始まる?寮イベント
ーーーーーー日曜日ーーーーーー
「ヒット!」
原野が両手を横に上げて、ヒットコールをする。
「そうか、そうやるのか…」
ここは原野のお父さんが連れて来てくれた、小さなサバイバルゲーム場。
いまいち説明を聞いても、わからないウシくんが原野や原野のお父さんの行動を見ながら様子を伺っている。
もちろんゴーグルも空気銃も全部レンタル。
「とりあえず当たったら『ヒット』だな。」
体を隠しているドラム缶からフラッグを確認して、次の鉄柱へと、息をのんで、心の中で、せーの!で移動する…
と。
パンパンパン!
ウシくんにあっけなくBB弾が当たる。
「ヒットー」
両手を上げて申告する。
「バッカじゃん。撃ちながら移動しなきゃ。」
原野が楽しそうにそう言う。
「あ。そっか。忘れてた。……でもさ…実際はゲームみたいに体が動かないのな。結構当たると痛いし…」
そう言いながら原野の隣に座る。『出口』には定点カメラの映像がいくつか映し出されている。
「そっか…」
そこには原野のお父さんと、もう1人の友達らしき人が2人でエアガンを撃っている。
と。
合図を送りあって両側へと、パッと移動する。
「カッコいいなーー原野の父さん!」
「だろーー!」
ウシくんの呟きに、原野はドヤ顔で答えたのだった。
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ーーーーーー月曜日ーーーーーー
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「原野は父さんを本当に尊敬してるんだなぁ…」
呟くウシくん。
「うん?ウシくんはどうなんだい?」
ウィンドウを操作しながら、マノヤが聞く。
ここは『レベリングライフ』のゲーム内。建設中になっている学園の準備室。
「俺、父さんの記憶ないんだ。3歳の時に亡くなってて。」
「そうか…それは辛い事を思い出させてしまって、すまない。」
「ううん…覚えてないから、いいんだ。だから、マノヤさんみたいな人だといいな。」
「この歳で息子を持つとは…」
「マノヤさんだと、無茶を言って困らせるのが楽しそうで。」
「おい。」
「…マノヤさんのお父さんって、どんな人なんですか?」
「僕の?…僕の親父は…仕事人間…かな?」
「『親父』!なんかカッコイイですね!」
「うん?」
「俺の親父、マノヤさん!」
「ちょっと待て!」
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ーーーーーー火曜日ーーーーーー
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「あれ?自転車の場所変わってる?」
ウシくんが塾に行く為に団地の自転車置き場から自転車を出そうとしていると、同じ団地のおばさんが声をかけてきた。
「よかったねぇ。△△さん家引っ越して。」
「えっ?」
「あたしゃ見たんだよ。△△さん家のお兄ちゃんが、あんたの自転車に、こう、ブスッ!とパンクさせているところをね。」
「えっ‼︎」
「なんだろうね。受験のイライラかねぇ…」
「…知らなかったです。」
「ありゃ。あんたのお母さんには言ってたんだがねぇ…こりゃ悪い事を言ったかねぇ…」
そう言いながら、おばさんは自分の自転車を出して行ってしまった。
隣の階段の△△さん家は、男の子ばっかりたくさんの兄弟がいた。
お母さんはいい人で、よくウシくんのお母さんと団地掃除の時に話しをしていた。
思い当たる出来事といえば、たまたま自転車置き場で一番上のお兄さんと会った時。
「こんにちは。」
と、ウシくんが挨拶した時だ。突然怒って…
「人が疲れているのに挨拶してくんな‼︎」
そう言って睨み付けてきた事があった。
ウシくんは「すみませんー」そう言って走り去ったのだが……
「なんだかなぁ……」
自転車を押し、△△さん家を見上げる。ちょっとした間違いや行き違いでその場所に居られなくなる。
そういう出来事は胸が痛くなる。
カーテンがない。その部屋は黒くぽっかりと人の居なくなった窓がまるで大きな口をあけているように見えるのだった。
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ーーーーーー土曜日ーーーーーー
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『これで、みんな揃ったかにゃ?』
ケット・シーが楽しそうにそう言う。ここはゲーム内。学園の休憩室。
ウシくん。原野。野崎。ソラさん。ティア。アイラちゃん。の6名。
『これから職員室に向かうにゃ。寮長のホルンさんの姿がある時に担任の先生に話しかけると『寮イベント』始まりなのにゃ!』
楽しそうにケット・シーが言う言葉を6人は真剣に聞いていた。
前々からわかってはいた事だけど『新イベント』と聞くと、やっぱり気持ちは浮き立ち、ワクワク、ドキドキしてしまうのだ。
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担任の先生
男の先生→アルト先生
女の先生→プラノ先生
寮長→ホルン寮長
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『おかえり。新入学生諸君。各クラブの部長にチラシは渡し終わったようだね。ありがとう。ようやく寮長のホルンさんが来てくれたよ。』
担任のアルト先生がそう言う。
『こんにちは。ホルンです。今日はなんだかメチャメチャ忙しくてお待たせしてしまって、ごめんなさいねーーーーーー』
ちょっと丸い体型の人懐っこそうな女の人。汗を拭きふき6人に話し掛ける。
『みんなの寮は、この校舎から少し離れた場所にあるから、このワープゾーンで行きますよーーーーーー』
そう言って、職員室の角にあるワープゾーンを手のひらで示す。
ーーーーーーいや。ワープで行くんかよ!ーーーーーー
ウシくん達は心の中でツッコミを入れた。それを知ってか知らずか、ホルンさんは。
『いまはワープだけど、行く方法は変わるかも知れませんからーーーーーー』
そう言って、ウシくん達6人をワープゾーンへとぎゅうぎゅうと押し込んだのだった。
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『はい。ではこれを。『寮の地図』です。』
そう言って、ホルンさんはみんなに地図を渡す。
『ここは寮の中庭。真ん中の二階建ての建物は、一階が食堂で、二階は談話室。それぞれの寮に戻る渡り廊下があります。それで、右の建物が男子寮。左の建物が女子寮。五階建てでだいたい同じ構造になっていますーーーーーー』
ホルンさんの説明を聞いて、みんなで建物を見上げる。少し古びたヨーロッパ調の建物。見方によっては、どこかの駅のようにも見える。
6人がワープしてきた場所は中庭の真ん中。やっぱり丸い小さな噴水の周りだった。
と、
「?」
ケット・シーが静かに紛れ込んでいる。
「何してんの?」
ウシくんが普通にケット・シーに話し掛ける。
「しーーー……にゃ。おいらは『参加プレイヤー』の目線の映像を撮ってるにゃーー』
そう口元に手を。小さな声で説明する。
「そうなんだ!頑張って!」
ウシくんは
「大変だなぁーー」
と、付け加えて笑って拳をつくる。
『ウシくん…いいヤツだにゃーー』
そう、ケット・シーが呟いた途端。
ピカッ!と中庭が白く光り、次の瞬間。
ーーーーーードッカーーン‼︎‼︎ーーーーーー
右の建物。男子寮の五階辺りの部屋が爆風と共に吹っ飛んだのだった。




