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さすがに初っ端から死なない

行き成りバッドエンドな予感です。ここから、キャラ崩壊編が始まります。

【1. このお話しの最初のボスキャラを紹介します 】




視力を失った。全てが白い。前も上も白い。そして、外気が冷たい。

声だけが聞こえる。音が聞こえる。周りに何人の人間がいるのだろう。

革靴が石畳を叩く音。大きな動物の鳴き声と車輪が回る音。子供が親を探す泣き声。喧嘩をする声。


「号外です!! 号外です!!」


霧が濃い日だった。

この国の朝は早い。市場と商店街に行けば、朝から開店しているお店も多い。

しかし、だからと言って、早朝にしては、人が多い。


「魔女が現われた!! 魔を喰らう魔女の再来です!! 号外です!! 号外です!!」


「市民に真実を!」それがこのお兄さんの信念だ。新聞売りのお兄さんは喉を枯らしながら新聞を配った。


魔を喰らう魔女が現われた。

魔を喰らう魔女には、いろいろな名前がある。

人食いの魔女。血の魔女。真っ赤な魔女。魔女狩りの魔女。魔法盗みの魔女。

いろいろな呼び名がある、現在は、魔を喰らう魔女と言われている。


今から、20年以上の前の事、魔を喰らう魔女がこの都市に現れた。

魔女には、様々な言い伝えがある。

喰らった相手の記憶、姿、そして魔法まであらゆる事柄を手に入れることができる。

そのため、魔を喰らう魔女は、強い魔法を持つ者を好んで捕食する。

特に、恵まれた魔法、優れた魔法を授かった者を狙っている。

魔を喰らう魔女は、死を恐れ、そして、力を求めている。


「誰だ!! 俺の足を踏んだ奴は!? お前か??」

「邪魔だよ! さっさと進め!」

「おい! 貧民街の奴等と来たら、こんな時に盗みを犯してやがるぜ!」


当時の魔女の被害は大きかった。人々の記憶には刻まれている。

建物は壊され、人は殺され、都市は、荒れた。魔女は、その者の生命力を取り出す。相手は、肉体的損傷もなく静かに息絶える。そして、魔女は、人の命を奪えば奪う程、力を増しっていった。

意思の弱い人間は、魔女の狂気に呑み込まれ、肉体を乗っ取られる。

1000人以上の人間が被害にあった。都市は更地になった。

その事を、人々は記憶している。


「うわああん。お母さんどこ~。お母さんがまいご~」

「こんな時に、スリかよ!! くそったれ!!」

「押すな馬鹿野郎!」

「どさくさに紛れて、どこ触っているのよ!」


こういう時は簡単だ。列をなして進めば、詰まる事もなく快適に進む事ができる。

しかし、そうはならない。だから、渋滞になる。そして、最後尾に近い者から殺される。

だから、この事態は必然であり、逃れられない。自分勝手に突き進んだ者は、生きる確率が高くなる。

この騒ぎは、しかたがない事である。





【2. 目覚めたら、450年後だったとかゾンビで溢れてるとか世界の終末だったとかというパターンはない 】




頭がぼーとする。なんて言うか、体が硬い。例えるなら、慣れない運動をさせられて、次の日に筋肉痛になったあの痛みがする。いや、それだけじゃないみたい。高熱を出して、まるでおばあちゃんになったかのように、体の節々が痛くなるあの感覚。他にもある。炎天下の日に、水を一滴も飲まなかった日のあの頭痛の感覚。そして、目が痛い。眩しい。体のあちこちが痒い。体が重い。なんだか、動くのが嫌になる。


「おとうさん・・・ここどこ?」


まるで汚れた眼鏡を掛けているかのように、霞んで見えたが、それでも、父親が自分の顔を覗いていると分かった。

この状況を直ぐに、姫は理解した。


騎士の姿を真似た白い肌の女に胸を抉られた。きっと、あれから、手術を受けて、助かったのだろう。そして、今は、ベッドの上にいる。

聞きたいことはたくさんあった。

騎士様はいまどこでなにをして、無事なのだろうか? 

おそらく、あの肌の白い女は、騎士様に変身したか、体を乗っ取ったか。なにかあるはず。そうに違いない。


父親はずっと手を握っていた。

「ルーチェ・・・」

目が潤んでいた。


ルーチェ。それが私の名前です。涙を堪えているのが父親。国王です。私は父が大好きだ。いつも私を可愛がり、甘やかしてくれる。でも、過保護すぎるところがある。そんなところも大好き。


「おとうさん。涙なんか流しちゃって。どうしたの? 私は元気だよ」

とうてい元気な人の声ではなかった。


国王は優しくおでこを撫でた。

袖で潤んだ目を拭くった。


「ねえ。私。どれくらい眠っていたの? それに、胸を抉られて・・・。私、平気?」


思わず抱きしめたくなる。そんな声だった。


「三日程だ。なに、大事はない。傷もすっかり塞がった。城にたくさんの名医を呼んだんだから。お前はすっかり良くなった」

何だか内容と矛盾している。よくなったと発言はしているものの声には暗さがあった。切なさとも言っていい。


「でも、私、心臓を抜かれた気がするんだけど」

言いたいことはたくさんある。でも、頭が働かなかった。本当は、早口で話したいぐらい不安で一杯だ。

でも、私の体がそれを拒む。ゆっくりと穏やかでしか話せない。おかしな状況だ。その矛盾の可笑しさで笑いそうになる。でも、いま笑ったら、気味が悪いので堪えた。


「いまは、目を覚ましたばかりだ。今日は休みなさい」

優しい口調でなだめてきた。それは、心にある優しさが声色に反映された訳ではない。なだめる為の技法的な優しい声色だ。その証拠に、ほんの僅か、イラつきが見られる。


「休められない。私ね。気になるの。かえって体を悪くすると思うの。だから、教えて」

早く教えてほしい。私は疲れている。まずは、結論から簡潔に教えてほしい。本当に体が重い。


「そうかそうか。もうちょっとよくなったら、聞きたいことはなんでも聞きなさい」


「ごほ」咳が聞こえた。

「お願い。お願いします。お父様。お願いします」

私は、嘘の涙を流した。そして、父の袖を掴んだ。

「教えてください。私は知りたいのです」

私は、この方法で父に何でも言うことを聞いてもらった。今後も私はこの方法を愛用するだろう。


「ごめんな。ルーチェ。お前の不安な気持ちを少しも考えてなくって。ワシのした事が」

とても苦そうな。究極の選択に迫られた表情を浮かべた。


「うん」

この短い返事には、とてつもない破壊力があった。つまり、可愛いのだ。

国王は、紐が緩んだ。


「ルーチェ。実はな。お前には心臓がない」


「うん。知ってるよ。さっきから音がしないの。おかしいよね? えへへ。お父さん。言いづらいのに辛いのに、頑張ってくれてありがとう」

まだ聞きたいな?と言いたげに首を傾げている。まるでうさぎを思わせる愛くるしさには本当に困る。


「ルーチェ。それだからというか、心臓がない事によるというか。まあ、それでだ」

王は顔を下げてブツブツと言って、最後に顔を上げた。最後に顔を上げた事が過ちとなった。


「うん。それで?」


「1年だ。それが、残りの余命なのだ」


二人の目と目が合った。心の中は混沌とした。

今日は晴れだった。小鳥の歌が音痴で煩い。

私なら余命を知りたい派ですね。死ぬ事は怖いですが、余命は知りたいです。知らないと最後の最後までくだらない事しかしなそうだし。

個人的に、面白いよりも分かりやすいを、今は優先したい。

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