闘技場にて2
「どこに行っていたのかと思えば」
「あ、メリッサさん。探知魔法、感じました」
「アリア、わたし、おとなしく、待つように言わなかった」
おとなしく、を強調してきましたね。
「待ってました」
「だったらーー」
「学園内で待ってました」
「その場で待ってなさい」
言葉の認識のズレですね。
わたし、ジッとしてられないタイプなんですけど。
それでそれで、隣の女性は誰ですか。その水色っぽい髪は、まさかレーナ・レーヴィとかいう、師匠の愛人ではないですよね。
「メリッサさん、その人は、まさかレーナさんですか?」
「あら、レーナの名前は聞いたことがあるの。有名だけど」
やっぱり。これは、探っておかないといけませんよ。
師匠と、どういう関係だったのか。
「さっき聴きました。ミアさんの師匠とか」
「んー、そのミアって子は、むこうで腰が抜けているようだけど」
「軽く遊んでました」
別に、初級魔法をぶつけただけなんですけど。
「そう。友達を作ることも大事よ」
「え、仲間なんていらないですよ」
「アリア、友達は作りなさい。一般常識のうちだから」
「はーい」
師匠はボッチこそ至高とか言ってたけど。でも、ボッチって何ですか、って聴くと哀しそうにしてましたね。一人でいることだ、孤高を愛することだ、とか言ってましたけど、わたし的にも困るのは分かります。師匠は、わたしと二人でいないといけないんですから。
「その子がロリコンの弟子」
「し、師匠はロリコンじゃない……で……あっ」
「アリア、あなたーー」
しまったです。完全にやられました。引っ掛けです。誘導尋問です。いや、まだ間に合いますか。
「メ、メリッサさんはロリコンじゃないです」
「誤魔化しが下手ね」
そんな哀れみの目を向けないでください。不愉快です。
「メリッサ、どうしたの」
「いえ、どうでもいいわ。記憶封印が解けているってだけ」
「わたし、聞いてない」
「ごめんなさい。言うの忘れてた」
「メリッサ、他に言ってないことないでしょうね。あとで、言わないで」
おお、メリッサさんに、強気です。
ん、ということは、別に、わたしは忘れているふりは必要なくなった、と。師匠、もっと演技力を磨かないといけないようです。
「それで、レーナさんは、師匠と、どういう関係ですか」
「敵ね」
「師匠の敵は、わたしの敵です」
「メリッサ、素直な子みたい」
「あいつに盲信してなければいいんだけど」
「なっ、師匠は最高の師匠ですよ」
「まぁ、いいわ。腕試しといきましょうか」
レーナさんが、大きな杖を取り出す。収納魔法ですね。
えーと、周りの目があるのですが。そこそこ優秀を演じるんですよね。
「上級魔法。撃ってみて」
「し、死にませんか」
「いいから」
人に向けて撃つような魔法ではないんですが。
師匠にも、人は殺してはいけないと、言われてるんですよ。
「大丈夫よ。レーナの魔法使いの腕は、世界一だから」
「ほ、ほんとに、本当ですね。う、撃ちますよ」
上級魔法ーー巨大雷撃の魔法を放った。バリバリと、恐ろしい音を伴いながら、青白い電撃が対象に向かっていく。
「シールドーークワトロ」
おお、多重魔法の発動です。四重です。しかも、電気を完全に抑え込んでます。
「うん、威力は申し分なし。ちょっと雑すぎるけど」
「レーナさん、すごいです。もっと、もっと撃っていいですが」
「ダメよ。疲れるから。だいたい分かったから。これは、ミアでは相手にならない」
「れ、レーナ師匠……」
「ちょっと、修行を厳しくするかもしれません」
「え、えぇぇぇぇええええ!!」
「当たり前です。これぐらい、余裕を持って、守れるレベルにしないと」
あ、これぐらいは使っていいんで……、周りの目が、完全に驚いています。
「はーい。注目。彼女は魔女メリッサの弟子のアリアです。優秀な子だけど、まだまだ魔法としては、大雑把。上級魔法をすでに使えるのは素晴らしいが、魔法は、威力があればいいというものではない。精密に緻密に、ロジカルに展開すれば、初級魔法のシールドでも防がれます。鍛錬を怠らないように」
あ、少し、みんなの目が、再起しました。
なるほど、こうやって、実は大したことないんだ、と思わせるわけですね。
「レーナ、なんだか、わたしを脳筋だと思ってそうね」
「メリッサの魔法は、いつも大きいだけで、美しくない」
あれ、なんでしたっけ。力こそ正義みたいな。えっと、大艦巨砲主義でしたか。強い方が勝つんです。うん、たぶんそんな感じです。
「あら、じゃあ、ここで模擬戦やろうかしら」
「メリッサ、一人でこもっているうちに、魔法の技術は進化している」
「わたしの戦術級魔法も防いでみる」
「お望みなら、受けて立つけど」
あわわっ。剣呑です。キャットファイトです。
こういう時は、もっとやれ、ですかね。ワクワク。
「やめとくわ。アリア、帰るわよ」
「え、帰るんですか」
「なんで、そんなに残念そうにしているの」




