表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

壁がある程、恋は燃え上がる事を誰もが知っていたはずなのに、そのテンプレにはまった

恋愛編です。騎士と姫がとうとう会う。余命は一年。姫は自分の余命を伝えるのか? 余命が分かった今どう生きるのか?

【1. 恋に恋する 】




空が冷たい。星の熱はここまで伝わらない。虫たちは今日も朝までお喋り。


私は、騎士に、いつもの庭に来るように伝えた。私は、久しぶりに体を洗った。それは、五日ぶりだろうか、それとも六日、いや、しかし、私の体は、今は清められている。清潔だ。過去は大した問題ではない。常に重要なのは、現在である。人は、過去にも未来にもいない。あるのは今だけだ。よって、私は清潔だ。


あー。どうしよう。どうしよう。私の心が子ウサギがチョウチョを追いかけているように、軽快に踊っているわ。騎士様に会える。騎士様を見れる。騎士様に話せる。触れる。嬉しい。嬉しい。こんな嬉しい事があったかしら。


遠くに少年がいる。少し息を切らして、騎士見習いのレイが駆け寄って来た。


私の王子様がここに来る。素敵な足音。素敵な走り方。この手の振り方も芸術的。全てが完璧。美しい。

「姫様、お久しぶりです。遅れて申し訳ございません」


カッコいい。そして、美しい。幸せだ。私は、このためにきっと今まで生きて来たんだ。


「姫様。僕は、あなたに会えることをずっと。ずっと楽しみにしていました。しかし。あの日のことは、本当に失礼しました」

膝をついて、彼は謝罪した。


「えっと。とつぜんどうしたの? 顔を上げてちょうだい」

ルーチェはまったく覚えがなかった。なぜ、謝られているのか理解できなかった。


彼は顔を上げなかった。

「それは、僕が、立場をわきまえず、その。交際を申し込んだからです!」


城は、国の中でも、一番大きく背が高い建物だ。

その城よりも、広大で大きな芝生の中に、小さくお城がそびえたっている。

その城から離れた場所には、庭がる。静かで冷たい夜の日だった。


「こここ交際ですって!! そそ。そうね! ああ。そうだったわね。あなたがどうしてもって言うのならば、しかたないわね!」


彼に対して、この言い方ではいけない。

彼は、真面目だ。人を困らせたくないのだ。姫様を困らせてまで、自分の思いを実現させるべきではないと彼は考える。

しかし、満月は人を、少しだけ狂わせる。


「どうしてもです! 僕は、あなたが好きだ! 好きだ! 僕の命はあなたに捧げます!」

どこまでも透明な目だ。


「命を?」

彼女の目の色は黒かった。

「それはいけません。命は大切です。手放してはいけません。でも、とっても嬉しい」


どこか彼女が深いところへ行かないように、呼び止めた。

「姫様」


「ありがとう。嬉しい。大好き」


膝を付いた彼と立っている彼女。

彼女は、両手で彼のほほをさすって、覗き込んだ。

彼は立ち上がり、彼女は、背伸びした。

その様子を月が暖かく見守った。


ルーチェは、癒しを感じた。余命は1年。思い出を築けば築く程、辛くなる。1年と言う短い人生。だから、部屋に閉じこもる。外界と自分を切り離す。そう決めていたはずだった。ほしくてほしくてたまらない、大好きなレイとも会わないと決めていたはずだった。でも、やっぱり、そんな事はできない。会いたい。会いたい。それしかなかった。ずっと、レイを感じていたい。この手を放したくない。私は、本当に彼の事が大好きなんだ。



その二人の様子を見ている者がいた。だいたい400メートル先の木の上からだ。

「ああ、手なんか握ってるー。うーうう。300年近く生きてる僕ですらまだないのにいい。うぅ。穢れた手でルーチェ様に触れるなああ。ああ。うう。僕は、僕は、ずっとずっと見守っていたのにー。ぐじゅ。ぐっごふぁ」

