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第5話 はじまりの街

 俺は今ゲーム内の街にいる。


ゲームにログインすると最初にワープさせられる、【はじまりの街】の広場だ。



全員ログインするときにはここにワープさせられるため、周りを見渡すとひっきりなしにいろんなプレーヤーがゲームに出入りしている。



会話で賑わう広場に佇みながら、俺は父さんの最後の言葉を思い出していた。




 「あのゲームには……が……足りない……でも……お前なら……」



 父さんはあのとき確かにそう言った。


その何かが聞き取れなかったが、何か重要なことを伝えようとしたと思われる。



「父さんは俺に何を伝えたかったんだろう……」



 手紙の真意も結局はわからなかった。



俺に一番にクリアして欲しいだなんて。



一体宝ってのはなんなんだろう。



そんなに重要なものなのだろうか。わからないことだらけだ。



「仕方ねえ。まずは装備を整えにいくか」




 ベータ版をやっていたから、初期に出てくるモンスターの強さは大体わかる。



多少は強さの調整が入ったりもしているかもしれないが、


ベータテストの経験から考えると、今持っている初期装備では太刀打ちできない。



一番弱いモンスターにも倒される可能性がある。だからまずは最初に与えられた3,000クロンを使って、この初期装備よりも少し強い装備を買うのが定石だ。




 広場から街の店々が並ぶ商店街の方へと迷わず向かう。



石のタイルでできた地面を多くの人が行き交う。


ほとんどがプレイヤーだろう。



みんな世界最先端のゲームを前に、楽しそうに会話をしている。




「あのお店に並んでるりんご、本物みたいだったね!」




「ねー! お店の作り自体もヨーロッパにありそうなデザインそのものだったし、


店員もNPC(Non Player Chatacter)だろうけど、


コンピューターとは思えないほどリアルな喋り方をしてた! 


これがゲームの中だなんて、信じられないよね」




「ゲームの進化もすさまじいね」



 などと称賛の声が上がっている。




 つい、自分の父親のことを褒められたようで嬉しく感じ、「これ俺の父さんが作ったんだぜ!」と話しかけたい気持ちもあるが、


そこは押さえて1人勝手に笑顔になりながら、道を歩いていく。




 武器のロゴを見つけ、武器屋に入る。



「へい、いらっしゃい! 何をご所望だ?」




 恰幅のいい髭の生えたおじさんが話しかけてきた。武器屋のNPCだ。



 すると、この店で売っている武器のメニューが目の前の空中に表示される。



「この、銀のシルバーソードと銀のシルバーメイルをください」



「あいよ!」



 迷わず、武器と防具を選択した。



ベータ版の時の初期モンスターの強さを考えるとこの装備が最適だ。




「よし、これでフィールドに出よう」



「おい、あんた。ちょっと聞いてもいいか」




 振り返ると、顎にちょび髭の生えた青年が立っていた。



20代前半と言った見た目だ。まあアバターだから本人の顔と一致しないとは思うが。



「あ、ああ。なんだ?」



 少し人見知りを発動しながらも、返事をする。



「あんた、もしかしてベータテスト経験者か? 


普通は一番安い木のウッドソードと木のウッドメイルを買うだろ? 


でもあんたは迷わず、その上の装備を選んだんだ。


もしかしたらそうかなと思ってよ」




 そう答えた彼はニッコリと笑って話を続けた。


人見知りの俺にとっては、心の距離の詰めかたが早いなと感じ、少し身構えたが、不思議と悪い気はしなかった。




「ああ。よくわかったな。そうだよ。


一番最初に出てくるモンスターなら木の装備でも倒せるが、もう少し先に進むとこの装備じゃないときつかったからな。


それを見越して買っておいたのさ。



またこっちまで戻ってくるのめんどくさいからな」




「そういうことだったのか。すまねぇ、急に話しかけちまって。迷いのない行動だったから思わず気になってよ。俺、キョウって言うんだ」



「俺はカイト」


「カイトか。よろしく」



 それから、戦闘方法や操作方法について教えてくれないか、と言われたので、草原に出てレクチャーすることにした。




普段は人見知りを超発動して、初めて会った人と長く会話をすることすらないのだが、キョウの人懐っこさと勢いに負けてしまった。




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