最後の時間
「聖奈っ!」
雅人は聖奈の姿を見つけると、思い切り抱きしめた。
「雅人!?」
聖奈は雅人の態度に驚いたが、聖奈ことが心配で走って来たんだろう。雅人の髪や衣服、息がかなり乱れていた。
そんな姿を見て聖奈は雅人の事を抱きしめながら
「心配かけてごめんね」
そう呟きかけた時に暗い脇道から見覚えがある黒猫が片腕を引きずりながらゆっくりと私達に近づいて来た。
「…ーーー」
黒猫を見た雅人が何か不思議な言葉を呟いたが、聖奈は何と言っているのが分からなかった。
(あれ? 雅人の目が)
雅人の瞳が輝いて見えたが、その変化は一瞬だけで、いつもどおりの瞳に戻っていた。
『…………サマ』
何処かから女の子の声が聞こえた。
聖奈は辺りを見渡して声の主を探すか、周りは私と雅人、黒猫以外は誰も居なかった。
黒猫の体から【黒猫を拾った時と同じ】蒼白い光が、最初は少しずつ次第に大きくなりながら溢れ出して
額の…横一直線の古傷がばっくりと開き、光と同じ蒼白い石が現れた。
黒猫から『お帰りをお待ちしておりました』さっき聞いた女の子の声が聞こえた。
『…ーーーサマ』
そして黒猫は聖奈を見つけながら『セイジョ サマ』と呟いた。
私と雅人は黒猫と一緒に何もない真っ黒な空間に放り出されていた。