マノヤさんの講義
とりあえず、ウシくんは学園内のお試し機能を使って
『Eー6』のマノヤさんの『戦争イベントについての講義』を聴講しにきた。
教室に入ると、しばらくして、マノヤさんがドアを開け、教壇へとたった。
「すごっ!時間ぴったり!」
思わず声をあげるウシくん。
『違います。『追っかけ講義』ですよ。』
「へっ?」
『だから、御主人様に合わせて講義を開始する機能です。』
「へーーすごいなぁ……」
感心するウシくん。
『まぁ。ライブじゃないので、質問とかは出来ないんですけれどね。』
ちょっと得意気にしろっちが答える。
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ーーーー『皆さん。初めまして。この学園で臨時講師をさせていただく、今は商人。昔は賢者のマノヤです。
こちらでは、このゲームの最終イベント『戦争イベント』の概要だけを皆さんにお伝えしようと思っています。
だが……
しかし……
僕がクリアした去年と違い、今年からはAIを使ったマルチエンディングが採用されているので、ひょっとしたら、1部分…まさかと思いますが、大部分が変更されている可能性もなきにしもあらず、ここでの講義が全く役に立たない情報となるかも知れません。
それを理解していただいた上で、この講義を受けていただきたいのですが、よろしいですか?皆さん。』ーーーー
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『はーーい。』『了解でーーす。』『理解しましたーー』
バラバラと返答が返ってくる中。
「わかりました!よろしくお願いします!」
人一倍、気合いの入った返答をやや緊張気味に発するウシくんがいたのだった。
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ーーーー『では準備は出来ているようなので、講義を始めます。』ーーーー
マノヤさんは少し緊張しているみたいに、コホン!と一つせきをした。
ーーーー『ここから先。北の塔から翼竜を倒し、既に『ソルト大陸』へと渡っている方もいるとは思いますが、『ソルト大陸』を全部回った方はいますか?』ーーーー
そうマノヤさんの質問に生徒達は顔を見合わせる。
と。
1人の生徒が、『はい。』と手を挙げた。
ーーーー『おっ!いましたか。王国はいくつありましたか?』ーーーー
『4つです。』
ーーーー『そうですか、惜しいです。実は『ソルト大陸』の王国は5つなんです。』ーーーー
『えっ?』
手を挙げた生徒は驚く。
ーーーー『中央地区に『幻のヘルン王国』を入れて、5つになります。』ーーーー
そう言うと、マノヤさんは教壇の前の機械を少し操作した。
前面の大きなホワイトボードに映像が映しだされる。
映像は『ソルト大陸』の地図だった。
ーーーー『北に『ブロッカー王国』
東に『ブルーレジン王国』
西に『ギアゴルド王国』
そして南は皆さんがよく知っている『リインブルク王国』があります。
そうして詳しくは話せませんが、4つの国の、NPCの語り部から話しを聞くと『ヘルン王国』へと続く扉を開けるヒントを貰えます。
ここで注意しなければならない事は、扉をいったん開けてしまうと、未来に飛ばされ『戦争イベント』を解決するまでは、現在に戻れない事です。
もちろんイベントはソロですし、その間はずっと『未来のソルト大陸』から動けない事になります。
そして、戦争を終結させたら、次は過去に戻り『過去のソルト大陸』で戦争に発展させないように、原因となるイベントをクリアして、本当の終結となります。
イベント完全終了と同時に、現在のレベル90。『カンスト』となって終了です。』ーーーー
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「………ひぇ」
ウシくんは小さく小さく呟いた。
『御主人様?』
しろっちがそれに気付く。
「俺……ソロとか……絶対ムリだわ……」
そこには、しみじみと呟くウシくんがいたのだった。
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ーーーー『皆さん、ご存知の通り、ゲーム内容としては割と定番な部分もありますが、この『戦争イベント』のボスキャラ = 王様。は操られたボスキャラとなります。
『洗脳』されて『怒り』だけを増幅された、感情を無くしたボスです。
真のボスで世界を操っていたのは『ジョーカー』という。
こちらも定番ですが、追い詰めても最終的には逃げられてしまいます。
操られた王様は操っている『ジョーカー』の『怒り』のみを引き継いでいるので、ともかく強いです。
少しネタばらしすると『戦争』を最初に始めたのは、西の王国『ギアゴルド王国』です。使うは雷。
はい。なので、少しばかり雷の対策を考えておくと良いかも知れません。
ーーーージョーカーの狙いは『リインブルク王国の滅亡』です。
なので、実は最初に操ろうと思って取り入ったのは、中央地区の現在では、幻になってしまっている『ヘルン王国』なのですが…………』ーーーーーーーーーー
「………スゥ…」
『………御主人様?』
「………にゅにゅにゅ……ぐーー……」
『……寝落ちですね……続きは録画しておきますね。』
はぁ……とため息をつき、呆れたように左右に揺れ、しろっちはそう言ったのだった。
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それから何日か経ったある日の事。
「はぁーーーー疲れたーーーー」
意味も無く、そう言って、ウシくんは学校の鞄を玄関に、ドサッ‼︎と置いた。
と。突然。
ーーーーブウーーンーーーー
ポケットの携帯のバイブレーターが。
「とわっ⁈」
びっくりして振動を続ける画面を見ると、そこには『原野』の文字。
そのまま受け取り、耳へとあてる。
「珍しいじゃん、いつもはラ……」
『手紙が来た‼︎』
「え⁈」
『野崎から手紙が来たんだよ!今!帰ったら!』
「え⁈行く?」
『いつものコンビニな!』
「うん」
モタモタと電話を切り携帯を握りしめて家の鍵をかけ、そのまま走ってゆく。
ーーーー手紙ーーーーなんで手紙なんだろうーーーーラインはーーーー繋がっているのにーーーーグループあるのにーーーーなんでだろうーーーーあ。俺。見てもいいのかな?原野の手紙なのにーーーーけどーーーー元気だったらそれでいいんだけどーーーーーー
いろいろな、さまざまな、想いが浮かんでは消えて、ウシくんは、昔、いつも、3人で集まっていたコンビニへと、走って行ったのだった。




