第七章
夜の闇に、魔法炎と剣が立てる火花が映える。自称魔剣と同化した男はルカと交戦している。ルカは桁外れの法術式組立能力を持っていて、本気を出せば30秒ほどで相手は組み伏せる。ただし、消費魔力がえげつない為その後すぐに気を失う。今この場でそれが起きると大変だからリューラが補助に入って彼女に負担がかからないようにしている。いたずら好きで怠け体質だがこういうところはしっかりしている。
「あら坊や、よそ見しないで?」
黒髪の女の使い魔の龍は正直俺の手には余るほど強い。それに加えて相手の黒魔術。同じ黒魔導師だから手は読めるけどそこまで防御が回らない。黒炎で強化した魔剣が相手の魔力に侵食されていく。くそっ…。
「“天は地に、光は闇に。閂抜いて我の元へ”」
男が化身開放呪文を唱えるのが聞こえる。双月ではなくとも、あの剣は強い。化身の強さは剣の強さに比例するから、龍とは比べ物にならない強さの敵が増えることになる。この状況でそれをされると本当に死ぬ。
警戒したのか、ルカの結界術が発動する。
だが。
何も、起きない。
「何故、何故だァ!?」
「やっぱりソレ偽物だったのよ。伝説級の魔剣なのにすぐに手に入ったと思ったわ」
「はいチャンスー!!」
敵が怯んだのをいいことにルカが攻撃を畳みかける。問題は俺の目の前の敵だが…。
ドガァァァ
突如、一筋の光が闇を裂く。2人と1匹が軽く数メートル先に吹き飛ばされる。
「お主ら、助太刀じゃ!」
光の元を見ると、タイトスカートに身を包んだ少女が仁王立ちしていた。口調からしてカラシャ。そして隣には…。
「シーナ先生!?」
先生も法術杖を持って仁王立ち。恐らく今の攻撃は先生。…あの先生戦闘授業受け持ちじゃなかったよな?図書室司書だよな?
「2人とも詳しい話は後で。ここは私たちが何とかするから城の地下へ!メルトがいるわ!」
「リューラ、お主が感じるはずの大きな魔力のほうへ、2人を連れて行くのじゃ」
「はいはいだみー」
リューラがカピバラの姿に戻って屋根を走りだす。ついていけば地下に入れるらしい。