~天才のギルド捜索~
俺に告白してきたのは赤毛の少女だった。所謂魔法使いのローブの様な服を身に纏った癖毛の少女。顔立ちはよく整っており、大きな黒目がチャームポイント……と、外見的特徴としてはそういったところだろうか。背は大分小さく、俺の肩ほどぐらいだ。きっと俺より幼いのだろう。総評としては悪くないと言える。もちろん性格などの問題もあるため断定はできないのだが、とても純粋そうな雰囲気を感じる。きっと素直な少女なのだろう。そうこうして考えたのち、俺はその告白に対して返答をする。
「『付き合う』、というのは男女のお付き合いとしてのことと受け取っていいのだろうな?」
「は、はいっ!もちろんですっ!わたしは、アマノサイさん?とおつきあいしたいのですっ!……あっ、また言っちゃったぁ、はずかしいよぉ……」
「気軽にサイと呼べばいい。ところで、俺はまだお前の名前をまだ聞いていないが?」
「…あっ、ご、ごめんなさいっ!わたしの名前はロインって言いますっ!」
「そうか、ロインというのか。それは悪くない名前だ。それで、ロイン。告白の返事についてだが」
「は、はいっ!」
「別に今すぐ決めないといけないというわけでもないだろう?俺たちはまだ出会ったばかりだ。互いに知らないことだってあるだろう。そういう中で決めるのは早すぎると言える。お前はまだ幼いから分からないかもしれないが、優しい人間を装って近づいてくる悪い人間もいるのだ。そういった人間に騙されないように、時間をかけて分かり合う必要がある」
「え、えっと……つまりどういうことですか?」
「俺と付き合いたいならもう少し行動を共にすることだな」
「それってもしかして、いっしょにいてもいいってことですかっ?」
「まあ、そういうことだな」
「ありがとうございます!ちょっと話がよく分からなかったんですけど、きっとわたしのことを心配してくれてるってことですよねっ!サイさとてもやさしいですっ!」
これで告白の件は一段落しただろう。ロインは俺についてくることが決まった。仲間としては頼りないかもしれないが、どうせ俺が守るのだから関係ないことだ。
ここで俺はロインに本題を切り出す。
「ところで、だ。俺は今ギルドを探しているんだが、ロインはギルドの場所がどこにあるか知らないか?結構探したのだが、町が広いのか全く見つからなくてな」
それを聞くと、ロインはきょとんとした顔をして俺を見てきた。俺が何か変なことを言ったのだろうか。
「えっとですね…サイさん、ギルドはサイさんの真後ろにあります。ギルドのマークが彫ってある建物なので、わかりやすいと思うんですけど……意外とおっちょこちょいさんなんですねっ!」
後ろを振り返ると大きな建物があった。その扉と上の看板には剣と杖を持った龍のマークが書かれている。どうやらあれがギルドのマークらしい。俺はたまたまギルドの近くに来ていたようだ。このような偶然が訪れるところをみるに、やはり俺は天才なのだろう。
「いや、ギルドのマークというのが分からなかっただけだ」
「そうでしたか……世間知らずさんなんですかっ?」
「そうだな……確かに俺は世間とは一線を画している」
「そうでしたかっ!ヘンなこと言ってごめんなさいっ!」
「いや、それを聞いて助かったのだから不問としよう」
「ありがとうございますっ!優しいんですね!」
優しい、か。そんな言葉、しばらく聞いていないな。最後に俺に対してそう言っていたのは小学校の通信簿だっただろうか。
「そうか。俺はあまりそのように言われたことはないのだがな」
「そんなことないですよっ!とっても優しくて好きですっ!」
「そうか」
優しいとは果たしてどのようなことを指すのだったか。今となってはもう覚えていないが、とにかくこれを優しいというらしい。まあ今はそんなことなどどうでもいいだろう。俺はギルドのほうへと歩いて行った。ロインももちろんついてくる。
「……せ、せっかく好きって言ったのにムシされちゃったぁ!」
「そういうのはもう少し関わってからでいいと先程言っただろう」
「……ご、ごめんなさい…」
「いや、そこまで強く言ったつもりはなかったのだが」
「じゃあ好きですっ!」
「……勝手にしてくれ」
そうして俺たちはギルドの建物に入っていった。