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1-2-3 到着、冒険者ギルド ①

本日8話目の投稿です。


 目的の冒険者ギルドは、この広場の右にあった。通りに出した分厚い木の板に「冒険者ギルド」と彫られていて、それを鉄の板で補強した立派な看板が目印だ。

 周りに仲間を待ってるらしい冒険者たちが何人もたむろしていて、その前を通るのはちょっと勇気がいった。

 荒事も多いもんな。そりゃおっかない見た目の人も多いわけだ。

 ドキドキしながら重い鉄製の両開きのドアを押し開けたら、そこはまるで広いバールのような雰囲気だった。

 画面じゃ上からのアングルで見てたけど、実際はこんな風になってるのか~…。

 武器も防具も重装備の人が多いから、床も壁も石造りだ。

 各種族や体格で使い分けできるようになってる様々な高さの立ち飲み用の丸いテーブル、バンコのあちらこちらに、様々な種族とジョブの冒険者がいて、一瞬全員に見られた気がした。

 ……あ、気のせいじゃない。俺の後から入ってきた人も見られたから、そういうものみたいだ。

 右手に依頼書を張り付けた大きな掲示板、左にカウンター、奥は確か右側が手洗いとか治療施設、左側は職員専用。あとは二階に冒険者が格安で寝泊まりできる宿泊施設があったはず。

 俺がこのギルドを目指した理由は、冒険者をやってみたかったというのともう一つある。

 武器と防具が持ち越せなかったのは諦めたけど、二周目特典として開放されてたキャラ、あるいは課金次第で仲間にできるキャラが登場するのか知りたかったからだ。

 今まで過ごした感じでは、かなりゲームの世界そのものが反映されていた。だからこちらも期待できるんじゃないかと思ってさ。

 俺が課金していたキャラは三人。

 メインヒロインで育てれば強力な魔法ジョブに育つ女の子マリーベルと、竜族の屈強な女戦士ニケ、それからリメイク版でやっと救済エンドが追加されたけど、一周目では絶対に仲間にできない魔王軍の強力な女将軍ディアドラだ。


「……いない」


 ざっと見まわしたけど、少なくともここには俺の知ってる仲間になるキャラは誰もいなかった。

 二周目では課金することで最序盤から仲間にできるはずの、マリーベルもいない。

 最初にギルドに入った時点で掲示板の依頼書を見上げてるはずなんだけど、掲示板の前もテーブルのあたりにもまったくべつの、見たことのない冒険者たちしかいなかった。

 それに、二周目で一番楽に仲間にできるはずの強力な男性キャラ二人もいない。彼らも最初にギルドに入ったタイミングでバンコに二人で立っていて、話しかけたらそのまま仲間にできるはずだったんだ。

 つまりこの時点で三人の仲間キャラのフラグがなくなっていて、俺は大ショックだよ!!

 女性キャラはそれぞれ専用のイベントをこなす必要があるけど、男性キャラ二人は一周目はNPCのままで顔見せだけ、でも二周目からはそのまま仲間にできるって聞いてたのに!

 やっぱり生前あいつらのお着換えセットを買わなかったからかー!?

 ちくしょう、こうなることがわかってたら、あんなキャラやこんなキャラの買えるやつはぜんぶ買っといたのに!

 だって男だもん! 美少女や美女のキャラとパーティ組みたいじゃん!!

 お着換えセットもまずお気に入りの女の子のやつから買うじゃん! 水着とか浴衣とか買っちゃうじゃん!!

 でも今はエッチな服着て懐いてくれるかわいい魔女っ子よりも、強くて頼りになるお兄さんかおじさんを仲間にしたい…!!

 っていうか、切実に前衛を任せられる仲間が欲しい! 俺の持ってるジョブはどれも後衛なんだよ!!


「ねえ、そこのボク! さっきからそこで百面相してなにか困ってるみたいだけど、ここに来たの初めてよね? 誰か探してるの? それとも依頼かな?」


 まさかの完全後衛ジョブ開始でぼっち冒険かと頭を抱えて唸っていたら、職員のマイヤさんがカウンターから声をかけてくれた。

 マイヤさんは猫型の獣人族(ガルフ)で、耳と尻尾は茶トラだ。カールしたふわふわの柔らかいオレンジっぽい茶色の髪と同じ色の大きな猫目がかわいい。

 猫っぽいしなやかでスレンダーな体型に、ぴったりした七分袖の白シャツとサスペンダーつきのショートパンツ、蹴られたら痛そうなしっかり金属で補強されたブーツがよく似合ってる。

 NPCだけど王道の猫耳美少女キャラでファンが多かったんだよな。もちろん俺もかわいいと思ってたし、話しかけてもらえたのはうれしい。

 そうか。現実だから俺から話しかけなくても、向こうから話しかけてくれるんだって感動した!


「あ…はい。人を探してました。あの、月光旅団の人たちがいないかなって」

「月光旅団!?」

「はい。その、たまにこのギルドに来るって聞いて……」


 マイヤさんが耳も尻尾もびこーんとさせて驚くものだから、俺はおどおどと小さくなって頷いた。

 だから、ゲームだとこのタイミングでいるはずだったからだってば。

 なんかほかの冒険者たちもみんなこっち見てるし!


「えーと…お知り合いとか? 依頼は…ものすごく高いわよ。気まぐれに格安で受けることもあるって噂はあるけど」

「いえ、そうじゃないんですけど」


 うん、知ってる!

 Sランクのパーティなのに、本当に困った状態の相手を見捨てられないような人たちだもんね。

 すみません。あわよくばと思っただけです!


「会ってみたいって言うか…。一度、仲間になってみたいなぁって思って……」


 でも正直にそんなアホみないなこと言えないし、もじもじしながらそう言ったら、一瞬静かになって大爆笑された!

 しかもここにいる全員に!!

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