クリスマスイベント2
ーーーーーーゲームの世界では、クリスマス真っ盛り。
キラキラと光るイルミネーションの中。たくさんのプレイヤーがゲームを楽しんでいた。
ここはソルト大陸。リインブルク城のお膝元。アップ横丁。
お店の人々に悪さをするスノウキッズ達。そこへ、キラッ!と十字に光るイベントポイント。
ーーーーーークリックすると……
『キュ?キュキュキュ?』
スノウキッズ達を捕まえるイベントが始まる。
『キューー‼︎』
ウシくんを見ると、一斉にピョンピョンと逃げ出すスノウキッズ。
「あ。こら!」
網を持って走るウシくん。
だけど……
「はやっ。これムリ。」
走りながら早々に網を諦め、剣に持ち変え
「回転斬‼︎」
横切りの剣から焔の塊と火の粉が紅く舞う。
けれど……
『キューー♪キュキュキュ♪』
焔の剣だと、水・氷系のスノウキッズにほとんどダメージを与えられずに、スノウキッズ達は楽しそうに逃げてゆく。
「こんのぉーーーー‼︎」
『キュ♪キュキュキュ♪』
「待てーーーー‼︎」
ウシくんは果てしなく逃げるスノウキッズ達を追いかけてゆくのだった。
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「……ようやく100匹かぁ〜」
ウシくんはアイテムチェックをする。あれから風の剣に持ち替えて、やっとスノウキッズを捕まえ始めたウシくん。
「情報だと、100匹でスノウマンキャンディ。200匹でスノウマンクッキーかぁ……ひょっとして300匹だとスノウマンケーキとかかな?」
ぶつぶつと一人呟くウシくん。その背後に一人のプレイヤーが立って手を振っている。
「ん?」
見ると、白の長髪、赤のメイド服に軽装アーマーを着た細身の女の子プレイヤーがそこに立っていた。
背中には大きな斧を携えている。
「誰だっけ?」
ウシくんは記憶を辿りながら、プレイヤーネームを見てびっくりする。
「セツエイ⁈原野かっ⁈」
「あったりーー‼︎」
にやにやと笑いながら、くるくると踊り始める。
「どうしたんだよ、それ?」
「さっき300匹集めると『キャラ変の券』くれるのな。どうどう?やっぱり、可愛いは正義だよな。」
「ワケわかめ」
「自分のキャラだから、自分の胸を揉むのもアリで♪」
「は?」
そう言うと、キャラクターがポヨンポヨン。と、胸を上に上げる動作を繰り返す。
「やめれ……」
ウシくんは目を逸らし、手で顔を隠す。
「せっかくだから、SS撮らせろよ。」
「SS?」
「スクリーンショット。ツ○ッターで『メンテの日だからSSをあげる』って知らんのか?」
「は?」
「スマホと連動して写真が撮れる。」
「……知らない。てか、そもそもツ○ッターやってない。」
「化石」
「ほっとけ。」
そうして、楽しそうにSSを撮る、原野を座りこんで頬杖をつき、ただ呆れかえるウシくんだった。
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「300匹捕まえるとキャラクターを変えれる券かぁ……」
ウシくんは頭の中で色々なキャラクターを想像してみる。
けれど頭をよぎるのは、大好きな炭○郎ほか、いつか、どこかで見た事のあるキャラクターばかりだった。
「うん。どうしてもアニメのキャラクターしか浮かんでこないや……かと言って自分に似せるのはイヤだし……」
そう言うと、現実で短くスポーツ刈りの自分の頭をポン!と触った。
「あ!ウシくん!元気〜?」
ウシくんが歩いていると、元気良くぶんぶんと手を振る見た事のあるプレイヤーが。
「あ。ソラさん!……と……リヒトさん?」
軽く駆け寄りながら、ウシくんが返事をする。ソラさんはよく知ってるけれど、リヒトには結婚式の時に少し顔を合わせたくらいだった。
「ね。あれ。見せてあげてよ、あれ。」
ソラさんが何やらリヒトに催促する。
「うん。」
リヒトはウィンドウを出して見せてくれた、それは……
「わ……ランプ?なんかすごい……」
「うん。これは『ランタンリューのランタン』だよ。すごくない?リヒトくんが金色のスノウキッズを捕獲したら持ってたんだって‼︎めちゃめちゃ綺麗でしょー」
「うん‼︎」
それは真ん中で小さな炎がゆらゆらと揺れる、エキゾチックでアンティークな細工のされた小さなランタンだった。
女の子はもちろん。キャンプや一人部屋に置いたら、そのほのかな揺れる優しい光は癒しの空間になる事に間違いなかった。
ーーーーーーアイラちゃんにプレゼントしたいなーーーーーー
ウシくんはこっそり心の中で呟いた。
「やっぱりプレゼントしようか?」
リヒトが困ったように声をかける。
「ううん!さっきも言ったけど、自分で捕まえなきゃ意味がないんだよ!」
力を込めて、ソラさんは力説する。
「じゃあ。イベント終わっても見つからなかったらプレゼントする。で、いい?」
「ううん。だから、それじゃ意味がないの!お揃いにしたいんだから!」
「お揃い……///」
何故かリヒトの顔が赤くなる。
「えっ?」
つられて、ソラさんの顔も赤く染まって……
ウシくんはそぉっとその場から離れたのだった。
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ーーーーーー少し戻って金曜日ーーーーーー
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「余計な事をするな‼︎」
ーーーーーーガッシャーーン‼︎‼︎ーーーーーー
父さんはいつものように酔っ払って大声で喚き散らす。暴れた事も、喚き散らした事も酔っ払ってたから覚えてない。は、許されない。
僕が少しでも言葉を発すると、最低2時間は説教を始める。
僕は確信している。
母さんが倒れたのは間違いなく、父さんのせいだ。
お酒を吞まない父さんは本当に優しい人だ。
だけど、お酒を呑んだ途端、父さんは豹変する。
だから、僕は早く働きに出て、母さんを助けるんだ。
僕の考えている事は間違っているかもしれない。
けれど、何度すべてを否定されようとも
『母さんを助けたい』
という気持ちに変わりはないのだと。
小学生の時に父さんの話しをしたら、誰も信じてくれなかった。
それどころか『嘘つき』呼ばわりされてクラスメイト全員にシカトされた。友達もなくした。
中学に上がって、原野と知り合った。
牛原もついてきていて友達になってくれた。
二人は僕の話しを聞いてくれる。父さんの話しはした事はないけれど、二人は僕の話す事を嫌がらずに聞いてくれる。
信じられなかった。
僕は本当に嬉しかった。本当に二人には感謝しているんだよ。
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ーーーーーー土曜日ーーーーーー
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「よっ!野崎!」
「え?……原野?」
「チビダルマ300匹集めると『キャラ変の券』くれるんだぜ。どう?どう?結構カワイイだろ?」
原野は赤のメイド服に女の子用の鎧をつけて、くるっ。と回って見せた。
僕はもう、おかしくて、おかしくて、しばらく笑いが止まらなかった。
はい。ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。
今回、期間があいてしまったのは、身の周りにいろいろありまして、ちょっと心に余裕がなかったからです。
感染ウィルス……皆さまも本当に気をつけてください。
ではでは、よろしくお願いします。




