学園イベント終了
「ただいまっ‼︎」
ーーーーーーーーバタン‼︎ーーーーーーーー
勢いよく学園の保健室のドアを開けるウシくん。びっくりして、Gやベッドの上のF達、NPCがこちらを見る。全員目が覚めたようだった。
「アイラちゃんは?」
ウシくんは一番奥のベッドに目をやる。
『それが、まだ……』
Mがすまなそうに答える。
「うん。」
ウシくんが、やっぱり。という感じでベッドに近づく。後ろから、原野達みんなが集まる。
そこへ、ツィーッ……と、ケット・シーが飛んでくる。
『お疲れ様なのにゃーー最初に話しをするのはウシくんでいいのかにゃ?』
「うっ?」
隣に飛んできたケット・シーにウシくんは驚く。
「あ……うーーんーーと。時間を少し下さい!」
勢いよく、ぺこっ!と頭を下げる。
『わかったにゃーー』
ーーーーーーーー少しの時間ーーーーーーーー
『はい。』
手を挙げる人物が現れた。
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ーーーーーー『とっとと死ねばいいのに』ーーーーーー
その言葉を投げつけるのは同じクラスだった女の子。その子が居るだけで、息が詰まり、胸が苦しくなって痛くて辛い。その子が居ないと、ホッとする。
女の子のお友達はみんな、その子とお友達。だから、もう誰も私に話し掛けてなんかくれない。
学校は辛い。だから行きたくない。最初から覚悟を決めて行くしかない。だって、パパには言えないし、ママには心配かけたくない。
毎日、毎日が何が起こるかわからなくて、泣きそうになっていた。
ーーーーーーこれは前の学校の記憶。いまはそんなに嫌われてはいないけど……私の顔を見るだけで嫌な顔をして立ち去る女の子はやっぱり居る。ーーーーーー
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ーーーーーーねぇ…私は何をしたの?そんなに嫌われるような事をしたの?私には何もわからない。どこに何が嫌われるのかがわからない。時々思い出して……辛くなるーーーーーー
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ーーーーーーひとりで帰る帰り道。いきなり後ろから大きな手で押し倒された。何をされたか、何が起こったのかわからない。気がつくと警察の所で、ママが大泣きをして、パパが怒鳴っている。怖くて怖くて怖かった。ーーーーーー
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しばらくは学校に行かなくてよくなった。それから、もうしばらくして、引っ越しをした。
引っ越しは私のせい。それは何となくわかった。
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片付けが少し終わった頃にパパがゲームに誘ってくれた。説明をしてくれるパパは優しかった。
ゲームの世界では誰も知っている人は居なかった。ここでなら、笑っても、睨まれたりしなかった。
少しずつ、少しずつ、学校にも行けるようになっていた。
学校にも、ゲームの中でもお友達が出来た。
でも。
ゲームの学校に……
前の学校と同じ……あの子が居た。
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ゲームのアカウントを消そうと思った。
だけど……消去のアイコンの前で止まってしまった。
友達になってくれた、みんなの顔が浮かんだ。
消してしまうと、もう二度とみんなに会えないかも知れない。と思った。
気がついたら長い間、その画面のまま泣いてしまっていた。
その時。
『どうしたのかにゃ?』
猫ちゃんが話し掛けてくれた。
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『土曜日。みんなが『学園イベント』をクリアしたら、みんなと話しが出来るよ。だから土曜日はログインしていてほしいにゃーー』
猫ちゃんのお願いポーズ。だから土曜日は2つ目の世界にログインをした。
ここは前の世界と一緒だけど、一緒じゃない。
