春はあけぼの、夏はイベント?
「……えっと….『春はあけぼの……やうやう白くなりゆく山際……少し明かりて紫だちたる雲の細くたなびきたる……』を書いてみる……と……」
「そうそう♪」
「まず、『やまぎわ』と『むらさき』。『くも』の漢字がわからん….」
「えっ?『雲』はわかるでしょ?」
「えっと…雨かんむりで…なんだろ…うーーん……」
「………。」
「うーーん…」
「………。」
「うーーん…」
「………。」
「うーーん…うーーん…」
「………。」
「…ちょっとケータイ見てもいい?」
「あーー……」
ガクッとうなだれる、トワさん。頭をカキカキ、あはは。と苦笑いをするウシくん。
ーーーーーー携帯。ザッピングーーーーーー
「あ!トワさんっ!」
「なに?」
「これって高校生用の『古文』じゃない?」
「え?」
「試験対策用の問題。として載ってる。」
「え?ホント?ごめんなさい。私。この『春はあけぼの…』が好きで……」
「ええっーーーー……」
「ほら、春夏秋冬。季節の移り変わりと言うか……趣があると言うか……」
「トワさーーん」
「ホント、ごめんね。あと、『寿限無』も好きだったり……」
「じゅげむ?」
「落語なんだけどね」
「トワさんっ!」
「もうっ!いいよ自分でやるっ!」
ふんっ!と鼻息荒く、ウシくんは言う。
「ごめんねーー♪」
変わって、トワさんは、あんまり気にしていない様子。
ーーーーーー『国語』は楽しい。そう思ってくれたら、それだけでOK。あ。『古文』だったのは、私の完璧な思い違い。
ねぇ。ウシくん。夏は『ホタル』なんだよーーーーーー
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「工業高校?」
「うん。」
「なんで、また?」
「うん。はっきり言って、俺まだ、やりたい事とか見つかって無いから、工業高校なら、機械の資格とかいろいろ取れるし、その中で、やりたい事も見つかるかも知れないし」
「そっか…」
原野は一度言葉を飲み込むような仕草をして……
「ま。いいんじゃない。」
そう言って、フッと笑った。
原野とウシくん。2人はいま、おじいちゃん塾の帰り道。自転車を押しながら話しをする。
「俺は夏休みに入ったら、夏期講習を受けるんだけど…駅前の有名なヤツ…」
少し言いにくそうに、呟くように、原野はウシくんに告げる。
「おーー!」
同じく目を見ず前を向いて返す、ウシくん。
「俺は俺で、なんとか頑張ってみる。」
そう言って笑った。投げやりではなく、ちゃんと意欲は感じられる。
「…そうだな、ま。」
「「なんとか、なるっしょ‼︎」」
最後。2人の声がハモった。
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「『じゅげむ』って子供の名前だったのか……」
ネットで初めて聴いた落語の『寿限無』産まれた子供に幸せを願って名前を考える親。
「俺は、トワさんみたいに人の命は救えないけれど、誰かの役には立ちたいからな……」
「じゅげむ、じゅげむ、ごこうのすりきれ……」
ウシくんは知らず知らず、呟きながら、塾のおじいちゃん先生が勧めてくれた国語の参考書を買いに出かけるのだった。
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期末テストが始まった。中学生にはテスト休みはないけれど、それでも、テストが終わると、少しの解放感と、少しの疲労感ーーーーーー
ーーーーーー10日後には夏休みが始まるーーーーーー
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キラキラと光る噴水の水。音楽に合わせて高く高く噴き上がるーーーーーー
「ウシくん。お久しぶりです。元気だったーー?」
小さな妖精のトワさんがふよふよと、ウシくんの周りを飛び回る。ここはゲーム内。第2サーバー。
「うん。さっきまで、『あっち』に行ってたから。」
「あっち?」
「第1サーバー」
「え?あっちにも居るの?」
「うん。てか、あっちが先だから、こっちの『学園』には、しろっちもマノヤさんも居ないし……」
「友達なんだ。」
楽しそうにフフッと微笑むトワさん。
「いや、マノヤさんは先生で、しろっちは…なんて言うか…ナビ?」
「ナビ?」
「白い小さい、丸い……飛んでるヤツ」
「………?」
「……そういうのがいる」
「そうなの?イベントとかで手に入れたの?」
「イベントなんか?あれは……実装する前の……うーーん」
頭を抱えるウシくん。
「自分で『バグ』って言ってた。あ。でも最初は試作で……結局実装しなかったって言うか……そんな感じの……」
「………?」
「うーーん……」
「……ごめんね。よくわからない」
「うん。俺も。」
ーーーーーーーーーーウシくんがそんな会話をしていた頃。夏休みのイベント(1周年記念イベント)企画は着々と進んでいてーーーーーーーー
7月最後のある日。『お知らせ』のアイコンが現れました。
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『夏のイベント(1周年記念イベント)のお知らせ』
日に日に暑くなる今日この頃。皆様はどうお過ごしですか?
この夏を乗り切る元気なイベントを皆様にお贈りします。
その名も『お友達ロボット救出大作戦』
貴方の目の前にはAIが選んだ貴方だけの『お友達ロボット』が現れます。
(ロボット選択は3回まで)
その『お友達ロボット』に名前をつけて、レベル10まで育成して下さい。
やがて8月後半に『闇の組織』から『S』と言う魔法使いが、貴方の『お友達ロボット』を攫ってゆきます。
貴方はその『お友達ロボット』を助ける為。焔。水。雷。風。地。光。闇。のそれぞれの『秘密基地』を探しだし、そこでヒントを集め『お友達ロボット』を救出に向かって下さい。
上手く助けられたら、その『お友達ロボット』は貴方のかけがえのない『パートナー』として、今後のゲーム生活をサポートしてくれる事は間違いないでしょう。
さぁ。準備はいいですか?新たな冒険の扉をいざ開いて下さいね。




