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小さな光

ーーーー原野ーーーー


姿を見つけ心の中でそう叫んで、ハァハァと息を切らしながら、コンビニへと到着する。


「野崎から手紙って、なんで?」


「俺だってわかんないよ。でも、一緒に見よう。」


「うん。」


そう言って、2人は神妙な面持ちで手紙を見た。白いありきたりな縦型封筒。少し丁寧に上の封を開ける。中にはレポート用紙で手紙が一枚入っていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーー原野。牛原。元気ですか?ケータイがわけあって使えないので、手紙を書いています。

いま僕は母さんのいとこ。という方達のところでお世話になっています。

子供がいない。という事で引き取られたのですが、とてもいい人達です。

最初に家に入った時に、玄関に鯉のぼりがあって、夜も静かで、いろいろとびっくりしました。

住所は書こうかと思ったのですが、今回はやめときます。日本一大きな湖があるところです。


僕は元気です。2人にはしばらく会えないと思いますが、ずっと友達だと思っています。大人になったら会えるかもしれないので、その時はよろしくです。ありがとう。ーーーーーー







ーーーーーー野崎 宏輝こうきーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「日本一大きな湖って、どこだよ?」


「琵琶湖だろ。たぶん…」


「そっか。ここからだと1時間くらい?」


「そうかな…もうちょっとかかるかも….ともかく、よかった。」


「うん。よかった。」


本当にホッとした表情のウシくんを見て、原野は。


「ともかく座ろうぜ」


そう言って、コンビニの石段に思い出したように座ったのだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ーーーー原野はともかく、牛原は心配性だからな…….


野崎は新しく編入した学校の机で頬杖をついた。


ーーーー母さんの親戚の人は優しいけど、高校には行かないで働かなきゃな。学費だってバカにならないしーーーー


野崎の携帯は新しい家の机の引き出しに電源を切ったまま眠っている。

酒に酔った父親がひっきりなしに電話をかけてくるからだ。


ーーーーケータイ……いらない!湖に投げ捨てたい。なんて思ったなんて初めてだったなーーーー


もちろん本当に投げ捨てたりはしなかった。携帯には、なくなった母親とのライン。楽しかった原野や牛原とのラインが残っているからだ。


そのラインはもう二度と手に入らない思い出となるからだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


お通夜の席で、父親は酒で酔っ払っていた。さすがにいつものように怒鳴ったりはしなかったが、お葬式の途中でぶっ倒れた。


母親の遺骨を抱いて戻ってきたのは野崎だった。

その姿を見て、引き取る事を考えたと。

後に従姉妹のご夫婦は話してくれました。


ゲーム機は家にある。メモリーカードは一旦父親の実家に身を寄せていた頃に持ち出せたが。


夜になると父親が酔って実家で暴れるので何度も警察沙汰になった。施設に避難する。という案もでていた。



ーーーー何もかも…なくなったな…ーーーー



小さい頃に集めていたカード。母親が買ってくれたゲームやおもちゃ。ずっと買い続けていた漫画本。

大好きな野球のタオル。グローブ。バット。

気に入っていたマフラーやコップ。そしてアルバム。


取り戻したい。とは少し思うけれど、ここの新しい居場所の住所を知られると、また迷惑がかかる。


それだけは絶対に避けたい。


父親と縁を切りたい。


永久的に。






小さなお店で切手を買い、ポストへ原野宛ての手紙を送る。



ーーーーあ。マノヤさんへ「よろしく」って書くの忘れたな……まぁ、でも、原野の事だから大丈夫だろうーーーー


そう心の中で完結して、野崎は顔を上げる。空は青い。田舎の空は広い。木の緑は濃く大きい。建物は高くなく、川のせせらぎが聞こえる。




「よぉ。いま帰りかな?宏輝くん。」


ふいに声をかけられた。振り返ると、車に乗った、お世話になっている母親の従姉妹の………


「あ。はい。今、帰りです。あの…おじさん。」


「そっか、乗ってゆくかい?」


「あ。はい。」


そんなぎこちない会話の後、野崎はおじさんの車に乗る。


「知り合いに連絡を受けて、ちょいと下見に行ってきたんだ。」

「…………?」

「宏輝くんはホタルって見た事あるかい?」


「ホタル⁈」


「そう。ホタル。大阪じゃなかなか見れないだろう?」

「はい。見た事ないです。」

「そっか、そっか、良かった、喜んでくれた。」


そう言って、おじさんは顔を綻ばせる。



ーーーーホタルかぁーーーーすごいなぁーーーー原野達、驚くかなぁーーーー


ひとしきり感心して、野崎は夜。長く封印していた携帯を握りしめて、ホタルを撮りに行くのだけれど、残念ながら、小さく小さく光るホタルは、確かにそこに飛んでいるのだけど、全然写ってなかったりするのでした。







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