人は少なくて……ゲームの空は青くて高くて、そして建物が大きい。
不思議な世界。
でも。ここには、みんなが居ない……
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『アイラちゃん。こんにちは。お待たせしました。いま、お話ししてもいいかにゃ?』
「猫ちゃん?」
空から、猫ちゃんの声だけが降ってくる。思わず空を見上げる。
『学園イベントは終わったよ。いまから、みんなとお話し出来るけど、いいかにゃ?』
「うん。」
私は小さくうなづいた。
ーーーーーー『アイラちゃん。大丈夫?』ーーーーーー
それは空から降ってくる声。不思議な感じ。
『私、Fです。』
ビクッと体が震える。それは何でだかわからない。
『ごめんなさい。アイラちゃんには、ストーリーの目撃者になってもらう為に、あんなシーンを見せてしまって本当にごめんなさい。
私の事を心配して泣いてくれたのは本当にびっくりしました。だけど私は大丈夫なのよ。
私は最初に『嫌われる勇気』を教えてもらっていたから。』
「………。」
『『嫌われる勇気』ってね、10人の人が居たら、そのうちの1人はあなたを批判する。そして10人のうちの2人はあなたを好きで、残りの7人はどちらでもない人々。というお話しです。』
「………。」
『アイラちゃん。好きな人は居る?』
「……ママとパパ。」
『じゃあ、その2人はアイラちゃんを好きよ。どちらでもない7人の中の1人だけど、私もアイラちゃんの事が好きよ。他のみんなもそう。』
「……え?」
『みんな、アイラちゃんの事が好きで帰って来てほしい。って思っているわ。』
「……本当?」
『本当よ。これからの長い人生。また『10人の中の1人』は現れるかも知れない。どちらでもない7人は敵になるかも知れない。でも、味方になる可能性もある。
それはゲームやネットの中でも現実の世界でも一緒。だけど……』
「………。」
『負けないで。大好きな人の為に、苦しんでいる事を伝えて。1人で抱え込まないで。あなたの事が大好きだから!』
「……うっ……うっ……うっ」
アイラちゃんはどうしようもなく涙を流し……
「うん。」
と、小さくうなづいた。
『帰って来てくれる?』
Fの問いかけ。アイラちゃんはそれには答えず小さく泣き続ける。
「はい。」
ウシくんが手をあげる。
『じゃあ。次はウシくんだにゃーー』
ケット・シーが伝える。
「うん。」
ウシくんはうなづいて。眠っているこっちの世界のアイラちゃんに話しかける。
「アイラちゃん。俺がこのゲームを始めて、初めて会ったのはティアさんとアイラちゃんだったよ。
2人は楽しそうに俺のレベル上げに付き合ってくれた。俺も楽しくて、嬉しかった。だから、
はっきり言うと君がこっちのゲーム世界に戻って来てくれないと、かなりモチベが下がると思う。」
ーーーーーーおいおい…ーーーーーー
ほぼ全員のツッコミが入った。
「でも、君がこっちの世界に居るのが辛いなら、それは仕方ないと思う。」
ーーーーーーあれっ?ーーーーーー
ほぼ全員のハテナ。
「でも。これは覚えていてほしい。たとえ二度と会えなくなっても……」
「こら!牛原!」
「ちょっとちょっと!」
「ストップ!ストップ!」
「なに、帰って来ない前提で話してるのよ!」
ほぼ同時に全員の「待った」がかかる。
「え?」
キョトンとしているウシくん。
「………う…ふ…ふ…」
ベッドの上で笑っているアイラちゃん。
「……え?」
「アイラちゃん⁈」
「よかった!」
「おかえり!」
「あれっ?」
点目のウシくん。
「うん。やっぱり、みんな居る方が楽しそうです。」
アイラちゃんはベッドに座って小さな声で恥ずかしそうに呟くように伝える。
「あっ!」
ウシくんの表情がとたん嬉しそうになる。
「やったーー‼︎‼︎」
そうして、ウシくんは思わずその場で思いっきり飛び跳ねるのだった。
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みんなの喧騒の中。ケット・シーはそうっと静かにその場から立ち去ろうとしていた。
そこへ。
「猫ちゃん。」
ティアが涙を拭き、すっきりした様子で呼び止めたのだった。




