ウェディングイベント計画
「うん。ちょっと今、スマホで調べてみたんだけど…この『レベリングライフ』にも『ウェディングイベント』って、あるみたいだね。もう受付は済ませてあるの?」
「えっ⁈」
マノヤが淡々と聞いた言葉に、ソラさんは驚く。
「ウェディングイベントがあるなんて思ってもいなかった…です…」
「そうか…僕もいま初めて知ったくらいだからね。」
「おおおぉ……」
ウシくんは興味深々で2人の話しを聞いている。
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『結婚イベント』は実はいくつかのオンラインゲームで開催可能だったりする。
この『レベリングライフ』内でのウェディングイベントの流れは……
①まず、新郎新婦か、仲人の2人かが、教会でイベントクエストを申請する。
開催日時を登録し、難易度(簡単。普通。難しい)のレベルから選ぶ。
(イベント中、何回死んでもペナルティは無し。)
②当日、結婚式の途中で魔王が現れ、新婦と新婦側参加者を攫ってゆく。
(この時、参加メンバーを右と左で2グループに振り分けておく。)
③新郎グループは魔王を倒し、新婦グループは地下からの脱出クエストをクリアする。
それぞれプレゼント報酬がある。
④イベント用の教会にて、誓いの言葉。ウェディングケーキ入刀。ライスシャワー。集合写真撮影会。等が行われる。
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「すげーー」
「めちゃめちゃ本格的なんだ…」
「しかも、無料とは……」
それぞれに感嘆の声をもらす。
「あ!人数は?」
「…うん。ちょっと待って。」
しばらくの間……
「うん。1グループ5〜8人ずつのクエストらしい…人数の増減と前衛、後衛を考慮して自動で振り分けられるらしい。」
「すごいですね…私…普通に身内でやろうとしてた……」
「それにしても、何故ハロウィンの日に結婚式を?」
「えっとぉ…それは…うーん…言ってもいいのかなぁ…うーん…」
悩むソラさん。
「詳しい事は言えないんだけど…昨日、月夜さんから『ハロウィンパーティやろう。』って持ちかけられて。
それは今、ラトシアさんが訳あってゲームからはなれているけど
今日の夜メンテでゲーム内がハロウィン仕様になる事を聞いたラトシアさんが、ハロウィン見たいから、ネットカフェからログインする。って……だからです。」
「うん?」
マノヤが少し首をかしげる。
ソラさんの説明が少しあやふやなのは、月夜さんが、実はこのゲームのゲームマスターキャラを操作する社員さんである事。
ラトシアさんが、いま借金取りに追われている事を伏せて話しをしているからです。
「…ところで、どうして結婚式をしようと?」
「それは、私のカンです!」
「カン……」
顎に手を当て考えるマノヤ。
「そんな事より、友達登録して下さい。マノヤさん。」
「…僕は友達登録は…」
「して下さい。いざという時、連絡がつかないと困ります。」
何故かソラさんの周りに圧が渦巻いている。
「いや…僕は…」
「結婚式終わるまででいいんです。」
「いや…その…」
「お、願、い、し、ま、す。」
「……はい」
ソラさんの渦巻く圧に、マノヤは負けて、返事をしてしまった。
「じゃあ俺もっ‼︎」
その隙を狙って、楽しそうに嬉しそうに、ニコニコと笑って、ウシくんが間に入った。
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「じゃあ、今日の夜。メンテの前に、フイトスさん捕まえて、仲人登録しておくわねーーーー!」
そう言って、ソラさんはログアウトして行った。
「フイトスさん。って誰なんでしょうね?」
ウシくんの疑問。
「さぁ…それはわからないけれど…たぶん、ソラさんの好きな人。かな?」
マノヤが疲れたように、そう言う。
「マノヤさんは、ソラさんが好きなんですか?」
「ぶっ‼︎」
唐突に聞くウシくんの言葉に、マノヤは思わず吹き出す。
「それは無いよ…」
更に疲れを増すマノヤ。
「そうなんですね。」
不思議そうなウシくん。
「あ!」
突然思い出す。
「マノヤさん!ハロウィンクッキーありがとうございましたっ!」
そう言うと深々と頭を下げる、ウシくんだった。
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「そうか…あと常設1つと時間2つか…」
「時間…」
「3時と9時に現れるテントだよ。『雷』は北の塔の横の木の上。『風』は西の町の港の海の上に現れる。」
マノヤは腕を組み考える。
「君は学校があるから朝は無理だろう?」
「はい。夜9時に寝るので夜もダメです。あと、だから明日のお昼3時だけです。」
「そうか…ちょっと厳しいな…テントがクリア出来たら、後は王様イベントだけなのに……」
「仕方ないですよ、全クリ無理でも、やってみます。」
「そっか。」
「あと1時間で6時かぁ…『水』クリア出来るかなぁ…」
「ええっ⁈」
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ここは西の町『水』のテント。癖のある3人の女の子の弟子を倒して、ウシくんは水のボス、アクワさんのスタジアムに立っていた。
アクワさんは透き通った水色の長いゆったりとした髪を、まるで水の中にいるように、ゆらゆらと揺らして優しく微笑んでいた。
と、そこへ。
「歩ーーーーーーご飯出来たから、コタツの上、片付けてーーーー!」
母親の声がとんでくる。
「えええええぇーーーーーーっ‼︎いまからボス戦‼︎」
無駄だとわかっていても、一応抗議をしてみる、ウシくんこと、歩。
「もう、6時過ぎてるんだから、ご飯食べて、お風呂入って、宿題して、9時までに寝なきゃ。でしょ。」
「うーーーー…っ…だってーーーーっ…」
「諦めてセーブしなさい。」
姉の結が、お茶碗を持ってきて、歩を促す。
「うーーっ…だって…ログインからの、いきなりボス戦は、リスク高いんだよーー…」
ウシくんは泣く泣く1つ前に戻ってセーブし、ログアウトの準備をするのだった。




