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タイムラグ

「それで……何してるのよ?」


「え?ダビング」


テレビの画面中央にはダビング時間がHPヒットポイントバーのように進捗状況を表示している。


「勉強してるんじゃないの?」

「うっ……」


姉のゆいに指摘されて、少し不愉快そうにムッとするウシくん。


「……うるさいなぁ……」


言うと何かしら飛んでくるのは分かっているけれど。思わず口にした言葉。案の定、今日はせんべいの袋が飛んできた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


なんだか、いつもと違いすぎる夏休み。ウシくんが中学3年生で来年受験を控えている事はもちろん。

いつも3人で遊んでいた暑い夏休みじゃない事。

家にこもって参考書を開いては、ため息をついてばかりの毎日だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ウシくんは、のっそり立ち上がってキッチンの冷蔵庫を開け、牛乳を紙パックごと飲もうとする。


「もう、コップにつぎなさいよ、コップに!」


「牛乳、俺しか飲まないやん」


「それは、そうだけど……」


口ごもる結の横で、ウシくんは牛乳をラッパ飲みする。ふと時計を見ると夕方6時をまわっている。


「母ちゃん遅いな」

「仕事、人手が足りないらしいのよ、何かどんどん人が辞めていって……」

「そう……」


相槌はうつものの、ウシくんの頭には何も残らない。


実は誰も居ない時間には、こっそりゲームもプレイしているけれど、無意識に手を動かしているだけで、ストーリーも条件も何も頭に入っていない。


本来。ゲームは楽しむもの。当たり前の事だと思うのだが、まるで、心、ここにあらずで早く時間が過ぎるようのを待つように手を動かしているだけにすぎない。


「2学期が始まったら何か変わるのかな……」


ため息まじりに小さく呟く。ダビングしたブルーレイは3本。中学1年生の時に3人で初めて観に行った、アニメ映画。

見終わった後にテンション高くキャラクターのモノマネをして遊んだ思い出の映画。何故かこの時期、地上波で放送されたのは……


「そっか……第二弾が映画化されるんだ……」


ウシくんは小さく笑った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……あれは夢だったのかな……?」


テレビ画面では毎日のように地震や戦争のニュースが流れてくる。

これがゲーム内の出来事なら、起こった背景や敵方の人物。思惑。などが情報として流れてくる。


けれど現実は……


突然それは起こって、突然何も関係無い一般市民が巻き込まれる。


ウシくんの頭には何も言わずに涙を流し消えて行った、アイラちゃんの姿が、ずっと張り付いている。

ひょっとしたら何かに巻き込まれて……もう……この世には……そんな想いがぐるぐると渦巻いている。


ーーー息をーーーする事を思い出して、フウッと息を吐くーーー


「考えてもしょうがないんだけどな……」

両手で顔を覆う

「何か……何か……方法はないんだろうか……」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『おいらを助けてくれて、ありがとうにゃ。マノヤさん♡』


「なんで、お前なんだよ、何かの陰謀か?」


『まぁまぁ。おいらが業務が忙しくない時以外は、ほとんどAIだから。』

「だったら、お前じゃなくてもいいんじゃないのか?ケットシー」


『まぁ、ちょっとワケありでサ……連絡とるのに便利なのさ……』


そう言うとケットシーは苦笑いをし、マノヤさんは苦虫を噛み潰したような顔になる。


「ちょっと聞いてもいいか?」


マノヤさんの問い掛けに、少しの間をおいて、ケットシーが答える。


『なんにゃ?』


「『戦争イベント』にtrue endトゥルーエンドってあるのか?」


ケットシーは一瞬驚いた顔をし、口元に手を合わせ少し考える。


『あると言えば……ある。にゃ……』


「マジか⁈」


マノヤさんは勢いこんでケットシーに詰め寄る。


『いまはマルチエンディングシナリオだから、何パターンかは、あるにはあるけど……』


『だけど……『真エンド』の可能性があるのは、1人だけだな……』


「1人……」


『モニターで『K』を助けて逃したフラグを立てた、ウシくんだけだな』








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