学園イベント
「回復魔法かけます!」
ティアが人混みをかき分け、姿勢を崩したまま手を前に。アイラちゃんと、Fの2人に回復魔法をかける。
キラキラキラッと光が舞い散る……しかし2人は目を覚まさない。
「もう一度!」
「僕も手伝います!」
遅れて到着した、野崎も一緒に魔法をかける。
けれど画面表示で2人のHPは、1のまま、仮死状態。
「なんで?どうしてなのよ、これ!」
ソラさんが困惑して呟く。
「じゃあ、こっちで……リレイズ‼︎」
ティアが今度は蘇生魔法をかける。
けれどやっぱりHPは1のまま目を覚まさない。
「えっと…落ち着こう…『学園イベント』は始まっている。あのレーザーみたいな光を出した犯人を捕まえるまでは、アイラちゃん達は目を覚まさない。って事?」
ソラさんが頭を抱える。
「通常、HP1でも動けるはずだから……やっぱりイベントに巻き込まれていると思います。」
野崎の呟き。
「俺…犯人わかったかも……」
仁王立ちで、これまで口を閉ざしていた、原野が口を開く。
と、同時に。
『キャアアアアァーーッ‼︎』
人混みの中で悲鳴が響く。
『え?何?』
『なに?』
NPCが道を開けたその場所に倒れていたのは、音楽クラブの背の高い女の子Lだった。
慌てて駆け寄る4人。
「だめっ!やっぱり目を覚まさない!」
Lに回復魔法と蘇生魔法をかけた、ティアが呟く。
そこに2つの影が近づく。
「とりあえず、3人を保健室に運ぼうか……」
ゆっくりとした特徴のある声。Lをそっと抱き上げる。
マノヤが5人の前に現れた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここは学園の保健室。マノヤがLを、アルト先生が、Fを抱きかかえ、プラノ先生が誘導する。
ウシくんがアイラちゃんをベッドの上にそっと下ろす。
「マノヤさん。犯人はKなんでしょ?」
原野が少し詰め寄るように言い放つ。
「僕はイベントには関与出来ないんだ。出来るのは情報を提供するくらいだよ。」
「じゃあ情報を下さい。」
ウシくんが言い放つ。
「うん。」
「アイラちゃんはいま、どうなっているんですか?」
「うん。それについては心配しなくていいよ。いまは第2サーバー世界にいるよ。」
「え?」
「第2サーバー?」
「うん。このレベリングライフのゲーム世界内のプレイヤー人数が増えて来たので、ハロウィンの後、拡張工事をしたんだけど、やっぱり収まりきれなかったので急遽データを移し同じく第2サーバーを作り、ハロウィン以降のプレイヤーはそちらにログインするように設定されているんだよ。
アイラちゃんはイベントの都合上。いまは第2サーバーにログインしてもらっているんだよ。」
「えっと…じゃあ…犯人を捕まえたら、アイラちゃんは戻って来られる。って事?」
と、ソラさんが問いかける。
「うん。それなんだが……どうだろう?アイラちゃん自身がこちらに帰りたがらなくて……」
「「「えっ?」」」
「どうして⁈」
声を荒げるウシくん。
「さぁ……学園イベントをクリアして、アイラちゃんと直接話して理由を聞いてみるしかないと思うよ。」
マノヤは少し優しく、ウシくんにそう伝えたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「犯人、絶対、Kだって‼︎」
原野がそう力説する。結局のところ、マノヤさんは犯人に関しては教えてくれなかったのだった。
「そのKって、どんな奴なの?」
ソラさんが聞く。
「女!イケメンに媚びうってた。Lは親友みたいだったのに、親友まで撃つなんてタチが悪い‼︎」
「恋愛重視タイプか……フィンと一緒……」
「そうなのか?」
「たぶん……」
と、そこへ、バタバタバタバタと足音が近づき、保健室のドアが乱暴に開けられる。
ーーーーーーーーバターーン‼︎‼︎ーーーーーーーー
『『Fが倒れたって⁈』』
現れたのは音楽クラブの2人。副部長のMとG。
「イケメン登場……」
原野は誰にも聞こえないように小さな小さな声で呟いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「俺は犯人は、Kだと思うけれど、あんたらはどう思う?」
原野は、MとGに問いかける。
『まさか、そんな事は……』
そう言いながら、口籠る副部長。
『まあな……ちょっとやり過ぎだよな。』
腕を組み、考える様子の、G。
『彼女はみんなの人気者で、いつも冗談ばっかり……あ!』
『なんだ?はっきり言えよ。』
『……そう言えば…彼女は『その場に居ない人物の悪口』を面白おかしく話して、みんなの笑いをとっているけれど……それを、みんなは全部、冗談だと思っているけれど……』
『本当は本気の悪口も混ざっているかも知れない。って事だよな。』
と、G。
『………。』
少しの沈黙………
「俺がサ……腹が立つのは奴が本当に犯人なら『親友』さえも撃ってる事だ。」
原野は拳を強く握る。
『彼女が本当に犯人なのかな?』
副部長、Mの呟き。
「他に心当たりがあるの?」
ソラさんが聞く。
『……ない。』
Mは押し殺すように呟く。
「少しいいですか?」
野崎が口を開く。
「彼女は男子寮に来る事はあるんですか?」
「「「あっ!」」」
みんなの声が揃う。そう。『謎の声』表示は男子寮で始まったのだった。
『よく…来る。最初の爆発騒ぎがあった時も、相談がある。とかで、僕の部屋に来ていた。』
Mは頭を抱えこむ。と、そこへ。
ーーーーーーーーコンコン…ーーーーーーーー
保健室をノックする人物が……一瞬凍りつき、原野が無言でみんなに合図をし、扉を開けた。
『副部長いますか?』
そこには、何故か冷たく機械的に話す女の子が立っていた。
『N……』
Mが呟くように問いかける。
『そう言えば君は…Fの……』
『私と一緒に来てくれますか?』
「どこに連れて行く気だ?」
原野と、Gが両手を広げ、話しを中断する。
『邪魔をするなら排除します。』
そう言って、Nは右手を前に、その腕を銃の姿に変えた。
全員戦闘態勢になる。
『君はFと友達だったはずだろう!』
Mが叫ぶ。
『記憶がありません。』
Nは冷たく言い放つ。
と、ここで戦闘音楽が鳴り響き。イベント画面表示が出る。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーNを倒せーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
全員が驚愕する中。一つの影が走る。
ーーーーーーーーズダーーン‼︎‼︎ーーーーーーーー
動いたのは、ウシくん。Nの銃となった右腕をとり、そのまま引き倒し、床へと体ごと叩きつける。
そのまま押さえ込みを続けるウシくん。
しばらくの間を置いて、みんなが見たウシくんは……
涙を堪え、歯を食いしばり、小刻みに震える姿だった。




