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コイツ誰だよ!?

余命を宣告したら、姫様はグレた。もう手が付けられない。

【1. グレた 】




あれから、魔を喰らう魔女は姿を消した。今回の被害は、当時よりも酷くはなかった。それでも、死人は何人も出た。魔を喰らう魔女が直ぐに退散したのは、おそらく、国王がいたからだろう。

国王は、昔は騎士だった。この国の中で最強の騎士だった。

魔を喰らう魔女がこの国に現れたのは、二回目だ。一回目のとき、最強の騎士は、遠征していた。なので、駆け付けるのが遅かった。最強の騎士は、魔女に圧倒的な力の差で追い詰めた。しかし、魔女は最後の力で逃げた。最強の騎士は、英雄となり、この国の国王となった。

魔女の唯一の宿敵と言ってもいい。そのため、国王が駆け付ける前に、退散したのだろう。

では、なぜ、わざわざ危険を犯してまで、魔女が再びこの国に現れたのだろうか?

それは、いずれわかるだろう。




余命を伝える事には、賛否両論がある。あなたなら知りたいだろうか?

王は、伝えるべきだと考えていた。しかし、言えなかったのだ。でも、言った。

そして、そのせいで、悲劇が起きた。



使用人は、ルーチェの事を、お嬢様と呼ぶ事が多い。

ルーチェは素行がいい。なんていうか、素直でお利口さんでかわいい。本当にいい子なんだ。

「お嬢様。失礼します」

使用人は、毎朝、部屋の戸を叩いて、朝ご飯を用意しなければならない。

少し前までは、大広間で家族と食事をしていたが、最近は自室で食事をするようになった。

その食事を用意する役割は、使用人間の同意に基づき、くじ引きによって決められる。

今回は、この使用人が外れくじを引いたようだ。

クジで決めるには、三つの理由がある。

これから紹介しよう。


「あら、ご機嫌よう! 入って来ていいわよ」

扉の向こうから姫様の声がする。男なら誰でも幸せになるそんな声だ。


「し、失礼いたします」

震える手で、女性の使用人はドアノブを回した。


「はぁ!? はぁ!? 誰が入っていいつった!! この下女が!! 殺されてえのか!! さっさと飯を持って来い!! あたし食ってやるんだ!! 不味かったらぶっ殺す!!」

本を使用人に向かって投げたが、当たることはなかった。


壁に本が辺り、大きな音を鳴らした。

「ヒッ」

怖い。ルーチェは暴力を振るう。城の使用人は、見た目に気を遣う。あからさまに言えば、容姿のよさを問われる。国の城は、この国の看板でもある。国の城に、使える者は、正直言うと、不細工よりかは美人の方がいいという訳である。しかし、このルーチェというヤツは、使用人の顔に、物を投げて、傷をつけた事もある。

それが、クジで決める一つ目の理由である。


「うけるわ。なにビビちゃっての? ねえー? あたし怖い? グフフ」

もうルーチェは終わった。この人はもうダメだ。


「まあーまあ! 今日もお嬢様は美しいわ!」

ルーチェとは関わりたくないが、やらなければならない。それが、使用人の仕事である。


「はぁ!? どこが? 冗談言うんじゃねえ! こんなヤツが綺麗な訳ねえだろ」

もはや面影がない。髪はぼさぼさ。座り方もしぐさも男みたいだ。これは、一国の姫ではない。


「冗談なもんですかー。髪はすべすべ、絹のよう。肌はもちもちしてなめらか。ほっぺなんてプリンのように柔らかだわ。ああ美しい」

勢いで押し込む事がコツだ。これには、語彙力が必須である。


「うるせーうるせー。絹なんて虫の糸じゃねえかよ。プリンみたいなほっぺってベタベタじゃねえかよ。三日も風呂に入ってない事への嫌味か? お前もあたしの事が大嫌いなんだろ? 出てけよ!もう!」

それで怯むような人は、新人の使用人ぐらいです。彼女はやる人です。


「まあ、お嬢様羨ましいわ。三日もお風呂に入ってないのに、とっても甘くていい香りのままですし。髪だってちっともベタベタせずにスベスベしてて、美しいままだわ! 私とは大違いだわ。 もっと近くでお嬢様を感じたいわ。本当に可愛いのだから」

