君には、秘密(恋人同士。性別自由)
「早く春にならないかなぁ」
君が、僕の腕の中で震えながら言う。
僕らは厚手のブランケットに包まり、あつあつの珈琲を飲んでいる。暖房も、ごうごうと音を立て強気に動いている。
寒さなんて、ほとんど感じないはずなのに、君は唇を尖らして言うのだ。
「早く春になればいいのに」
僕は、笑いをこらえながら、
「そうだねぇ」
とまったく思ってないことを言う。
春なんて、来なくていいのだ。
こうして君を捕まえていられるのなら。
「早く来るといいのにね」
常冬でもいいと、思っている。
君には、一生秘密だけれど。
END.