学園というもの
「どうですか?」
「可愛い、可愛い。アリア、そろそろ決めなさい」
メリッサさんが、覇気の無い返事をしています。
嫉妬ですかね、もう自分には似合わないから。ローブの下は、もう贅肉がーー、いえ、一部は侮れませんが。
服屋というものは、なかなかいいものです。お着替えをさせたがる師匠の気持ちが分かります。
「普段着を選ぶのに、どれだけ時間をかけるつもりなの。本屋に、教科書も買いに行くんだから」
だって、これは重要ですよ。乙女のおめかしは、年頃の少女にとって、最重要なんです。
師匠といた頃は、師匠の持っていた服ばかりでしたし。ちょっと子供っぽかったんですよね。
こんなに服ってあるんですね。これとかスケスケ、ですよ。
「アリア、普段着って分かってる」
「誘惑のことです」
「周りから浮かない、普通の服よ」
どう考えても浮いているローブ服の人が言っています。しかも、都市の人なんて、みんなバラバラの服装じゃないですか。気にしなくてよくな・・・・・・でも、スケスケは着ないよ。
あと、スカートは着ませんよ。ラッキースケベに注意しろっと師匠も言ってましたから。チラリズムがどうたら、と言われたし。つまり、師匠にしか見せないんです。
「アリア、下着は年相応のにしなさい」
「でも、メリッサさん。わたしは、勝負下着をーー」
「いらないから」
「いりますっ」
師匠がいつ戻ってくるかも分からないのに。でも、実際、何の勝負なんでしょうか。
まぁ、師匠が赤くなるなら、いいでしょう。
「一着だけよ」
「はーい」
よし、勝った。
◇◇◇
教科書を買いに本屋へと歩いて行く。服屋から、もう少し高級そうな通りの方に。
二階建ての建物。ガラス張りになっている。磨りガラスで中はよく見えない。ベルが鳴り、中に入ると、本が壁一面に並べられている。床にも、古そうな本が山に。
店主らしき小太りの男性が、読んでいる本から目をあげて、こちらを見る。丸い眼鏡が似合ってます。
「おやぁ、メリッサ。弟子でも取ったのか」
「そんなところよ」
「え、わたし、弟子なんですか」
わたしの師匠は、師匠一人なんですが。
師匠以外に師匠はいないのです。
「はは、生意気な弟子を取ったな」
「不本意だけどね」
「初級魔法かい」
「上級の」
「じょ、上級!?さすがは、メリッサの弟子ということか」
「メリッサさん。わたし、別に魔法はーー」
もう学ぶことなんてないようなぁ。師匠にたたき込まれましたし。
あの頃は、鬼師匠でした。スパルタ教育らしいです。スパルタって何なのでしょうか。
「分かってる。ただ受けないわけにはいかないから」
「これが、事務的というやつですね」
「あなたが学ぶべきは常識。ーー歴史とかは、初級でお願い」
「メリッサ。あんた、魔法しか教えなかったってクチか」
あ、呆れた声だ。メリッサさんもわたしと同じだね。
「そんなところ。だから、他は、適当にね」
「年相応にしたらいいか」
「一つ下のもの、一緒にお願い。どうせ、知らないだろうし」
「メリッサさん。そういえば、わたしは、どこの学園に通うんですか」
「オルテンシア魔法学園よ。今から見に行くから安心して。手続きもあるから」
「ついに、学園の全貌が」
「あなたは、どういうところを想像しているの」
「教育する場所です」
「そうね」
「そして、教育は洗脳です」
「うん、教育が必要なようね」
「メリッサ、どんな教え方をしたんだ」
あ、また、メリッサさんが、呆れた顔を向けられてる。
いい気味なんだけど。わたしにも跳ね返ってそう。
◇◇◇
オルテンシア魔法学園。
校門を通ると、大きな噴水です。ここで泳ぐんですかね。
少し浅すぎる気も。足をーー。
「アリア、それは噴水よ」
「それぐらい知ってます」
「だったら、見るためのものって分かるでしょ」
「も、もちろんです」
なるほど、これは雰囲気作りというものですね。周りに、庭園もありますし、水を植物に上げるためなのかもしれません。
まぁ、見よう見真似で、やっていればだいたいオッケーなはずです。ファーストペンギンは犠牲になると、師匠も言ってましたし。でも、結局、ペンギンが何かは、分かりませんでしたけど。
重厚そうな建物。これがお城ですか。
四角くて、壁のようです。時計と鐘が真ん中の上部にあります。
「お城です」
「カステッロ城は向こうよ。ここが学園の校舎」
「魔法三発はかかりそうです」
「絶対にやめなさいね。魔法のマトじゃないから。というか、分かってるでしょうけど、隠蔽のスキルを使いさないよ。あなたは、ここを優秀な成績で卒業すればいいだけだから。一番は、問題を起こさないことだけど」
「分かってます。コネと人脈、そして、肩書きですね」
「それと、最低限のマナーよ。日常生活に溶け込みなさい」
「スパイ活動っと」
「全然、間違ってるけど、もういいわ。多少のことは諦めるから。じゃあ、手続きしてくるから、大人しく待ってなさい」
「はーい」
「返事だけはいいわね」
メリッサさんが、校舎の中へと消えていく。わたしは、とりあえず、庭園を大人しく散策ですね。