その少年は双眼鏡越しに、悪態を吐いた。

その双眼鏡は高額かつ高性能。夜でも昼間のように見える。

双眼鏡越しという、その安心感が少年の心を強くした。

更なる強い悪態を吐いた。


「くそ。くそ。ばか。ばか。ばーかア」


少年は、真っ黒な外套で頭から足まで身を隠している。そのため、体格は、外からではまったく分からないが、ほとんど、骨のと皮だけの痩せた体をしている。


「もう今日は帰ろう」


僕は、不老なんだ。僕は、不幸なんだ。僕は、本当は。僕は、画家なんだ。世界の真実を映す画家なんだ。僕は、掃除の仕事をしている。あの廊下もあのトイレもあそこの庭だって。僕が、掃除したんだ。街になんか出なきゃよかった。ずっと。ずっと。山小屋に閉じこもるべきなんだ。分かっていた。いや、そもそも生まれなきゃよかったんだ。僕は、いつから生きているんだろうか。僕の本当の年齢はいくつなんだろうか。僕は、なんで子供のままなんだろうか。僕のお母さんはどこにいるのだろうか。僕は、いつ死ねるのだろうか。僕は、画家なんだ。世界の闇を知っている。世界は、灰色。





【2. お嬢様は輝いてる 】




ルーチェは、以前のように、暴言を吐かなくなった。暴力をしなくなった。もう暴君ではない。いい子ちゃんなのだ。

ルーチェは、扱いやすくなった。世話係の使用人達は、盃を交わして朝まで踊った。


ルーチェは、自室のベッドに座り、天井を見上げた。それは太陽が斜め上に上がる日だった。

私は、もう直ぐ死ぬ。私が心臓を捥ぎ取られてから、医者が即席の人工心臓を作り上げ、それを移植したそうだ。その医者の見立てでは、持って一年だ。あれから、城に名医を呼んだが、それでも、これ以上に手を加える事は殆んど不可能だった。


私の心臓を奪った魔を喰らう魔女の捜索を国王である父は、騎士団に命じたが、未だに手掛かりはない。

私は、正直、諦めている。でも、少しは期待をしている。どこかで、この現実を受け入れられない自分がいる。本当は嘘なのではなかろうか。なんだかんだ助かるのではなかろうか。死ぬのが怖いというよりも、死ぬ事がよく分からない。もしも死んだら無に返るだけなのかな。天国に行くのかな。生まれ変わるのかな。いろいろな宗教観がごちゃごちゃしてる。でも、諦めて、開き直って、せっかくだし、しょうがないし。いっそ、楽しもうかな。せっかくというのはおかしいけれど、せっかくだし、思い切って羽目を外してみようかな。



私は、我慢をしていた。

あの人は、お父さんの子供の頃からの友達だ。いつも、私の顔とか目を見て来る。

あの人は言う「どこか分からないところはない」とか聞いてきて、偶然を装い私の手に触れるのだ。気持ち悪かった。あの人の前では、ひざ掛けをする。なぜなら、太ももを見て来るのだ。一番、気持ち悪かった事は、耳に息を当てた事だ。それには驚いた。


あの人は、私の家庭教師だ。


「ねえ。パパ? 私ね。勉強すると疲れちゃうみたい」

もちろん、嘘だ。

「そうか。うん。そうか。じゃあ、次から、授業はもう止めにしよう」


私は腕を伸ばし背伸びした。これでもう、あの人に会わなくて済む。

他の教科の家庭教師達にはいけない事をしたけれど、私には、今更、勉強は無意味だ。


私は、あれも嫌いだ。挨拶回りも嫌いだ。他所の国の王族達や自国の貴族や領主たちのパーティーも嫌いだ。

父親が「娘です」って紹介して、作法とか言葉とかに、気を付けながら挨拶する。なんていうか、失敗しちゃいけないゲーム。おまけに、足が痛い。あの踵が高い不便な靴も嫌いだ。胸を大きく見せ、お腹を細く見せる。あのグルグル巻くヤツ? コルセットも嫌いだ。歩きづらい服も嫌いだ。


「パパ? 私ね。パーティーとか疲れちゃうみたいなの。ごめんなさい」

それも、もちろん、嘘だ。

「そうか。それはよくないな。休みなさい」


父は私の事が可愛い。私が少し弱ったところを見せれば、どんな事でも叶えてくれるようになった。

その事が、余命は1年の長所である。しかし、短所は計り知れない。


私は随分と薄着になった。体が軽い。私の体は健康的だった。この人工心臓は、余程、優れているのだろう。まったく、体に違和感もつらさもない。本当に、私の余命は1年なのだろうかと疑えるぐらいだ。

