闘技場にて
庭園を歩いて、校舎の真後ろあたり。そこに小さな建物。ドアをあけると、そこから、地下へとのびている階段。おお、秘密基地みたいです。
師匠といたダンジョンのように思うけど、もっと整備されている。
階段を一歩一歩。
少し開けた空間。更衣室と書いてありますね。
「ここで、動きやすい指定の服に着替えるんだけど」
「持ってないです」
「軽くだから、そのままで、いいでしょ」
女子用の更衣室を通り抜けていくと、大きなドーム空間。広いです。
魔法の練習をしている人が何人もいますね。
「こっちこっち」
ミアに、付いていきましょ。わたしには、よく分からない場所ですし。
「VSはこっちだから」
はいはい、どこへでも。
「安全対策で、防御魔法がかけられるから」
なるほど。安全第一ですね。魔法を人に向かって撃つのは危ないですからね。メリッサさんなんて、ファイアーボールをわたしに放ってましたけど。あれぐらいは、遊びです遊び。師匠も、わたしに、強力な魔法をぶっ放してきましたものです。
透明なガラス扉をあける。真四角の開けたエリア。入ると、わたしの身体に防御魔法がかけられる。
周りの壁にも防御魔法がかけられているのですね。至れり尽くせりです。
「さて、攻撃は、魔法だけ。武器は持ってなさそうだし」
「拳がありますよ」
「あはは、やめとく。わたし、殴り合う趣味はないから」
「そうですか」
まぁ、女の子は殴ったらいけないとは師匠も言ってましたし。顔に傷がついたら大変とか。そのわりに、魔法でわたしに――。まさか、師匠は初め、わたしを男だと勘違いして、いやいや、そんなことあるわけないです。
「なにを、考えこんでるの」
「いえ、こっちの問題です」
それにしても、なんで戦うのか不明ですね。
というか、なんだか、周りから見られてますね。ガラスの向こうで、大勢がこっちを見てます。
わたしが可愛いからですか。男の人も多いですし。
「えーと、はじめていいの」
「はい。準備万端です」
見たところ、わたしの防御魔法は突破できそうにないですね。
試合の開始のような合図の音が鳴って、すぐに――。
「シールド」
薄い膜を身体の周りに張っていく。
とりあえず、防御を張っておきましょう。あとは、どうしたらいいのでしょうか。
どうすれば勝ちなんでしたっけ。
「最初は、守りってこと。じゃあ、こっちから」
攻撃魔法が次々にぶつかる。初級魔法レベルの単純な弾幕。炎から風から氷から。
当然、ビクともしません。
ミアさん、ちょっと汗が出てますね。
「メリッサさんは、まずは防御の人なの」
「メリッサさんは、攻撃的ですよ」
すぐに、初級魔法をぶつけてきますし。効かないのに。
「次、中級魔法、使うよ」
わざわざ言わなくてもいいのに。氷系ですね。凍結魔法が得意そうでしたし。初級魔法を見ていたかぎり。
範囲凍結が、シールドを直撃する。白いモヤがあたりを覆っていく。そこそこの威力です。
「えっと、終わりですか」
「・・・・・・っ」
いえ、そんな顔をされても困るのですが。
どう考えても、魔法の強度が違いますし。これだと、ヒビも入りませんよ。
「ミアさん、残念ですけど、レベルが違うんです」
「そ、そんなことっ。もう一回、今度は絶対に――」
同じ魔法。さっきよりかは、強そうですけど。
シールドを突破することはなさそう。
あれ、これって負けた方がいいのかな。周りを確認しておきましょう。
あー、なんだか、まずそうです。
わたしは、普通の生徒。ちょっと優秀なだけの生徒。
氷結魔法があたる瞬間に、防御魔法を弱める。痛いのは嫌なので、まとっている安全対策用の防御魔法が削れすぎないように、調整して――。
「あー、破られましたー」
完璧です。
女は、みんな女優なんです。演技力がないとダメなんです。
「・・・・・・」
「あのー、負けましたけど」
「ふ、ふざけないで!」
「あれ、これって、どうすれば負けなんですか」
間違えましたか。防御魔法が大幅に削れたら終わりじゃないんですか。
「わ、わたしにも撃ってきなさい。シールド」
「えっと、一本勝負じゃあないんですか」
「いいから」
でも、初級魔法で、完全に壊れかねないです。危ないです。
だいたい、もう魔力量が少なくなっていて――。
抑える抑える。
今まで、あんまり威力を抑えようとしたことはなかったのですが。
「じゃあ、いきます。ファイアーボール」
火球が、まっすぐに、シールドにぶつかる。
――よし、ヒビが入る程度。完璧なコントロールです。




