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(四)-4
ついに彼女は立ち上がり、被告席でそう大声を上げた。
梶田判事が木槌を打って「被告人は落ち着いて」と彼女を席に着かせようとする。
「同じように母親も殺しましたね、あなたのその幸せになりたいという身勝手な理由で」
「異議あり! 異議あり!」
廷内が騒がしくなり、判事の木槌が何度も打たれる。
さらに彼女は目に涙を浮かべて大声で続けた。
「どうしてみんな私が幸せになろうとするのを邪魔するのよ。私はただ、幸せになりたいだけなのに。人並みに幸せになりたいだけなのよ。それなのにどうして私だけ幸せになってはいけないのよ」
(続く)