残された全ての時間をレイに注ぎたい。騎士見習いのレイに、全ての命の時間を注ぎたい。

私は、初めてお酒を飲んだ。毎晩、私は、レイと会った。二人の関係を知る者は誰もいない。

しかし、一部の使用人は知っているが、特に問題はなかった。


夜は、肌寒くって静かだ。鳥達は歌ない。虫達は、今日も楽器を奏でる。リンリンリン奏でている。城から離れた庭に、一つのベンチがある。そこに、膝と膝をくっつけている二人の男女がいる。


「姫様。これはどうしたのですか?」

レイは不思議そうに、そして、不安気に尋ねた。


「姫様? じゃなくって。ルーチェと言って頂戴。私にはルーチェと言う名前があるのだから。私も騎士様とは言わずに、レイと呼ぶわ。コレはね、お酒よ、お酒」

ほほに、ワインのボトルをくっつけ微笑んだ。

絹のような髪が、彼の顔に当たった。


「その。僕も。ルーチェ様? 僕もご一緒してもよろしいでしょうか?」

彼はお酒が好きではない。できる事ならば、彼女にもお酒の悪口を言ってもらいたいぐらいだった。

しかし、一人で飲ませるのは、失礼に当たると彼は考えた。


「そのために、グラスは二個用意したわ」

カバンからグラスを取り出した。ワインを注いで渡した。彼が受け取ると、お互いのグラスは音を鳴らした。


「私、怖いの」

彼女は突然告白したかのように見えた。

しかし、自分の余命が1年だという事は、彼には隠し通すと決めていた。


「どうしたのですか?」


「死ぬのが怖いの」



彼は女を知らない。それが幸いだった。女を知る者だったら、また戯言を言っていると相手にしないだろう。女は、詩的で、夢を見る。恋に恋をする。同じ場所にいるようで常に心はメルヘンの世界にある。そういった偏見を持っていないのだ。


そして、彼はこういう事も言わない。

「僕も死は怖い。騎士は常に死と隣り合わせ。いつ戦争が起きるかも分からない。絶対に僕は君を守る」

なんて事は言わない。


この発言を意訳すればこうなる。

「君が言う死が怖いなんて可愛いものだ。僕なんて、殺し合いをしなきゃいけない環境にいるんだぜ。君は、何か死を勘違いしてないかい。君が言う死なんてものは比喩的な意味でしかないだろう? 僕には、本物の冷たい死が、常に背後にある。わかるか? それは恐ろしい事だ。君が言うおままごととは違う」


では、「死ぬのが怖い」

その彼女の発言に、彼はどう答えたのか。もちろん、彼は、あの事を知らない。魔を喰らう魔女に、彼女が襲われた事も知らない。余命が1年だという事も知らない。


彼は俯き顔を上げ、手を握った。

「僕が隣にいるよ。君の隣にずっといる」


「ひゃん」

どうしよう。好きになっちゃう。

「約束だよ! 絶対だからね!」

彼女は、早口に喋った。


「うん。絶対だ。ルーチェ立って」

彼は、彼女と対照的であり、穏やかで、神秘的でさえあった。

「えっ」

彼は手を取り、彼女をベンチから引っ張った。


二人は、城から離れた夜の庭にいる。虫たちが音楽を奏でている。頭上には、星と月がある。

二人の男女は、向かい合った。彼は膝を立てってしゃがんだ。


「姫様。僕は、あなたの傍を離れません。この剣にかけて誓います」


「うん。ありがと」


その日から、ルーチェはレイに会わなくなった。

どうなんだろう。一人称、三人称、特殊なのに二人称も使ってる。統一感がない。今回は、語り部の主観も入ってるし。まあいいや。私は、粗筋とか脚本とか、物語の構造的なところは趣味で勉強したけど、修辞学とかは勉強してないし、小説の技法も知らない。でも、ラノベとかweb小説を読むと、自分の物語には足りないところがたくさんある。まず、人物の仕草と動きが、文章から想像できない。言ってしまえば、萌えがない。これではダメだ。まあ、でも、まずは、分かりやすさ。そこをどうにかしていこう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