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前章 ある雪原の中
真白の雪が、しんしんと降り積もっていくのが見えた。
冷えきった手足には既に感覚はなく、進むための気力もなかったし、どうして進んでいるのかさえも、少年にはすでにわからなくなっていた。
自分がどこから来て、何をして、なぜここにいるのかすらも。
それでも彼の心の中には一つだけ、確かな思いがあった。
そう思った経緯も、原因も、何一つわからないながらも、ただ一つのその感情だけは、何故だかマグマのように少年の中で煮えたぎっていた。
───王国を許さない。
───絶対に、あの国を滅ぼさなければならない。
その思いは少年の中でひたすらに強くなるばかりだったが、それに対する疑問は、一向に解決する気配はなかった。
やがて白以外の色が少年の視界から消え去った頃、ただでさえ重かった足取りは、完全に止まった。
こんなところで止まるわけにはいかない、そう心の中では思うのだが、どうしても足が動かないのだ。
雪原の中、やがてどさりと倒れた少年は、遠くなる意識の中で、それでも確かに誰かの声を聞いた。