いろいろな想い
ーーーーーーーーキュウウゥゥゥ……ンーーーーーー
いつものようにゲーム機を立ち上げる。と、そこには
『クリスマスイベントのご案内』のアイコンと一通のメールが届いていたのだった。
『クリスマスイベント』に関しては、来週金曜日から開始される。という事と、イベント前日にメンテナンスがあり、約5時間ほどゲームにログイン出来なくなる事のお知らせだった。
メールの方はゲーム運営会社からという名目だったが、その文章は、ケット・シーが書いたそのものだった。
『拝啓。昨日はお疲れ様だったにゃーー。
突然にゃんだが、ちょっと予想外の事が起きて来週土曜日の
『第3章 寮イベント』は延期になっちゃったのにゃ。
調整が終わり次第、またお知らせメールを飛ばすので、それまで待っててほしいのにゃ!
ではでは、それまで『クリスマスイベント』を楽しんでくれにゃ!またにゃーー!』
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「クリスマスイベントかぁーー本当のクリスマスまでは、まだ、かなり間があるのに……」
ウシくんはそう言ってログイン場所をとりあえず『学園』に設定したのだった。
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「……『K・K』は『ジョーカー』の右腕だった魔法使いだよ。」
ここは学園内の準備室。何やらデーターを打ちながら、マノヤが答える。
「そうなんですね。牛原は『用具室』が断崖絶壁の崖のある場所に繋がっていたから、そこから逃がした。って言っていました。」
野崎が説明をする。
「そうか、もしかしたら、そこが『世界戦争』の舞台と繋がっていたのかも知れないな。」
マノヤはそう言って、空中に広げていた資料をパラパラと纏めた。
ーーーーーートントントン!ーーーーーー
準備室の扉がノックされる。
「どうぞ。開いているよ。」
マノヤが答える。
「失礼します。」
扉を開けて入ってきたのはウシくん。
「あれっ?野崎?」
「やぁ。」
「大丈夫なのか?」
「うん。」
「そっか。」
ウシくんはそう言いながら、野崎の横の丸椅子に座る。
マノヤもゆっくりと机の前の椅子に座る。
「ウシくん。昨日はお疲れ様。」
「?」
「ちょうどいま昨日のイベントの話しをしていたから。」
と、野崎が補足する。
「そっか……」
ウシくんは小さく返事をする。
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『えっ?それは、どういう事にゃ?』
「うん。アイラちゃんも大丈夫みたいだし、もう、いいかな?って。」
『何かあったのかにゃ?』
「えっと……理由……言わなきゃダメ?」
『出来れば……』
「えっと……NPCの、Eってキャラが面倒くさくって……」
アイラちゃんが目覚めた後、呼び止められたケット・シーはティアと話しをしていた。
だけど、ティアはそれ以降は口ごもるように曖昧な返事をするだけになってしまい、ケット・シーは疑問を抱いたまま、ティアの言う『モニター解除』という意向をのむ事となった。
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「先輩ーーティアちゃんがモニター降りる。って言ってきましたーーーー」
「え?」
「なんか原因はNPCのEにあるそうなので、ビデオ検索してみましたーーーー」
「……?」
「そうしたら、本当に面倒くさい質問をしている事が判明しましたーーーー」
「その言い方は?」
「流しますねーーーー」
そう言って、ケット・シーはVを流す。
ここはレべリングライフを管理している総合事務所のひとつ。
Vの中で、Eは矢継ぎ早にティアに質問をしている。
『人はどうして、たった1人の愛する人の為に国を滅ぼすのか?』
『人は自分が好きな人が少し異性と話しをしただけで、その異性を殺すのか?』
『人は自分が愛している人が、自分を愛さないから。と言って、その人を追いかけ回して殺すのか?』
などなど……
「確かにこれは面倒くさいな……」
明らかに顔に影が落ちる。
「でしょーーーーしかも最後の方はティアちゃんに交際を強要していますーーーー」
「はぁ?」
「ティアちゃんは速攻ワープして逃げてますーーーー」
「……。」
「なので『第3章 寮イベント』ティアちゃんの離脱を認めたいと思いますーーーー」
「了解。」
ーーーーーーーーしばらくの間ーーーーーーーー
「「はぁ……」」
2人のため息が大きくハモったのだった。
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「俺さぁ……言いたい事、全然言えてなかったのに、なんで、アイラちゃん戻って来てくれたんだろう?」
ウシくんは腕を組み、首をかしげる。
「「さあ?」」
学園の準備室で、マノヤと野崎も2人して首をかしげる。
「それは本人に聞いてみるしか、ないと思うが……」
マノヤの助言。
「僕もそう思うよ。」
と。野崎。
「それが出来ないから聞いてるのにーーーー」
ふてくされるウシくん。
「なんで出来ないのさ?」
「恥ずかしいからっ‼︎///」
ウシくんは大声で叫んでごまかしたのだった。
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ーーーーーーーーソラさんの島の浜辺ーーーーーーーー
「おつかれーーーー」
「あ。カワウソさんだーーーー」
「なんか久しぶりだね?」
「うん。『モニター』やってたからね。」
「モニター……」
「『学園』の先行イベント。」
そう言いながら、ティアは釣り竿を振って、海に入れ直す。
カワウソさんは、そんなティアの横に座る。と、座り直したティアの膝から、1匹のスライムが顔を出す。
「スライム……」
「うん。西の湿地帯で見つけた。」
「そう。」
「名前は、しーちゃん。」
「スライム好きなんだ。」
「うん好き。なんか癒されるーーーー」
ティアはスライムを優しく撫でながら続ける。
「喋ってくれたら、もっといいんだけどね……」
「うん?」
「『ボクは悪いスライムじゃないよ。』とか。」
「ぷっ!」
そこには平和に笑い転げるカワウソさんの姿があった。
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ーーーーーー空から降ってきた、お兄ちゃんの声ーーーーーー
初めて会った時は声はなくて文字だけだった。次に会った時は可愛い男の子の声だった。その声を聞いていると何故か嬉しくて安心した。
それから翼竜退治の時はもの凄く力強くて、カッコ良かった。
こことは少しだけ違うゲームの世界で空から降ってきた、お兄ちゃんの声。
ーーーーーー「アイラちゃん……」ーーーーーー
名前を呼ばれて、ドキッ!とした。私はお兄ちゃんの事が好きなんだ。と真剣にわかった。
途端なにもかも飛んでいって、一緒に居たい。と思ってしまった。
お兄ちゃんなら一緒に笑ってくれるかも知れない。って思った。
お兄ちゃんの声が好き。お兄ちゃんと一緒に居たい。そう思ったから『学園』の元の世界に戻るアイコンを押した。
今日、お兄ちゃんに会ったら『私の島』に招待して、そして……
『大好き』を伝えようと思う。ずっと一緒に笑ってくれると嬉しいな。
私の事も『大好き』になってくれると嬉しいな。
お兄ちゃんの慌てる声も、笑っている声も、優しい声も、全部、全部、大好きだから。
一緒に居たいです。
はい。ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。
次からは『クリスマスイベント』に移ります。
更新は更に遅くなると思います。
気長に待って頂くと嬉しいです。
ではでは、これからもよろしくお願い致します。
m(__)m




