよ」


「わたしを守ってくれる人がいないじゃない」

「俺より強い人がなにを言ってるんだよ」


「ケンタくん、どっちが強いとかじゃないのよ?

 わたしは素敵な男性に守ってもらいたいの♡」


「俺は素敵じゃありませんよ」

「そうね♪」

「うおいっ!」

「あははは♪」


ダメだ、パンティさんに勝てる気がしない

諦めて一緒に教会へ行くことにした


「大聖堂よりは小さいけどここも立派よね」


王都の北東にあるフランチャイズ大聖堂

この国の教会の総本山だ

ここの教会の1000倍は大きい


「こんなところで結婚式とか憧れるなあ」

「引きこもりをやめない限り無理だと思うよ」


「それじゃ諦めよっと」

「早いな諦めるの!」


「だって引きこもりやめたくないもの」


やめられないのは自分以外の要因もある

これはまだ本人にやめる気があるからマシだ

やめたくないのは完全に自分の意志だ

こっちは本人にやめる気がないのでお手上げだ


「でも不思議だよな」

「なにが?」


「引きこもりはそのとおりだと思うよ実際そうだから

 でもコミュ障ではないと思うんだけど」


再会する前でも依頼をたまーーーには受けていたようだし

リディアとも普通にコミュニケーション取れてたみたいだし


「相手によるからね、わたしの場合

 依頼は相手を札束と思ってやってるから

 それ以外ではうまく人と交流できないもの」


札束って、お客様はお金様ってこと?

なんて失礼な思考


「それならあのとき助けた令嬢は?」


依頼者じゃないからさすがに札束扱いじゃないだろう


「可愛い子や生き物は別よ♪」


なんて身勝手なコミュ障

いやこれもうコミュ障じゃないのでは?

たんに身勝手で失礼で自己中なダメな人なだけでは


「あと俺たちとはちゃんと交流できているよね」


「あなたたちは仲間だから普通に接することができるわよ

 できなかったら仲間になれていないわ」


「そりゃそうか」


パンティさんも色々あるのだろう

でも少しパンティさんのことが知れて嬉しかった

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ベルさんええ女や…。
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