使用人は、逃げる隙間を全て埋めるかのように、完璧に抱きしめた。


「は。は。離せよ。キモいんだよ。死ね。死ね。キモいキモいキモい」

頭やわき腹を姫はしつこく何度も殴った。


「大丈夫。大丈夫。必ず助かるから」

そう何度も叩かれたものだから痣が出る程痛かった。


「大丈夫じゃねえよ。あたしは死ぬんだよ。大丈夫じゃねえよ」


何度も何度も使用人は繰り返し言い聞かせた。いい加減疲れて来た。

それに、殴られるのは痛い。本当に殴るのだけは止めてほしい。


来た。

ルーチェは泣いた。涙と鼻水が服に付く。これは汚い。とても不快だ。


「ふ。ブえええええ。ふ。ブえええええ。死にたくない。生きたい。生きたい。死にたくない」

使用人は、こんなことには飽きているはずなのに、胸が苦しく熱くなる。気のせいかもしれないが、とても辛くなる。


「なんでだよ。なんでだよ。な、なんで。グじゅん。なんでだよ」

何度も何度も力弱い拳が胸に当たる。ノックのように当たる。


「よしよし。平気。平気。怖くない。怖くない。大丈夫。大丈夫」

赤ちゃんのあやし方と殆んど差はなかった。しかし、これが効果的なのだ。




【人物紹介】

ルーチェ

お姫様とかお嬢様と言われている。物語のメインヒロイン。

魔を喰らう魔女に、心臓を捥がれて食べられた。

治療の末に、一命は取り留めた。心臓がないのに、なぜ生きているのか?

まあ、それはそういう設定だからです(笑)

なぜ、魔女は心臓を食べたのかはまだ書かれていない。たぶん、次の話かその次の話で分かる。

父親である国王に、余命は一年だと宣告された。

めっちゃショックを受けてグレた。

ここから考えられることは、余命までエンジョイするぜパターンか、魔女を討伐して寿命を取り戻すパターンの二つだと思う。


魔を喰らう魔女

この物語のラスボス的存在。コイツを倒せばエンドとなるのが一番定番だけど、どうなるかは分からない。パターンはいくつか用意したが、どれにするかは作者にもわからない。なぜなら、書き直しの時点で脚本すらも変わる事も多いから。ちなみに、姿は、白い肌の女。


レイ

二話目で出てきた騎士。ルーチェと両想い。ルーチェはレイを騎士様と言う。騎士様の名前は今から出る。名前を出さなかった理由は、名前を考えていなかったからではない。出そうとは思ったけど出せなかった。


  ジーナ

使用人。メイドのこと。女。名前は今から出る。


  主人公

とりあえず、今はトイレ掃除をしてる。そして、メインヒロインをストーキングしてる。あと、不老不死らしい。次の次の次の次ぐらいに出るかもしれない。


以上です。





【2. 使用人ジーナはツンデレ?? 】




これが二つ目の理由だ。毎日、姫は不安になり荒ぶる。使用人がルーチェの不安を解消したところで、次の日にはぶり返すのだ。これを毎日繰り返す。だから、誰もこの役をやりたくはないのだ。


もう一度、あなたに想像してほしい。これを毎日繰り返す。あやして、ご機嫌になっても、次の日の朝にはリセットされている。誰だってやりたくはない。可愛いなら構わない? でも、自分も相手も女であり同性だ。


そして、三つ目の理由はこれだ。

「ねえ。ジーナ。レイ様? あのねぇ。騎士様は最近どうしてる?」

乙女のぴちゃぴちゃしい恋話しだ。甘ったるいし本当に嫌になる。人のいちゃいちゃした話しはムカつく。それしか思わない。


ジーナとは、使用人である私の名である。

私は、現在12歳だ。10歳の頃からこの城に住み込みで働いている。私は、お嬢様に気に入られ、世話係を務めている。お嬢様は、19歳だ。確かに、精神年齢はアレだが、19歳だ。しかも、私を母親だと思っているのかのように、甘えて来る。ときどき、「にゃんにゃん」と猫の真似をしてくる。私は女だ。お嬢様がどんなに綺麗で可愛くとも、そこに萌えなどは微塵も感じない。ときどきぐらいは、「かわいいなあ。まったくもうたら」なんて感じる事は、一切ない。断じてない。ハッキリ言って。いや、それぐらいは悟れとすら思うが、ハッキリ言って、気持ちが悪いと思います。しかし、これは仕事だ。よって、私はできる使用人だ。そこをわかってほしい。絶対に。


