お使いクエスト
ここはゲーム内『レベリング学園(仮)』の校舎の廊下。
ケット・シーに先導されて、ウシくんは廊下を歩いている。
「本当にお城の中みたいだなぁ…」
キョロキョロと周りを見回しながら呟く。
『よっしゃー!ここが職員室なのにゃ!新入学生くんは『男の先生』『女の先生』どちらの担任がいいのかにゃ?』
ケット・シーが職員室の入り口に手をかけ問い掛ける。
「男の先生!」
ウシくんは即決で答える。
『了解にゃ!担任の先生は『アルト先生』学園での最初の『クエスト』行ってくるにゃーー‼︎』
ケット・シーがそう言うと職員室の扉が開き。
ザアッーーーーと中へと入ってゆく。
見た目に体育の先生のような、アルト先生が座ったまま手を挙げているのが見える。
黄色いフォントマークが上でくるくる回っている。
キチンと並べられた机をぬって近づくと、先生は『ニカッ‼︎』と歯を見せ。
『ようこそ!新入学生!』
そう言って笑った。
『まずは疲れているだろうから、寮へ案内したいんだが、寮長がなんせバタバタしてるもんでな。しばらく学校内を探索してから、またこの職員室へ戻ってきてほしいんだ。あ。そうそう学園を探索するには、これが必要だよな。』
そう言って先生は机の上をガサゴソ。
『あった。あった。』
ーーーーーーピコーーーーン‼︎ーーーーーー
『学園の地図を手に入れました。そのまま学園日誌に添付します。』
白い球の使い魔がウシくんの周りを飛びながら解説する。
「おーーー」
『それと、これだ‼︎』
先生が、ドン‼︎と大量の紙の束をウシくんに持たせる。
「これは?」
『頼まれていた印刷物だ‼︎各クラブを回って、それぞれの紹介ポスターをそれぞれの部長に渡して行ってくれ。では頼んだぞ‼︎』
アルト先生はニカッ‼︎と歯を見せ笑って手を振った。
ここでVは終わり、ウシくんは大量の紙の束を抱えたまま職員室を出たのだった。
「ふうん…学校なんだ…」
「姉ちゃん⁈」
のんびりとした口調で姉の結がいつの間にか後ろに立っていて、ウシくんは心底びっくりしたのだった。
「い…いつから…そこにっ⁈」
「何もそんな慌てなくても大丈夫よ。もう、すぐ、出るから。」
そう言いながら学校の鞄の中をチェックして、ハンカチなどを小さめバッグに移し替えている。
「バイト?」
「そっ。ん、じゃあ行ってくるねーー」
そう言って、バタン!と戸を閉めて行ってしまった。
今日は月曜日。昨日に引き続き、ソフトは監督のギックリ腰でお休み。
「そう言えば、原野とかログインしてるんだろうか?」
結が行ってしまったのを確認して、ウィンドウを開く。
どうやら原野とティア。ソラさんは学園にログインしているみたいだった。
「チャットはできるのかな?」
調べてみると学園内では『休憩室』『校庭』『自習室』でのみチャットOK,
教室は準備中。調整中が多かったが、ゲーム内の学園なので、国語、算数、理科、社会。とかではなく。
必須科目は
『戦闘学科』
『薬学学科』
『モンスター学科』
と、3種類。
他に『鍛治学科』とかもあるらしい。
それぞれ自由に時間割を組めるようだが単位を50ポイント取らないと卒業出来ない事となっている。
卒業しても、そのまま学園に所属は出来るけれど、寮からは出なくてはならない。
「えっと…渡しに行くクラブは…『釣りクラブ』『カードクラブ』『音楽クラブ』『映像クラブ』の4つだな…早く片付けて、原野たちに会いに行こう!」
ウシくんはそう言うと一番近い『釣りクラブ』へと足を運ぶ。
ちなみに、クラブは人数が揃えば設立可能。部室などの詳細は調整中だ。
「ここだな。」
ウシくんはノックをしてドアを開ける。部室の中は壁一面に魚の大きなポスターが貼られ、真ん中に置かれた会議机二台は魚関連の本が無造作に積み上げられている。
部員は3人。いづれもNPCのようだった。そのうちの部長のような人物が…
『やあ。新入学生。君は『海釣り』『川釣り』『池釣り』どれがお好みかな?』
日に焼けた顔で明るく問い掛けてくる。画面には3つの選択肢が表示されている。
「海釣りかな?」
ポチッとアイコンをクリックする。
『そうか!『海釣り』か!海はいいよなーー壮大で無限の可能性がある。『ブラックバス・オーガ』や『シーラカンカンス』なんか大きさに夢がある!うんうん。
ところで我が『釣りクラブ』に入ってみないか?』
部長がそう言うと、画面に『入部』『断る』『保留』と表示が出る。
「とりあえず『保留』で。」
アイコンをクリック。
『そうかーまた気がむいたら来てくれよなっ!あ。ポスターを受け取ろう。』
そう言ってクエストの4分の1が終わった。
「これ。結構時間くうんじゃ?」
ウシくんが呟く。
『基本所要時間は40分となっています。』
丸い白い球の使い魔がウシくんの周りを回りながら機械音で答える。
「そっか…うん…なんて言ったら…」
ウシくんは白い使い魔を目で追いながら考える。
「うん。しろっち。しろっち。って呼んでいいかな?」
『しろっち。名前ですか?』
「うん。君の名前。」
『了解しました。名前、しろっち。登録しました。』
「うん。ありがとう。しろっち。」
『こちらこそ、ありがとうございます。』
そう言って嬉しそうに、しろっち。はウシくんの目の前でお辞儀をした。ように見えた。
「さて。時間あんまりないから休憩室に……」
ウシくんは廊下に誰もいないので、ダッシュを使い、白い風を一直線に残す。
この時点で既に5時半。晩御飯の時間まで、あと30分。パートに行っていた母親も帰って来ていて、もう、あんまり時間は残されていない。
「休憩室って言うんだから、セーブ出来るといいんだけど…」
廊下でセーブは出来なかった。まだ学園内が調整中だからだと思うのだが、セーブが出来ないと、初めっからやり直しで、それはやっぱり困るのだ。
「着いた!」
休憩室の扉を開ける。そこは引き戸でガラガラッと音がする。中には…
「原野!」
「よっ!」
机が並ぶ休憩室の窓側の一角。見覚えのある、原野とティア。ソラさんの姿があった。
「よかったーー」
ウシくんは机をぬって、3人に近づく。
「おつかれーー」
「こんにちは。」
ソラさんとティアが声をかける。
「おつかい終わったかーー?」
「まだ1つ目。」
原野の質問に苦笑いでウシくんが答える。
「俺は『カードクラブ』に入ったぜ。カード化したモンスターでデュエルが出来る。モンスター立体化でカッコイイからな‼︎」
テンション高めで原野が誘う。
「牛原も入れよ、クラブはいくつ入ってもいいらしいからな‼︎」
力強く、力説する原野。ウシくんはポカンと
「そうなんだ、俺、4つの中から1つ選ぶのかな?って思ってた。」
そう答えた。
「私たちは2人とも『音楽クラブ』に入ったよ。マイクでカラオケが出来るし、作曲も出来るし。まぁ私は作曲とか出来ないけどね。3か月に1回くらいの割合で、各部で大会があるらしいよ。」
ソラさんが丁寧に解説してくれる。
「すごいなぁ…みんな…そんな情報どこから…」
「え?しろ太郎が。」
「しろちゃんが…」
「ゆきちゃんが…」
「………。」
それぞれ、おのおの飛び回る白い使い魔に名前を付けていたらしいのだった。




