クリスマスイベント
『お願いだよ!逃げ出した『スノウキッズ』を君も一緒に探して捕まえてくれないか?』
ゲーム画面上で、10歳のアーズ王子がプレイヤーに語りかける。
ウィンドゥには『クリスマスイベント』の内容が表示されている。
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スノウキッズにはそれぞれの色のリボンネクタイが付いていて、色によって魔法が違う。
ピンク(焔)
青(水)
黄(雷)
緑(風)
オレンジ(地)
同じ色のスノウキッズを10匹ずつ捕まえて、それぞれの星のバッジの報酬を貰う。
100匹ごとに、それぞれアイテム報酬があって。
500匹集めたら最終バトルにチャレンジできる。
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〔イベントに参加する〕〔参加しない〕
2つのアイコンが表示されている。
「もちろん参加!」
ウシくんは勢いよく参加アイコンを押す。
『ありがとう!では『鳥籠』と『網』を渡すから、頑張って『スノウキッズ』を捕まえてね!
あ。そうそう。同じ色のスノウキッズを10匹捕まえて僕に話し掛けてくれると『星のバッジ』と交換するよ!
もちろん10匹ごとじゃなく、まとめて沢山も大歓迎だよ!』
そう言って、アーズは嬉しそうに手を振り、イベント説明Vは終わったのだった。
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「ホントにもうっ!ログインするだけで、200人待ちとか、あり得ないからっ!」
はじまりの町。噴水の前。握り拳のソラさんが居た。
クリスマスイベントの始まったゲーム世界。赤と緑のツリー。白と青のリボンとイルミネーション。
すっかり町はクリスマス一色になっていた。
「あれ?」
前を歩くプレイヤーに何故か見覚えがある。思わずプレイヤーネームを確認する。
「あ!リヒトくん!」
びっくりしたせいで、素っ頓狂な大声になる。
「ん?」
振り向く人物。
「あ。ソラさん?」
「う、うん。久しぶり、元気?」
しどろもどろのソラさん。
「うん。こないだ結婚式で会ったじゃん。」
少し笑って答えるリヒト。ゲーム世界だから、そんな事はないのだけど、少し大人っぽく見える。
「……そっか…『モニター』してたから時間感覚が……」
左手を口に、ゴニョゴニョと呟くソラさん。
「大丈夫?疲れてる?」
覗き込むようにリヒトが近づく。
「だっ!大丈夫!ともかく、いろいろあって!///」
慌てふためくソラさん。
「そう?とりあえず、ハロウィンの時も凄かったけど、クリスマスも凄いね。」
リヒトはそう言って、賑やかに彩られた街を見回した。
「ホントにね。」
ソラさんもつられて街を見回す。
「ソラさんのバイトの方はどうなの?」
リヒトの素朴な質問。
「うん?いまは掛け持ちで……4つくらいかな?」
「ええっ⁈それって大丈夫⁈」
驚くリヒト。
「まぁ、ほとんどレジばっかだし、それぞれ時間短いし……大丈夫って言えば、大丈夫かな?」
けろっと答えるソラさん。
「はーーーーっ……すごいな……俺、たった一軒で死にそうなんだけど……」
「そうなの?」
「覚える事多くて失敗ばっか、先輩にしょっちゅう足蹴られてる。」
「ええっ⁈それってイジメなんじゃ‼︎」
「いや、失敗してるの俺だから。」
「でもっ!」
「いや、長靴だし、提供する料理にも影響無いし。」
「そういう事じゃなくて……」
リヒトとソラさんはそんな風に近況を話し、とめどもなく話しを続けていたのだった。
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ーーーーーーーー(一方)ーーーーーーーー
「あ!マノヤさんーーーー‼︎」
ブンブンと元気良く手を振り駆けてくるウシくん。
「おつかれーー」
こちらも手を振る。
「マノヤさん!凄いね!クリスマスだねっ‼︎」
街のイルミネーションにすっかりテンションの上がったウシくんは本当に楽しそうに話し掛ける。
「そうだね。」
マノヤはそんなウシくんに本当の先生のように穏やかに接する。
「マノヤさんは、もう何匹くらい捕まえたんですか?」
ウシくんの素直な質問。
「あーーーー……えーーと……」
ワクワクした顔のウシくんに、少し後ろめたい顔をしてマノヤは答える。
「……すまない、実は一度クリアしてしまって……」
「はやっ‼︎」
あっけにとられるウシくん。
「実は今日、日付け変わってから、ずっとプレイしてて……結局寝てなかったり……」
「ふげっ」
「これから資料をまとめて……」
「寝て下さい‼︎」
「うっ……」
「そんなんじゃ倒れちゃいますよ。ちゃんと寝た方がいいと思います。」
真面目に正論をとなえるウシくん。
「……2〜3日寝なくても大丈夫なんだけどな……」
反論するように小さな小さな声で呟くマノヤ。
「寝て下さい‼︎」
ガンとして譲らないウシくん。
「はいはい、わかりましたーー」
そう言うと、しょんぼりして手を振り、マノヤはログアウトしていった。
「よし!」
ウシくんはひとりうなづいて……「あ!」と気がつく。
「しまったぁーー‼︎‼︎イベント内容ポイント聞いとけばよかったーーーーーー‼︎‼︎」
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ここはソルト大陸。城下町。クリスマスに彩られた賑やかな街。
そこに混じって、あちこちで街の人々の悲鳴や驚きの声。物が落ちる音などが聞こえる。
ふいに降ってくる紙吹雪やわからない水のような物。食べ散らかした果物のカケラ。飾られたモールにぶら下がりターザンの真似をするスノウキッズ達。
屋台に集団で座り込み、飲み食いし大騒ぎをする。本当にやりたい放題な状態だった。
そこに、キラッ‼︎と光るポイントを見つけるプレイヤー。
ポイントをクリックすると、スノウキッズを捕まえる小さなイベントが始まる。
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『キュ?キュキュキュ?』
プレイヤーを見つけると一斉に逃げ出すスノウキッズ。
それを追いかけて、タイミングよく網を振り下ろす。
成功したらゲットとなる。
けれど、ピョンピョンと跳びながら右へ左へと予測不能な動きをするスノウキッズ達。
網を振り下ろす多くのプレイヤーが苦戦する中。
「大地の波動‼︎‼︎」
ドコン‼︎‼︎と斧を大地に突き刺し、水の波紋のような透明の空気と大地が震える。
技を受けたスノウキッズはバタバタと目を回して倒れてゆく。その数30匹はいるだろうか?
「ふん!」
原野は肩にその大きな斧を半円を描くように担ぎ、ドヤ顔で鼻で息をしたのだった。




