お友達ロボット
「なぁ。原野『夏イベント』始まっているの知ってる?」
「何?『レベリング』か?」
「そう。」
「お前まだ、ゲームなんかやってんの?」
ため息をつくように、原野は教科書の入った鞄を担ぎ、返事を返す。
「うん。自分で勉強して、予備テストを受けるみたいに『学園』の授業受けてる。」
ウシくんは原野の目をしっかり見て答える。
「へ……へぇ……」
ウシくんの態度に少し驚いて言葉を濁す。
「なぁ。一緒にやらないか?」
いつになく、ウシくんは真剣に原野を誘う。
「俺。忙しいから、これから塾だし。」
「そっか……」
「じゃあな。」
「またな。」
居心地が悪そうに教室を出てゆく原野。
手を振り、原野を見送ってから学校の鞄を手にとるウシくん。最近は2人の間に、以前のような挨拶程度の話し合いさえもなくなっていた。
「まぁ。しょうがないよな。」
そう呟くように言って、ウシくんも誰も居なくなった教室を後にするのだった。
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ーーーーーーキュウウゥゥゥ……ン……ーーーーーー
ゲームの起動音が鳴る。そして新しく『夏イベント』のアイコンが現れる。
ウシくんはそのアイコンには触れずに、第2サーバーへと、ログインした。
「ウシくーーーーん♪」
聞き覚えのある、トワさんの声がする。声のする方向を向くと、トワさんは居なくて、ドドドドドッ‼︎とこちらに向かって走ってくる、タヌキが1匹居た。
「見て見て。めちゃくちゃ可愛いでしょーーーー♪」
珍しくテンション高めの、妖精のトワさん。元気に、本当に嬉しそうに、タヌキの頭に乗っている。
両腕をしっかり伸ばして、傍目には寝転んでいるような体勢で、タヌキの耳につかまって振り落とされないようにしている。
タヌキの大きさは本物のタヌキより若干大きめだろうか、柔らかそうな毛皮が本物よりふわふわとしている。
「名前はねーー。『タヌちゃん』♪」
ーーーーーーそのままやん‼︎ーーーーーー
ウシくんは心の中でツッコミを入れた。
「これ『お友達ロボット』?イベントの?」
「うんっ♪」
ウシくんはタヌキと目線を合わせるように、目の前に座った。
トワさんを乗せたまま、タヌキは『キュ?』とまん丸な目をぱちくりしながら首を傾げた。
確かにかなり可愛い。
「このタヌキ。どうやって戦うの?」
「え?戦うの?」
「え?戦ってレベル上げないと、イベント出来ないやん。」
「そっか……一応『格闘家』になってたと思う。」
ーーーーーーかくとうかーー⁈ーーーーーー
「…………『タヌキパンチ』とか……って事?」
今度はウシくんが目をぱちくりしながらトワさんに尋ねた。
「そうそう。でもね。」
トワさんはふよふよと飛んで、今度はタヌキの頭にふんわりと座り直した。
「戦わなければ、レベルも上がらないし、イベントも始まらないんじゃないの?」
「え?」
「だって『秘密基地』とかクリアしてゆくの、めちゃくちゃ大変そうだもん。」
「そりゃそうだけど……」
ーーーーーーいいのか、それで?ーーーーーー
ーーーーーーてか、通用するのか?それーーーーーー
「うーーーーん……」
自問自答するウシくん。
「?」
頭を抱えるウシくんを不思議そうに見守るトワさん。
後日。マノヤさんに相談すると、やっぱりイベントをクリアしないと『お友達ロボット』は攫われたままになってしまうそうで。
放置するとそのまま『クエスト』に追加されるようになっているそうです。
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《番外編》
●ティアの場合
「うーーんーー『スライム』はやっぱ居ないんだ……」
●ソラさんの場合
「キャアァーーーー♡♡♡イケメンーーーー♡♡♡名前は『アーズ』ねーーーー嬉しーーーー♪」
●フイトスさんの場合
「『熊』『ピクシー』『虎』って言うのは、何故でしょう……」
●リヒトの場合
「やべ『スライム』出た……那奈に知れたら、ころされる……次。」
●マノヤさんの場合
「『ケットシー』?システムの不具合?何かの陰謀?3匹ともって言うのは、もはや嫌がらせとしか……」
《おまけ》
●原野の場合
「なんで『女子』が出ねーんだよーー‼︎」
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ーーーーーーさてと。俺は時間的に第1と第2と両方クリアは難しいから……それに今回クリアされなくても『クエスト』として規模は縮小されるけど『イベント』は残る。ってマノヤさんが言ってたから……ーーーーーー
そう頭の中で考えながら、ウシくんはゲームの電源を入れる。
「第1では『○○子』。第2では『○兎』が理想なんだけど……」
「トワさんが心配だから、第2サーバーで参加しようか……」
そう言いながら、現れた『夏イベント』のアイコンをクリックする。
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ーーーーーー貴方はいま貴方の夢の中です。白い霧の中を歩き頂上を目指して下さい。
途中で、3人の『お友達ロボット』に出会います。
貴方はそのうちの1人を選び、共に頂上へと登って下さい。
その1人は貴方にとって、かけがえのないパートナーとなるかも知れませんーーーーーー
オープニングムービーが終わると、いま見たムービーと同じ、真っ白な霧の中にウシくんは立っていた。
「さて、頂上。どっちだろう?」
キョロキョロと周りを見回してみる。と、うっすらと人影のようなものが見えた。
「あ。あっちかな?」
迷わず近づいて行ったウシくん。その目に思ってもみなかった人物の姿が映った。
その途端、動悸は激しくなり、息は苦しくなり、汗が吹き出る。
「アイラちゃん」
心よりも先に身体が動き、走り寄ったウシくんは、その人物を迷わず抱きしめていたのだった。




