都市というもの
ここが都市ですか。
わたしは都市に来ました。まずは学園に通うための道具一式を揃えるようです。
人がいっぱいですね。こんなに人がいっぱいでいいのでしょうか。女の人がこんなにーー、師匠、まさか、わたしを追い出して、他の女に。
いえいえ、そんなわけないです。
あんな、洞窟と森しかないような場所で過ごしていた変態なんですから。それに師匠は、邪念に惑わされるような……人な気がする……。
森に帰ったら、師匠を森から出さないようにしましょう、そうしましょう。危ない、都市、危ないです。
「なにをキョロキョロしているの」
「いえ、初めてでして」
「そう、アリアは、都市に来たことがなかったのよね」
メリッサさんは、路上でスパスパとキセルをふかしています。あんまり好きな匂いじゃない。加齢臭を隠しているんですかね。それとも魔女はこういう匂いをさせる必要でもあるのですか。
「アリア、置いてくよ。早く来なさい」
はいはい、ついていきますよ。早く服を買いに行かないとですね。今着ている服、ぶかぶかなんです。
「いい、これが、1セルト硬貨、これが、2.5セルト、こっちは、5セルト、それと、12.5セルトね。あとは、25セルトで、1イルナねーーーー」
おさらいです。昨日説明された硬貨をもう一度説明されています。はじめてのおつかいらしいです。まずは、屋台で串焼きを買ってみなさい、とのことです。
人の都市というか社会というものはお金で動いているそうです。もしくは、何か物同士を交換するとか。
「はいはい、簡単ですよ。わたし、間違いませんから」
「じゃあ、行ってきて。二人分ね」
「りょーかいです」
わたしは人ごみを颯爽と駆け抜けました。誰にも当たらないわたし、完璧です。
「おっ、いつのまに。なんだ、串焼きを買うのか?」
串焼きのおじさんも、わたしの動きに驚いています。
「串焼き二つお願いします」
「はいよ」
焼き上がる鳥のいい匂いです。ソースの焦げるような匂いもいいですね。ああ、師匠、餓死してないかなぁ。わたしの料理がそろそろ恋しくなってないかなぁ。
「じゃあ、二つで、6セルトだ」
「はーい」
わたしは1セルト硬貨という5セルト硬貨で、ピッタシ払い終える。完璧です。
そしてーーーー。
「あれ、お嬢ちゃん??」
「買ってきましたよ、イタッ!」
「アリア、そんなスピードで動かない」
メリッサさんに、キセルで叩かれました。
これが、師匠の言う虐待というやつですね。危ないじゃないですか。わたしの防御魔法が間に合わなかったら大変ですよ。
でも、なんででしょう、つい、痛っと言ってしまうのは。当たる手前で防御しきっているのですが。
「え、でも、まだ全然ーー」
「いい、他の人は、そんなスピードで動いてないでしょう。都市ではゆっくり歩くのが作法なの」
不思議ですね、街というものは。
あえて、ゆっくり歩くなんて。
まあ、郷に行っては郷に従えと、師匠も言っていましたし、仕方ないですね。
わたしもゆっくりと優雅に動きます。
「でも、買い物は問題なさそうね」
「当然です。わたしは、人間計算機ですよ」
「はぁ」
なんでメリッサさんは、そこで呆れるの。なんだか、育てた人の顔が見たいって顔してます。
「それじゃ、服とか教科書とか揃えにいくよ」




