学園イベント3
「牛原。ここは、コイツの言う通り一旦休憩とろうぜ。」
「わかった。」
ここは学園の屋上へと続く階段への途中。苦笑いするケット・シーを指さし原野がウシくんを促す。
ホログラムの少女は扉をすり抜けて屋上へと逃げ込んでしまったが、扉には鍵がかかっていて、ウシくん達は追いかける事が出来なかった。
次に進むには扉の鍵を見つけないとならないのだ。
いつも能天気でマイペースなウシくんだが、いまは何かに駆り立てられるように口数少なく黙々と目の前の敵に剣を振るっていた。
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相談の結果。約一時間半の休憩をとって、ゲームの再開を決めたのだが、ウシくんはログアウトせずに、そのまま学園内を探索していた。
ひとしきり、地図を確認して立ち上がろうとした、その時、長時間の緊張により体がよろけた。
「熱いよね。」
「う?」
現実でいつの間にか隣に姉の結がいた。
それを見ながら、ウシくんはドサッ‼︎としりもちをついた。
「あれ?」
「声掛けたの全然気付いてないでしょ?」
未だ、現実とゲーム世界の狭間にいるようなウシくんは、スープとパンを食べながら話し掛ける結を不思議な目でぼんやり見ていた。
「ほい。」
手でちぎったバターパンを口に放り込まれるウシくん。徐々に、現実感が戻ってくる。
「お昼食べるでしょ?」
そう言って結は立ち上がり台所へと移動する。
「うん。」
流れで返事をするウシくんは、噛み締めるとじわっと広がるバターの味に暖かい有り難さを感じていた。
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「オンラインゲームって大変だね。ま。私はパズルゲームしか出来ないんだけど。」
「俺だって格闘系ばっかりだったし。RPGはこれが初めてだし。」
温かい甘めのカップスープを口に運ぶウシくん。
「で。いまは何をしているの?」
「『鍵』を探してる。屋上の鍵。」
ほとんどの、NPCがスリープ状態で転がっている廊下をウシくんは進む。
「教室入れないの?」
「うん。何故か入れない。部室には入れたんだけど……」
「あ!そう言えばサ!購買部ないの?購買部!」
結が思い出したように聞く。
「そんなのあったかなぁ……」
そう言いながら学園のマップを取り出す。すると小さく『購買部』の文字が……
「あった……」
意外そうな声を出すウシくん。
「ホント?行ってみて!行ってみて!」
テンション高めの結。小さなドアを開けると……
『いらっしゃい!』
小さなエルフの女の子がレジに居た。
「へーーっ……」
見て回ると、商品は『回復系ポーション』がメインで中には超貴重な『蘇生ポーション』もあったが……
「高っ‼︎」
と、ウシくんが叫ぶくらい高かった。
「えっと『屋上の鍵』ってありますか?」
ウシくんはストレートに聞いてみる。すると。
『ありますよーー!』
と、エルフの女の子は小さな箱を出してきた。
「えっ⁈」
驚くウシくん。
「マジか⁈」
同じくログインしたままだった、原野の声だけが飛んでくる。
『はい。でも、この鍵は一度使うと消えてしまう借り物の鍵ですよーー』
そう言って女の子はにっこり笑った。
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「とりあえず、3つ買ってはきたけど……」
ウシくんは購買部から保健室のある北校舎へと戻ってきた。ケット・シーが次のイベント再開は『保健室』から。と、言っていたのと、なんとなくアイラちゃんが心配だったからだ。
と。
扉に手を掛けると……
『なんだとおぉ‼︎』
中から、Gの大声が聞こえてきた。
ーーーーーーーーバタン‼︎‼︎ーーーーーーーー
「何がっ‼︎‼︎」
慌てて扉を開けるウシくん。と。そこには襟首を掴み、ケンカ態勢の、GとMが居た。
2人共、凄い音を立てて扉を開けたウシくんを見て、固まっていた。
「あれっ?」
しばらくの沈黙が流れる。
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「それで一体何があったのさ?」
落ち着いてからウシくんが尋ねる。
『うん。実は、Mの奴も、Fの事が好きなんだとよ。』
「うん。」
あっさりうなづくウシくん。
『……なんで驚かないのサ?』
「いや、見てたら分かるし。」
手を振るウシくん。点目の、G。
『マジか……』
頭を抱える。
『あはは……』
苦笑いの、M。そして、ここで扉が開き、原野達全員が帰って来て、学園イベントの続きが始まったのだった。
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ーーーーーー第2章 学園イベント再開ーーーーーー
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『みんなが集まったので、話しておきたい事がある。』
Gが口を開いた。
『これは、アイツの過去の話しだから、関係ないと思っていたんだが、こんな事になって、ひょっとしたらこの事件は、アイツの生まれた環境も影響しているのかも知れない。と、俺は思い始めている。
ーーーーーー実はアイツが生まれたのは戦争をしている、ある国で、本当の両親も殺され、赤ん坊だったアイツを育てたのは、その国にいた医師の夫婦だった。と俺はきいている。
毎日、毎日、目の前で沢山の人の死を見てきたそうだ。
『苦しい。』
『助けてくれ。』
『早く殺してくれ。』
などと、訴える人々。そしてその医師の夫婦がかなりブラックな受け答えをしていたらしい。』
「「「……。」」」
『『とっとと死ねば良かったのに。』それが、そのご夫婦の口癖だったそうだ。
それを毎日毎日、日常的に聞いていたアイツは、アイツ自身もブラックな言葉を日常的に使うようになったんだと。』
「「「………。」」」
『少しブラックを取り込んで、人の悪口を言うアイツは、その言い方が面白い。と、たちまち学園の人気者になった。
ところが、ある日、アイツは、Mに恋をした。』
『は?』
驚く、M。
『それから、少しずつアイツの中で何かが変わっていったんだな……それが何かはわからないけれど……』
ここで、Gは息をつぎ。
『そして最悪な方へといま転がって行っちまったみたいだ。』
そう言って、みんなを見回したのだった。