「ねえねえ。聞いてるのジーナちゃんちゃん?」

お嬢様はウザい。だからこそ、私は、クジで、他の使用人が当たったときは、ホッとする。しかし、思い悩み。私が全て引き受けてしまう。引き受けた事を毎回後悔するが、他の使用人には、お嬢様を任せられない。いいや、お嬢様に、私以外の使用人を任す事ができないのだ。私のように、お嬢様に物を投げられて顔に怪我をしてしまったら、大変だからだ。だから、私だけがお嬢様の世話をするべきなのだ。


「レイ様は、お嬢様に会えなくって悲しそうにしょ気ていらっしゃるわ」

さっきから出て来るレイとは、お嬢様のコレだ。男だ。ソイツはまだ騎士の称号すらない騎士見習い。まだまだザコな男なのに。お嬢様はこんなヤツに惚れているのだ。けっきょく、女の私なんかよりも、本当に癒すのは、その、レイとかいうヘッポコなんだろう。だから、お嬢様は駄目なんだ。


「ふーん」と音程を上げて喜んでいるところが、もう既に終わりを表している。


私は言えないけど、言ってやりたい。

「お嬢様! こんなザコなんて忘れましょう! 私と余生を過ごしましょう!」

でも、本当は、私はお嬢様を包む事ができない。こんなにも近くにいるのに、心は常に、あのヘッポコザコ男の方を向いている。

まあ、それもいいかもしれない。お嬢様はウザいしキモいしめんどくさい。仕事だから我慢してるだけだし。あのヘッポコザコ男にくれてやってもいいし。ほんとうにいいし。でも、仕事の放棄はできない。


「お姫様。一度。レイ様に会われてみはいかがでしょうか?」

言いたくない事を言ってしまった。この二人を会わせたくはなかった。だって、お嬢様がしつこく何度もあのヘッポコについて毎回聞いてくる。だから言いたくない事を口走ってしまった。


「え・・・ジーナ。でもでも。私会えない」

それは意外だった。と言う訳ではない。


「なぜです?」

いちよう聞くことにした。


下を向きながら、ボソボソとルーチェは言った。何かを。

「わたし。命。長くない。思い出を作っても意味ない。想像するだけで楽しい。だからいい。もう部屋から出ない。現実体験に価値はない。想像を膨らませるだけで十分。だから会えない」


死ねば、意味がない。全てが無へと返る。何となく、納得できそうな気もする。でも、その考え方をしたら、なんだか、おかしいような。負けなような気がする。


お嬢様は泣きながらは、言っていない。けれど、代わりに私の胸とか目頭が熱くなった。確かに、他人の命なんかどうでもいいと私は冷たい。それなのに、苦しい。お嬢様を見ると目が合わせられない。怖い。痛い。泣きたくなる。いや、私は、冷たいのだ。私には無縁なのだ。私にはどうだっていいのだ。


「お嬢様。会いなさい」

12歳の子供が19歳の大人に対して言う言葉ではなかった。おばあちゃんが孫に言うときの、あの説得力がそこにはあった。


「はい」

この返事は言わされたときのあの返事。いいや、不意を突かれたときのそれに似ていた。

受動的ではあったが、じわじわと自主性が沸き上がる音がした。


お姫様は決心した。会いに行くことを。

私は、お嬢様の門出を祝わなかった。

小説は、不安だらけ。コイツ誰? いつどこでなにをしてるの? とならないかなと。作者だけが突っ走りそうで不安になる。読者は、書かれたことや常識とかで想像する。作者は、想像したことを文章にする。その差をなんとか埋めたい。昔、推理小説を読んだとき、トリックどころか、状況把握すらできなかった事があった。でも、いつなのかどこなのかといった状況は、重要なときと重要じゃないときもあるけれど、何をしようとしているのかは重要だと思う。何なのか分からない文章にならないように、読者目線を意識したい。

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