クリスマスイベント4
「期末……しんだ。」
ガックリと机に沈み込むウシくん。
「俺も今回ヤバイかも。」
ウシくんの机の前に立ち、カクッと空を仰ぐ原野。
「ヤマ。外れたもんねーー」
同じくため息をつく野崎。
「まぁ。あれだ。終わったモンは仕方ない。切り替え!切り替え!」
腕をぶんぶんと回し、空気を変えようとする原野。
「なんで、テストってあるんだろうなぁ……」
ありきたりな疑問を口にするウシくん。
「うん。それはだなぁ……」
原野がいつになく真面目に答える。2人が注目する。
「父さんが言ってたんだけど、大人になっても、嫌な事や辛い事は沢山ある。それに負ける事なくチャレンジする精神力と忍耐力をだな……」
腕を組み一見力説しているように見える原野。
「………って!止めろよ。」
「え?」
「そんな案件?」
「そんな案件。」
真面目にうなづく原野に、苦笑いの野崎。
遅れて「なーーんだ。」と笑うウシくん。
のどかな風景がそこにはあったのだった。
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「回収すんだか?」
「うん。済んだ。きっちり500。」
原野の問いに、こっくりうなづくウシくん。静かに微笑む野崎。
「んじゃ。行ってきまーーす!」
「おう!」
「頑張れーー」
敬礼をする、ウシくんのキャラクターに2人のキャラクターが手を振る。
ここはレベリングライフ。ゲームの中のクリスマスイベント。
ウシくんは光の王子の最終バトルイベントへと向かう。
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『わぁ!本当に500匹集めてくれたんだね。ありがとう!これで、スノウキッズを魔法使いさんに返したら、魔法世界の食べ物で元の1匹に戻せるよ!』
満面の笑顔の光の王子アーズ。
と、そこへ。
『アーズ……』
後ろから聞き覚えのある小さな声。振り向くと、そこには闇の姫フィンにしっかりと両手で掴まれた黒い小さな猫。ケット・シーの姿が……
『なっ!なんでっ⁈』
焦りまくるアーズ。
『なーーにが『なっ!なんでっ⁈』よ。2人して何をコソコソしてるのよ。』
『あ。いや。あの。その……』
依然しどろもどろのアーズ。ズンズンと詰め寄るフィン。
『はっきり言いなさいよっ‼︎』
腰に両手で、眉間にシワ。ようやく逃れたケット・シーはやれやれ。と言う感じでフワリと宙に浮く。
どうしたってフィンの追求からは逃れられない。そんな状況の中。
ふと、気がつくと、真っ黒い人の姿のような巨大な影がゆっくりと大地を包んでゆく。
気がついた3人がゆっくりと顔を上げ、見上げると……
そこには巨大なビルかと思うほどの大きな大きな、ジャンボスノウマンの姿があった。
『オラの子供達をさらったのはオメエらか?』
エコーのかかったゆっくりとした口調。どこか昔に聞いたような声だったが、ウシくんには思い出せない。
『ち、違うよ!さらってなんかないよ!』
アーズが慌てて弁明する。
『じゃあ、そのカゴに入っているのは何だ?オラの子供達じゃないのか?』
大きな大きな手が頭上に影を落とす。
と。ここで。
突然イベント画面表示に切り替わる。
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イベントバトル
『ジャンボ スノウマンを倒せ!』
このイベントでは、アーズ。フィン。ケット・シー。の3人のうちの1人と一緒に戦います。誰と戦いますか?
パートナーを下の画面で選択して下さい。
【アーズ】
前衛→彩雲の剣
後衛→光の杖
【フィン】
前衛→闇のレイピア
後衛→漆黒の杖
【ケット・シー】
前衛→なし。
後衛→時間の魔法
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「え?マジで?ってか、ケット・シー戦えるの?」
『ケット・シーは一番頼りになりません。』
「え⁈」
いつかどこかで聞いた声。声の主は白く小さく光る丸い玉。
ウシくんの目の前をスッ。と通り過ぎる。
「しろっち⁈」
『はい。ちょっとバグで現れてしまいました。』
「バグ……」
ウシくんは少しキョトンとして。
「よっし!じゃあ、俺のパートナーはケット・シー‼︎」
そう言って、ケット・シーのアイコンを選んだのだった。
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ーーーーーーゴゴゴゴゴ………ーーーーーー
そんな感じの音を残して、ジャンボ スノウマンの大きな手が、アーズとフィンの2人をつまみ上げた。
『わぁーーーーっ‼︎‼︎』
『ちょっと‼︎何するのよ‼︎離しなさいよ‼︎』
つまみ上げられた2人は大騒ぎ。
『やめるにゃ‼︎離すにゃ‼︎』
ケット・シーはなんとか2人を助けようとジャンボ スノウマンの指に張り付いている。
『あっ⁈』
その瞬間。アーズが持っていた『スノウキッズ』の入った籠が、ヒューーーン。と音を立てて落ちてくる。
「おっと。」
ウシくんのプレイキャラが、その籠を受け止める。
『そうか、そういうつもりなら、オラも容赦はしねえ。』
エコーのかかったジャンボ スノウマンの声が低く重く響いたのだった。
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ーーーーーー戦闘開始ーーーーーー
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『ともかく2人を助けるにゃーー!』
ケット・シーの言葉に「うん。」とうなづいて、ウシくは、カチャッ!と風の精霊の剣を持ち直し。
「回転斬‼︎」
と叫び、ジャンボ スノウマンに突っ込んで行った。
ーーーーーードッコン‼︎ドッコン‼︎ドッコン‼︎ーーーーーー
ジャンボの攻撃。大きな両手を組んで、回りながら大地を叩きつける直接攻撃。
ウシくんと、ケット・シーはその動きに合わせて、後ろに回り込み剣を振るう。
雪だるまの体を斬るのは、縦斬りより、横斬りの方が効果があるように思えた。
ケット・シーは宙に浮きながら、回復魔法や戦闘効果魔法をウシくんにかけ続けていた。
一定間隔をおいて、その動作を繰り返していたジャンボが、いきなり組んだ両手を空へと上げた。
「ん?」
途端。パアッと魔法陣のような呪文の書かれた光が上空に広がる。
『ヤバイです、ご主人様‼︎』
しろっちが告げる。
と。
『時間凍結‼︎』
間一髪で両手を上に。ケット・シーが魔法を発動した。
鋭く尖った無数の氷の槍が光りながら空中でぴったり止まった。
「すごいじゃん‼︎ケット・シー‼︎」
思わず駆け寄るウシくん。
『えへへ。それほどでもないにゃ。この魔法、3秒しか持たないしにゃ。』
頭をカキカキ。微妙に照れるケット・シー。
「え?」
点目になるウシくん。
そして。その後ろでいままさに3秒たった魔法が切れ。妖しく光り輝く氷の槍は物凄い音を立てて、大地に突き刺さったのだった。




